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第18話 初めての島にて・転

一階のエントランスで、


「そなたらは、先に、“ダイワの第二王子殿下”がお越しになられている件を、主様に知らせてくれ。」


例の紳士が、2人の侍女を促す。


「かしこまりました。」


揃ってお辞儀した侍女たちが、足早に階段を上っていく。


「では、(わたくし)ども参りましょう。」


こう声をかけてきた執事によって、大公のもとに案内してもらう僕らだった……。



[執務室]にて。


立った状態で待ってくれていた60代前半らしき男性が、


「お初にお目にかかります、殿下。」

「自分は、現当主の“ルシム=イズモ”にございます。」


僕に対して会釈する。


“オールバックにしている髪”と“鼻髭”は白く、ややガタイがいい。


頭を上げた[タケハヤの島長(しまおさ)]は、


「して?」

「〝ライザー陛下の指示〟とのことですが??」


僕達を窺った。


「左様で。」

「詳しくは、陛下より預かってきた手紙をご覧ください。」


“魔術師のレオディン”が出した封筒を、受け取った執事が、大公へと運ぶ。


“白い封”は[金のシーリングスタンプ]で閉じられている。


それ(・・)は、[国王の印璽(いんじ)]だった。


いつだったか“細長眼鏡のマリー”が教えてくれた話しによれば、シーリングスタンプは〝一般的には赤い(ロウ)を溶かしたものが多い〟そうだ。


ちなみに、[イズモ王家の紋章]は“太陽”と“月”に“雷”が合わさったかのようなデザインとなっている。


さて…。


封筒の上部を[ペーパーナイフ]で切ったルシム大公が、中に収めてあった手紙を出して広げた。


これを黙読していく大公が途中で、


「ほぉう。」

「生まれつき“攻撃系の神法(しんぽう)”を備えていらっしゃ……。」

「は?!!」

「〝神剣(しんけん)ムラクモを抜いた〟ですとおぉ~ッ!??」


目を丸くする。


この様子に、


「ま、そういう反応になるよね―。」

「ラルーシファ王子には、ボクらも驚かされたしぃ。」


“ハーフエルフのリィバ”が〝うん うん〟と頷く。


〝うぅ~む〟と唸ったルシム大公は、改めて内容をチェックしていき…、


「成程。」

「それらが原因で、ラルーシファ殿下は、お命を狙われるようになったと。」

「しかも、二度に亘って。」

「……、手紙には〝同行させた護衛と共に、そちらで暫く住まわせてあげてほしい〟〝息子のことを、くれぐれも頼む〟と(つづ)られております。」


再び僕の方を見た。


そうした流れで、“手紙”と“封筒”を[アンティークテーブル]に置いて、


「初代ラダーム陛下の遺言もございますし…。」

「謹んでお受けいたしましょう。」


丁重に跪く。


更には、大公の(そば)で待機していた執事も、これに続いた。


「あぁ、はい。」

「よろしくお願いします。」


そのように返したところ、右斜め後ろに控えていたマリーが、急ぎ、僕の耳元で伝えてくる。


マリーに習って、


「大儀である。」


僕が言い直したら、


「はッ!!」


力強く応じるルシム大公だった。


「ところで……。」


立ち上がった大公が、


「殿下は“解読”という特殊スキルも持ち合わせておられるとか?」


何気に質問してくる。


「そうですけど??」


軽く首を傾げた僕に、


「だとすれば…。」


本棚に向かったルシム大公が一冊の書物を手にして、


「これは、初代陛下が隠居生活を送られていた際に記されたものだそうです。」

「誰にも読めない文字のため、先祖の頃より諦めておりましたが、〝ラルーシファ殿下の能力であればもしかして〟と、ふと思いましたのでな。」

「……、なんでも、初代陛下は、〝ムラクモの扱い方についても書き残された〟と口伝(くでん)されてきましたもので。」


そう説明してくれた。


これに、


「おぉおッ?!」


レオディンや、


「ホントに??」


リィバと、


「スッゲェ助かる!!」


“片目のベルーグ”が、ほぼ同時にくいつく。


「う、うむ?」


若干ひいた大公に、レオディンが〝こほんッ!〟と咳払いして、


「いや、かねてより聞き及んでいた“閃光”とやらを、どうにも放てずにいたようでしてな…。」


そのように述べる。


〝あぁー〟と理解したらしいルシム大公が、


「ならば、殿下に確認していただきましょう。」

「そちらにお掛けください。」


僕を椅子へと導く……。


薄めの本を(めく)ってみたところ、“縦書き(・・・)”になっていた。


こちらの世界は“横書き”なので、かなり珍しい。


というか、初めてだ。


しかも、[日本語]に間違いなさそうだった。


けれど、“旧字体”が使われており、全体的に崩して書かれているので、意味不明だ。


そのため、僕は、【特殊スキル】を発動した…。


独り読み進めながら、


「…………、あッ、やっぱり!!」

「……、んー、…………、へぇー。」


といった具合に呟いていたところ、


「なんです??」

「なんと書いてあるんですか?」


リィバが〝ソワソワ〟しだす。


「あ、ごめん。」

「ちょっと待って。」

「“ムラクモ”に関して記述されているかもしれないとこまで飛ばしてみるよ。」


こう喋った僕は、


「この本って貸してもらえます??」


大公に質問してみる。


「いえ、差し上げますぞ。」

「どうせ我々に読むのは不可能ですので。」

「それに…。」

「この館へと殿下が赴かれたのは、初代ラダーム陛下のお招きによるものかもしれませんしな。」

「だとするならば、ラルーシファ殿下が所有なさってこそ、初代陛下もお喜びになられることでしょう。」

「あと……。」

「我らに敬語は無用ですぞ。」

「王家の方が立場は上ですからな。」


笑顔で告げるルシム大公だった―。


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