第176話 訳柄⑨
僕の【スキル】によって……、
ラルーシファ王を殺せとの指示が下った
できればその姉妹も
誰でもいいので近いうちに毒薬を取りに来るべし
密書の内容が判明した。
殆どのヒト達が〝おぉ~〟と感心するなか、捕らえられている内通者は〝な??〟と目を丸くしている。
まさか読み解かれるとは思わなかったのだろう。
なお、“妹のエルーザ”はまだ眠っており、“マンティコアのラバス”は左後ろ足で顔を掻いていた。
ま、別にいいとして…。
“リーシア姉上”が、
「詳細を洗いざらい白状なさい。」
「さもなければ、あなたを死刑にしたうえで、親族にも何かしらの重罰を与えるわよ。」
こう告げられる。
「くッ……。」
項垂れた男性は、観念したらしく、経緯を語りだした。
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まず、彼と、他三名が、“ラノワマ宰相”に内通していたらしい。
それぞれ理由は異なれど多額の借金があり、この情報を掴んだ宰相が肩代わりするようになったのだと。
〝今後は宰相の命令に従う〟との条件で、月々支払ってくれているそうだ。
そして、兵士が睨んだとおり、不定期ではあるけれど伝書鳩で連絡が届けられていた。
ただし〝相手は王都でポーションなどを製造販売している店舗〟との事だ。
この人物と宰相がどういった関係なのかは、捕縛されている男性も知らないらしい。
そんな彼たち計4名は、誰かしらが休みのとき、お店に足を運んで、城内の様子であったりを記した紙を渡していたそうだ。
表向き、注文の品が書かれているフリをして…。
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「だいたいのことは把握できたわ。」
「取り敢えず、残りの3人を教えなさい。」
「あなた達には牢屋に入ってもらうけど、借金は陛下が一括で返済してくださるから、そこについては心配ないわよ。」
こう喋られた姉上に、僕は〝え?!〟と驚く。
しかし、
「ね??」
「陛下。」
〝ニッコリ〟と微笑まれた姉上に逆らってはいけない気がして、
「……、はい。」
「そのようにします。」
承諾する僕だった。
それを感謝した男性が、別の内通者たちの名前を挙げていく。
ちなみに、現在、お城の“給仕/料理人/王宮魔術師”の一同は、仕事を中断し、お庭の一ヵ所に集められ、数十の兵に囲まれているらしい。
なんでも、逃亡を図る者がいないよう、姉上がすぐさま指令を出されていたそうだ。
(さすがだなぁ。)
(僕もそうした采配を見習わないと。)
このように考えたタイミングで、
「パンケーキィ―ッ!!」
「…ふあ?」
夢から覚める妹だった……。
▽
兵士の1名が、いろいろと伝えるため、外に出ている。
何分か過ぎて、上体を麻縄で縛られた内通者らが、5人の兵による監視のもと連れて来られた。
他の給仕などは通常業務に戻ったそうだ。
その間に、都における巡邏兵の一組を[薬品店]に赴かせている。
ともあれ。
男性給仕と共に内通していたのは“女性給仕/男性料理人/女性王宮魔術師”だった。
余談になるかもしれないけど、女性給仕はリスの、男性料理人は牛の、獣人だ。
こういった面子のなかで、男性給仕は、賭博で借金を負ってしまったらしい。
女性給仕は親族の、女性王宮魔術師は友達の、連帯保証人になっており、雲隠れされてしまったそうだ。
男性料理人は、王城で働く以前に[飲食店]を開くも、失敗してしまい、借金が膨らんでいた、との話しだった。
その四名が、牢に移動させられる。
こうしたなか、姉上が御自身の“お世話係たち”に、
「ラバスの朝食は好物のカラアゲをたくさん作るよう、料理長に頼んであげて。」
「お手柄だったから。」
そう述べられた。
この発言で、ラバスが“サソリの尾”をブンブン振って喜んだ―。




