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第164話 永訣①

風が吹き、小雨の降るなか、窓から顔を出した僕は、下を覗き込む。


地面では“ラダン兄上”が仰向けになっている。


(この高さからじゃ、もう…。)

(いや、まだ分からない!)


そう思った僕は、急ぎ、全速力で駆けだした。


お城の東側に在る兄上の部屋から、南の[一階エントランス]へと……。



外で足を止めた僕は、息を切らしつつ、


「姉上!! リィバ!」

「僕に付いてきて!!」

「他の皆は、もう少しだけ、待っていてほしい!」

「ごめん!!」


こう告げて、再びダッシュする。


そんな僕に、


「ちょッ、ラル君??!」


“リーシア姉上”と、


「ラルーシファ王?!!」


“ハーフエルフのリィバ”が、続く…。



走りながら、視界に映ったらしい二人が、


「兄上??!」


「ラダン王兄(おうけい)?!!」


驚きの声をあげた。


後頭部から大量に血を流している兄上の側で、僕達はストップする。


「失礼。」


片膝を着いたリィバは、右の人差し指を、兄上の鼻に近づけた。


数秒後、僕らのほうを見て、首を横に振ったリィバが、


「手遅れです。」

「呼吸をなさっておられません。」


このように述べる。


僕は、一縷(いちる)の望みにすがって、


「でも、アイテムボックスに収納なされている筈の品物が散乱していないから、まだ生きておられるのでは??」

「だとしたら治癒魔法とかポーションで助かるんじゃ?」

「今であれば。」


そう質問した。


しかし、立ち上がったリィバに、


「自ら命を絶たれる方々のなかには、亜空間に入れておいた物を(あらかじ)め取り出して、別の場所に保管したり、廃棄しておくヒトも、います。」

「生前整理で。」

「おそらくは、王兄もそのようになさっておられたのでしょう。」


こう説明される。


姉上が、


「そんな。」


ご自身の口を両手で押さえられた。


その右隣で、僕は、ただただショックを受ける。


またも、空が光り、雷が鳴り響いた……。



全員が待機している所まで戻って、僕は状況を伝えていく。


すると、兄上の教育係を務めた経歴のある“バルリック・マハーナ”が、


「なんと、いう、事だ。」


ふらついて、


「ラダン様。」


膝から崩れ落ちた。


こうしたところで、旧友である“魔術師のレオディン”が、半ば放心しているマハーナに代わり、


「ラダン殿下の御遺体は、どうなされましたか??」


そのように尋ねてくる。


「一旦、ボクの“亜空間収納”にお預かりしています。」


こう答えたリィバが、


「ところで。」

(ひつぎ)を業者に発注するにしても、埋葬は如何なさいましょう?」

「恐れながら、王兄は謀反(むほん)を起こされたので…。」


途中で口を閉ざす。


僕が〝ん??〟と首を傾げるなか、


「そうね。」

「兄上は、罪人、国賊と言ってもいいわ。」

「なので、“王家の墓”は無理よね。」


そのように姉上が喋られた。


意味を理解した僕は、


「待ってください。」

「兄上はそそのかされただけであり、本当に悪いのはライニル叔父上とラノワマ宰相ですよ。」

「だから、兄上も“王家の墓”に入れてあげませんか?」


こう訊ねる。


「でも、それは、兄上を〝正式な国王だった〟と認めることになるのよ??」

「ラルく…、陛下がいろんな人たちから非難されるかもしれないわ。」

「私としては、お勧めできないのだけれど?」


窺われた姉上に、


「僕は構いません。」

「兄上の名誉の為にも、ぜひ、お願いします。」


そう返す。


〝ん~〟と姉上が悩まれるなか、“ラドン竜王陛下”が、


「よい覚悟だ。」

「英断であろう!」


〝うむ〟と頷かれた。


結果、


「……、ラルーシファ陛下、御恩情、誠にありがとうございます。」


姉上が僕に頭を下げられた。


更には、


「私からも…。」


正気に戻ったらしいマハーナが両手を地面に着いて、


「心より、お礼申し上げます。」


感謝する。


「二人とも、姿勢をラクに。」


こう僕が促したところで、


「今後はどうなされます??」

「ラルーシファ王陛下の即位式や、竜王陛下との調印式に、ラダン殿下の葬儀、それらの日取りと、内戦の終息を図ったりなど、いろいろと話しを進めていかねばなりますまい。」


“ルファザ侯爵”に提案された―。




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