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第165話 永訣②

またしても雷鳴が轟くなか、兄上の教育係でもあった“バルリック・マハーナ”が立ち上がり、


「ラダン様の葬儀、私に一任していただければ幸いです。」

「それを最後の勤めとし、“王宮魔術師統括責任”の座をレオディンに譲り、引退させていただきとうございます。」


そのように願い出る。


「何を言っておるのだ??」

「バルリック!?」


困惑するレオディンに、


「頼む。」

「友として、我儘(わがまま)を聞いてくれ。」

「私は、新たな王朝にいてはならない。」

退()き際なのだ。」


こうマハーナが主張した。


「いや、しかし…。」


レオディンが渋るなか、


「ラルーシファ陛下、マハーナの意を()んであげられては如何でしょう?」


そう“リーシア姉上”に勧められる。


「では、そのように。」


僕が了解したことで、


「ありがとうございます。」


マハーナが再び頭を下げた。


一方のレオディンは〝うッむぅ~〟と複雑そうな顔つきになっている。


これを余所(よそ)に、


「じゃぁ、お開きにしましょう。」

「全員、地元に戻りたいでしょうし、これ以上は雨に濡れていたくないでしょうから。」

「ただ、ルシム大公とルファザ侯爵は、もう少しだけ(とど)まってちょうだい。」

「まずは軽くでもいいから今後の事を打ち合わせしておいたがいいと思うの。」


姉上が提案なされた。


〝ふむ〟と頷いた大公が、


「ならば、ルムザ達は屋敷に戻れ。」

「ルーザーへの報告を頼む。」

「一番隊は、悪いが、暫く王城の警備にあたってくれ。」


そう指示する。


「分かりました。」


アシャーリーの父親である“ルムザさん”と、


「かしこまりました。」


一番隊の女性隊長であり、初代ラダーム様の近衛衆(このえしゅう)の末裔、といった“ルイ・エスガー”が、従う。


「それでは、私の所も。」


侯爵に促され、部下の人々が「はッ!!」と応じた。


「でしたら、私たちもそのように致しましょう。」


こう立候補したのは“スーザン・チルシー女伯爵”だ。


「いいえ、貴女には領主としての地盤固めがあるわ。」

「それから、兄上を退位するよう説得したという者を探す役目もね。」

「あと、ウィリ男爵は、フォード子爵を手助けなさい。」


姉上に促され、


御尤(ごもっと)もにございます。」


女伯爵と、


「承知しました。」


男爵が、会釈する。


そうしたところで、“ラドン竜王陛下”に、


「ならば。」

「我などは明日(あす)にでもまた伺おう。」

「ラルーシファ王よ、今と同じくらいの時間に、ここへ瞬間移動してきても構わぬか??」


このように訊ねられ、


「あ、はい。」

「勿論、許可させていただきます。」


僕は受け入れた。


それによって、“ハイドワーフ/天空人/(うさぎ)の獣人達”も、取り敢えず帰宅することになる……。



城内の[一階エントランス]にて。


残っているメンバーが、各自のアイテムボックスに収納していた[タオル]で、髪の毛などを拭いていく。


ここから、マハーナが、


「部屋でおとなしくしている料理人や給仕などに、現状を報せ、職務に戻るよう伝えてまいります。」


そのように述べた。


「では、儂も行くとしよう。」

「手分けしたが早かろうからな。」


レオディンが持ち掛けた事で、全ての“教育係&お世話係”も協力する。


“黒猫の獣人 ユーン”が、


「ラルーシファ様がたは、第一広間でお待ちください。」

「後ほど温かいお飲み物を御用意しますので。」


お辞儀して、去ってゆく。


大公や侯爵の兵たちも散らばりだす。


警備のために。


皆が〝ドタバタ〟している最中(さなか)、僕などは指定の場所へと歩きだす…。


[広間]で、


「それじゃ、座りま」


と言いかけた姉上が、


「エルは?!」


落ち着きを失われた。


「え??」


僕が振り返ってみると、“妹のエルーザ”が見当たらない。


“大公/侯爵/マンティコアのラバス”はいたけど。


「周りが慌ただしく動いているどさくさに紛れて、姿を消したわね。」


こう分析なさった姉上に、


「一体、何処へ?」


僕は尋ねる。


「……。」


少しお考えになった姉上が、


「おそらく、あそこでしょう。」


何かしらの目星を付けられた。


大公や侯爵には休んでおいてもらって、僕とラバスは、姉上に続いて足を運びだす。



僕らは[両親の寝室]に赴いている。


開けっ放しのドアから(なか)を覗いてみたところ、妹がベッドに座っていた。


こちらに背中を向けて、おもいっきり泣いている。


「きっと実感が湧いたのでしょうね。」

「〝父上と母上にはもう二度と会えない〟といった。」


そう解釈なされた姉上が、エルーザに近づいてゆく…。


履物(はきもの)を脱がれると、ベッドに乗って、妹を後ろから抱きしめた。


こうした姉上が、小刻みに震えだされる。


……、そんな二人の左隣に、僕は腰かけた。


姉上は、声を押し殺すようにして、涙を流されている。


悲しさに胸を締め付けられながら僕はエルーザの頭を撫でていく。


ラバスは、部屋の床に伏せたみたいだ。


外では雷を伴った雨が強まりだした―。


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