第166話 交錯するもの⑰
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私は、リーシア=イズモ。
ダイワの王姉。
“ラダン兄上”を反省させるためお城に戻るべく“ルシム大公”を始めとしたいろいろな人達の力を借りる。
“初代ラダーム王”の“近衛衆の末裔”がいたのには、ラル君ともども感動したわ。
あと、メイラの娘である“マリー”など、歴史学に携わっている者が興味深さそうにししていた…。
そこから、ラル君とエルの母方の祖父にあたる“ルファザ侯爵”の[屋敷]に赴く。
侯爵が準備しておいてくれた書状を完成させて、国内の[南方/東方/西方]で味方に付いてくれるであろう人々へ届けさせるために。
内容としては、兄上が謀反を起こした件に、ラル君が正統に王位を継承した事や、敵対するかもしれない領主たちを押さるようにと、記されている……。
[ウィンスト領]と[モガン領]の境で夜襲を仕掛けられてしまう。
“ラドン竜王陛下”によってすぐに収まったけど。
命令したというモガン子爵や、この妻子を、捕らえたところで、“ラノワマ宰相”と“ライニル叔父上”が兄上をそそのかしたことが分かったの。
しかも、ライニルは最初から兄上を利用するつもりだった。
(絶対に許さない!!)
そう秘かに誓うなか、新たな領主などが決められていったの…。
ラル君達と同じ転生者だという“兎の獣人”が現れた。
日本ではアシャーリーの幼馴染だったらしい。
彼女にも当然ながら【神法】が備わっている。
あと、[地球のお菓子]を作れる【特殊スキル】も。
[ドーナツ]などを食べたときには、あまりの美味しさに、目/鼻/口/耳から【光線】が出たわ☆ミ
……、ええ、勿論、想像よ。
さておき。
今度は、モナイ伯爵との戦いに突入していく。
“マンティコアのラバス”に跨ったラル君が、[神剣ムラクモ]を抜いてみせたり、【閃光貫】を放った事によって、殆どの者が跪いた。
また、ラドン陛下がたが“竜”に変じてくださったおかげで、一滴の血も流さずに勝利できたの。
竜たち…、なかでも特にラドン陛下の壮大さには、誰もが驚き固まったわ。
いえ、“妹のエルーザ”と“ハーフエルフのリィバ”に“兎のカトリーヌ”は、はしゃぎまくっていたけれど。
二回も。
……、ともあれ。
北方の七割を掌握したライニルが、中央区に進軍したらしい。
水面下で自分と繋がっていた人物の領地へと。
ライニルより先に[王城]を手に入れるべく、私は【瞬間移動】を提案した。
“隻眼のベルーグ”による後押しもあって、賛同を得られたわ。
こうしたベルーグを[将軍]に、“黒猫の獣人 ユーン”の薦めでマリーを[副将軍]に、任命したの。
あくまで、王であるラル君が。
それにしても…、二人は恋仲なのかしら??
だとすれば、メイラに伝えれば良かったのに。
……、もしかして、まだ発展していないとか?
であれば、何も言い返せないわね、さすがに。
あと、個人的には、ラル君と“天空人のアンヌ”が、いい雰囲気だと思うのだけど…。
余計な詮索は野暮でしかないから、やめておくべきよね。
……、いつかユーンにでも訊いてみましょう。
まぁ、これらは、ひとまず、おいといて。
私達はお城に渡る。
内戦を早期解決するためにも…。
“王宮魔術師のマハーナ”によって、ラル君が独りで建物内を進んでいく。
……、暫くすると、走って帰ってきた。
顔面蒼白で焦っているラル君が、私とリィバを伴って、敷地の東側へと駆けだす。
余談になるけれど、私と妹には、まだ[防具]がない。
王侯貴族のドレスは動きづらいので、今は男性みたいな服装をしている。
話しを戻して…。
考えもしないことになっていたわ。
まさか兄上が自害するだなんて。
きっとそれだけ精神的に追い詰められていたのでしょうね。
私などには計り知れないぐらいに……。
ラル君の判断で、兄上の遺体も[王家の墓]に埋葬してもらえる事になった。
本当にありがたい。
ここから、一部の人にだけ残ってもらい、解散したの。
すると、エルが居なくなっていたわ。
慌てた私ではあったけど、おそらく[両親の部屋]だと冷静に推測し、そこに行ってみる。
ラル君とラバスも…。
妹は、ベッドの上で号泣していた。
後ろからエルを抱きしめた私も自然と涙が零れ落ちる。
家族を一気に3人も失ったのが辛すぎて。
その感情に蓋をして堪え続けようとするのには無理があったみたい。
こうしたなか、ラル君が隣に寄り添ってくれる。
外では、雷雨が激しさを増してゆく。
私たちの心を表すかのように―。




