第149話 真相①
“サルバ・モガン子爵”がどこかしら骨折したんじゃないかと、僕は心配になる。
けれども、“獣人のユーン”が、それなりに手加減していたらしく、大丈夫だったみたいだ。
まぁ、蹴られた左頬は腫れ上がっているけど…。
そんな子爵と、五名の兵士も、ロープで縛られ、[1階のエントランス]に座らされた。
子爵をはじめ負傷した人々に、“ハーフエルフのリィバ”が【治癒魔法】を施してあげる。
こうしたところへ、2階の[左廊下]から、
「なんの騒ぎなの?!」
「さっきから!!」
40代前半ぐらいの女性が〝ツカツカ〟と歩いてきた。
他に、20歳あたりの女性も見受けられる。
その二名の後ろから、五人の守兵が続く。
「あなた??!」
「どうなさ、ひッ?!!」
「魔獣!??」
“マンティコアのラバス”に驚いて足を止めた40代の女性の近くで、
「お父様?!!」
「強盗か何かなの??!」
やはりストップした20歳くらいの女性が、
「あの侵入者達を早く捕らえなさい!!」
兵隊に命令した。
しかし、
「やめよ!」
「ダイワの新国王陛下だ!!」
「あと、サウスト大陸の竜王陛下もおられる!」
「最悪の場合、全員、助からんぞ!!」
すぐに子爵が伝えたことで、計七名が呆然とする……。
▽
子爵の妻子なども、捕縛されたうえ、[1階エントランス]に正座させられた。
“ルファザ侯爵”が、
「さて…、モガン子爵よ。」
「詳細を聞かせてもらおう。」
「そなたは、ラダン殿下に付いたのか、もともとライニル公爵と水面下で繋がっていたのか、何故、中立を破り、ラルーシファ陛下を狙った?」
このように訊ねる。
躊躇う子爵に、
「洗いざらい正直に白状せねば、お前ら家族の命は無いと心得よ。」
“ラドン竜王陛下”が告げられた。
それを“ルシム大公”が、
「確かに。」
「明朝にでもそなたら三人を町中で公開処刑したとて一向に構わん。」
「我々は、この件に関して何ひとつ情報が得られずとも、王城を目指しさえすればよいのだからな。」
後押しするかのように更なる脅しをかけた。
こうしたなかで、ラバスが歯を剥き出しにして〝グルルルルゥッ〟と威嚇している。
子爵の妻子は怯えきっているみたいだ。
ちなみに、僕は、既にラバスから降りている。
ま、それはおいといて。
「あ、あなた、こ、ここは、ささ、逆らわず、に、従って。」
「わ、わわ、私と、む、娘まで、しし、し、死なせる、つもり??」
奥さんに促されたうえ、
「お、お父様ぁ~。」
娘に乞われた子爵が、
「絶対に我らを殺しはしないと、約束してくださるのであれば。」
意を決した……。
▼
子爵は、およそ十年前から“ライニル叔父上”と手を組んでいたそうだ。
これを踏まえて。
先日、ラダン兄上から書状が送られてきたらしい。
内容としては〝王位を継いだ〟というのと〝反対するであろう者らを粛清せよ〟といったものだったのだとか。
そこから暫くして、ライニル叔父上からの手紙を受け取る。
こちらには、〝謀反人ラダンを共に誅すべし〟と認められていたそうだ。
そうした頃に、僕らの書状も届いた。
これによって、僕を討ち取れば〝ライニル殿下が多大な恩賞を与えてくださるだろう〟と考え、配下の兵隊に襲撃させたらしい…。
▲
「妙ですね。」
「ラダン殿下とライニル公は結託していたのでは?」
リィバが首を傾げたところ、
「ライニル殿下は裏切ったのだ。」
「いや、最初からそのつもりでおられた。」
このようにモガン子爵が述べる。
「つまり〝自分が国王になるためラダン殿下を利用した〟と??」
「大義名分を欲して。」
改めて質問したリィバに、子爵が「あぁ」と頷いた。
“魔術師のレオディン”が、
「なんと下劣な。」
怒り混じりで呟く。
“隻眼のベルーグ”は、
「そこまで腐っておられるのか。」
眉間にシワを寄せた。
少しの沈黙が流れ、僕などの祖父が、
「そう言えば。」
「何日か前に、口論になった二人の男性を牢に入れたとか?」
「理由は??」
新たに尋ねる。
「あー。」
「奴らは、私がライニル殿下を支持しているのをどこかで知ったらしく、〝中立を保つべきだ〟とうるさかったもので……。」
「後々、食事に毒を盛って病死に見せかける予定でした。」
そのように答える子爵だった―。




