第171話 展望⑤
翌日。
約束の時間となった。
[第二広間]に主だったヒトたちが集まっている。
僕や“リーシア姉上”に“妹のエルーザ”の“各お世話係”が、[珈琲]や[紅茶]などをテーブルに配膳してくれた。
椅子から起立して、
「皆さんのおかげで、お城に戻ることができました。」
「改めて、本当にありがとうございます。」
お辞儀した僕に、
「儂などはなんにもしておりませんので、お気遣いは無用ですぞ。」
“トラヴォグ公爵”が穏やかに声をかける。
殆どのヒトが頷いたところで、僕が着席すると、
「じゃ、ここからは私が仕切らせてもらうわね。」
姉上が告げられた。
そして、
「まず、転生者とその親族には、今後ともラルーシファ陛下との友好をお願いするわ。」
ひと呼吸おかれ、
「昨日からいろいろ考えたのだけど…、都を移してはどうかと思うの。」
こう述べられたので、誰もが〝え?!!〟と驚く。
目を丸くしつつ、
「姉上、それはまた、何故です??」
疑問を投げかけると、
「そうね……。」
「いくつか、理由があるわ。」
「例えば…、この王城で暮らしていくにはいささか辛い、とかね。」
少し悲しげに微笑まれる。
けれども、すぐに、
「お城も、都も、国名も、何かと新しくして、心機一転、ラルーシファ陛下の治世を築き上げていくのが楽しそうでしょう?」
嬉々として訊ねてこられた。
「え?? その……。」
僕が返答に困ったところ、
「恐れながら。」
「内戦を終わらせるのが先決かと。」
「国名を変更するぐらいであれば、すぐに行なっても差し支えないでしょうが。」
そのように“ルファザ侯爵”が意見する。
「確かにね。」
「まぁ、そもそも、トラヴォグ公爵を通じて、人間などよりも作業が早いらしいドワーフ族に依頼するにしても、資材や予算の問題があるし…。」
〝ん~〟と難しい顔つきになられた姉上に、
「発注していただけるのなら、喜んでお引き受けします。」
「それと。」
「我々の国の南南西に在る“ハグーカ島”であれば、建築に必要な材料を充分に得られるでしょう。」
「上手くいけば、ですがな。」
トラヴォグ公が教えた。
「別称、嘆きの島、ですね?」
こう反応したのは、“細長眼鏡のマリー”だ。
「あー、あれか。」
“ラドン竜王陛下”が理解を示した流れで、
「ならば、予算に関しては、我が国に訪れるがよい。」
「金を採れる場所が幾つかある故。」
「ま、どれもダンジョンになっておるため、魔物と戦う必要があるがな。」
そう語られる。
「ラドン陛下とトラヴォグ公爵のご厚意に感謝します。」
会釈なさった姉上が、
「ある程度、国内が落ち着いてから、また相談させてください。」
このように伝えられた。
そこから、
「唐突だけど、明後日にはラルーシファ陛下が御誕生日を迎えられるわ。」
「私達にとっては暗い出来事が連続したのもあって、お祝いで明るい雰囲気にしたいの。」
「そこで!」
「アシャーリー、セゾーヌ、カトリーヌに、晩餐の調理などを頼んでいいかしら??」
「勿論、ダイワ王城の料理人たちを使って構わないし、報酬は支払うわよ。」
こう提案なされる。
「私は全然オーケ……、了解です☆ミ」
“兎の獣人 カトリーヌ”が〝ニコッ〟とし、
「じゃぁ、私も。」
アシャーリーと、
「私も大丈夫です。」
セゾーヌが、承諾してくれた。
ちなみに、広間には“エルーザ/ルシム大公&次男のルムザさん/竜人のヴァイア/ハイドワーフのフリント/天空人のアンヌ&母君/カトリーヌの兄&両親”も居る。
他には、“僕や妹それぞれの教育係達”と“大公の所の魔女さん”に“侯爵お抱えの魔術士”や“マンティコアのラバス”も…。
さておき。
「それじゃ、決まりね♪」
「遠慮なく家族や親戚も誘って、ぜひ出席してちょうだい♬」
ご機嫌になられる姉上だった―。




