第177話 真相③
あれから数十分が過ぎている。
僕は“マンティコアのラバス”と[自室]に戻っていた。
こうしたところへ、ユーンを筆頭に“お世話係”が再び訪れる。
なんでも、巡邏兵が[薬品店]の人たちを捕まえたらしい。
[玉座の間]に連行したそうで、“リーシア姉上”にも報告がなされている頃とのことだった……。
▽
足を運んでみると、もうじき朝食の時間になるので“教育係達”が揃っていた。
僕のところは勿論、“妹のエルーザ”を担当している顔ぶれも。
そんな彼ら彼女らが、
「陛下と殿下がたに御挨拶を。」
“片目のベルーグ将軍”による合図で、
「おはようございます。」
声を揃えて頭を下げる。
“王宮魔術師統括責任者のレオディン”などは既に済ませていたので、佇んだままだ。
こうしたなか、
「うん、おはよぉ。」
「ええ、おはよう。」
「おっはよぉー♪」
それぞれに返した僕たち3名が、着席していく。
床には“麻縄で縛られた男性2人”が膝立ちさせられていた。
50代後半あたりと、30歳ぐらいに、見受けられる。
なお、どちらも小太りだ。
巡邏兵の代表によれば、親子との事だった。
あと、4人の従業員がいるものの、まだ出勤していなかったので、別グループの兵達に状況を伝え、手分けして自宅に赴かせているらしい。
身柄を確保するために。
さておき…。
この2人は、“ラノワマ宰相”の手下だった。
十年ほど前に、宰相の紹介にて、[王都]で薬品店を営むために引っ越してきたらしい。
ただし、それは表向きであって、実はスパイだった。
こうした2人の家は、一階に[販売エリア]と[作業場]があり、二階が[住まい]になっているそうだ。
そんな二階には幾つかの部屋があって、一つは何も置かれておらず完全に空いているらしい。
ここを、宰相に仕えている“魔術士”が、たまに【テレポート】で行き来しているとのことだ。
その魔術士は、[ダイワ王城]に何度か正式に訪れた過去があるそうだ。
……、まず、お城の内通者たちのなかで、仕事が休みの者が、ポーション類を買いに[薬品店]へと赴く。
その際に、城内の様子を書いた紙をレジカウンターにいる店主親子のどちらかに差し出す。
これを、店主などが、[空き部屋]に【テレポーテーション】してきた魔術士に渡していたらしい。
魔術士は、そうした紙を宰相に届ける。
また、宰相が何かしら魔術士に指示したときは、店主達に伝えに来ていたのだと。
これを、店主らが“伝書鳩”で送っていた。
【瞬間移動】については、王家が許可していないので、当然、バレたら厳罰となる。
最悪は死刑だ。
いずれにしろ…。
ベルーグが、
「もしかして。」
「およそ二年前のラルーシファ陛下暗殺未遂に関わっていたりするのか?」
眉間に軽くシワを寄せつつ訊ねてみたら、
「詳しくは知りませんが、魔術士がそうだったみたいです。」
父親のほうが答えた。
捕まった時点で諦めているらしく、いろいろあっさりと教えてくれる。
続いて、“ハーフエルフのリィバ”が、
「何処にお店を構えているんです??」
そう質問すると、
「王城の近く、飲食店などが建ち並んでいる区域に在ります。」
やはり父が白状した。
これを聞き、
「つまり……。」
「ラルーシファ様を最初に襲撃した犯人らは、あなたがたの薬品店へと逃げ込んだのですか?」
“黒猫の獣人 ユーン”が尋ねたところ、親子が黙って頷く。
それによって、
「どうりで、連中を追いかけるも、探し出せなかったわけです。」
ユーンが苦々しそうにする。
こうした流れで、姉上が、
「ひとまず、その魔術士を拘束する必要があるわね。」
「次は、いつ、現れるのかしら?」
そのように問い詰められたところ、
「急ぎの用が無ければ、七日後かと思われます。」
またしても父親が口を割った。
「では、何人かの兵に店舗を見張らせましょう。」
こう勧めてきたのは“細長眼鏡のマリー副将軍”だ。
そうした提案を受け、
「それが良さそうね。」
「その後、お店を取り壊すか、他の誰かに経営を引き継がせるかは、また改めて考えるとしましょう。」
姉上が述べられる。
ちなみに、所有者がいなくなった[貴族の邸宅]は、どこも解体作業が進められていた。
[ラノワマ宰相の屋敷]も同じく。
姉上のビジョンでは、これらの跡地に、お酒やジュースに調味料の[各工場]や、地球の料理を提供する[飲食店]を、新たに建設なされたいらしい。
ま、おいといて…。
「陛下。」
「その方針でよろしいでしょうか??」
姉上に窺われ、
「あ、はい。」
「了解です。」
オーケーする僕だった。
そこから、捕縛されている親子が[牢屋]へと兵隊に連れられる。
補足として、彼らのもとで働いている従業員たちは、宰相との繋がりなどは全くもって知らないとの事だ。
けれども、念の為、事実確認をしておく運びとなった―。




