第143話 漸進②
竜人にハイドワーフや天空人が、順次、【テレポート】してきた。
ヴァイアのところは、“ラドン竜王/三兄のガオンさん/双子兄妹のドッシュさん&ラッスさん”だ。
先生は“トラヴォグ公爵&ディーザさん夫婦/伯母のフィネルンさん”に、初めて見る男性が1人いる。
なんでも、トラヴォグ公たちの次男さんで、“エベルク”という名前らしい。
先生の父親は、男性×4と女性×4の8人兄弟だったのだとか。
しかしながら、次女さんと三男さんに、四男で末っ子だった父君は、それぞれ何かしらの事情で亡くなられている。
アンヌには“母親のザベルさん/従姉妹のレミンさん/教育係×5/お世話係×5”が付き添っていた。
〝アシャーリーの所だけではセゾーヌ母子の護りが薄いだろうから〟との配慮だそうだ。
こうした教育係&お世話係は、殆どが女性だった。
それはさておき。
「もうじき約束の時間になるので、参りましょう。」
“ルシム大公”が勧めたことで、“リーシア姉上”が【瞬間移動】の詠唱を始める……。
▽
僕らは、“ルファザ侯爵”の[館の敷地内]に【テレポート】した。
ルシム大公の所より狭いので、いささか窮屈だ。
ま、おいといて。
正面玄関にいた人々が、
「お待ちしておりました。」
侯爵を筆頭に会釈する。
そこから、
「全員は屋敷に入りきれないので、ラルーシファ陛下を始め、少数のみ、お願い致します。」
「て…。」
「竜人族の方々がいらっしゃるようですが??」
僕などの祖父である侯爵が目を丸くした。
「あー、はい。」
「ラドン竜王陛下です。」
「それと、ハイドワーフのトラヴォグ公爵に、天空人の大公の御令嬢ルレアさんも、同行してくださいます。」
「詳しい紹介は後程にしましょうか?」
こう僕が質問したところ、
「え??」
「……、ええ。」
顔ぶれに対して更に驚いた様子の侯爵が、
「そのほうが、ありがたいです。」
「ラルーシファ陛下には、例の件に取り掛かっていただきたいので。」
そう述べる。
侯爵の一族と給仕達などが固まっているなか、
「ふむ。」
「それでは、何処かで野営させてもらって構わぬか?」
ラドン竜王に尋ねられ、
「は、はい。」
「現在、町の外、北門の近くに、私の配下である兵士らを待機させておりますので、そちらでよろしければ、魔術士に瞬間移動でお連れさせます。」
このように説明する侯爵だった。
それによって、“僕/姉上/妹のエルーザ/教育係/お世話係/ルシム大公/マンティコアのラバス”が残る事でまとまる…。
▽
僕たちは[広間]で作業を始めてゆく。
幾つかある[長テーブル]の1つには、何十枚もの書状が置かれていた。
これらは[ダイワ王国のいろんな領主に当てた手紙]だ。
まず、国内は[中央/北方/東方/南方/西方]の5つに分かれている。
それぞれに大中小の領地が約20コ存在しているみたいだ。
つまり、合計で100数あたりになる。
以前までは、おおよそではあるけれど、この三割がラダン兄上派で、二割が僕を支持している人達、他の三割が中立を保ち続けていて、あとの二割は王にのみ忠誠を誓ってきた、らしい。
なので、味方に付いてくれるであろう領主などに、書状を送ることになっていた。
基本的には、僕を推してきてくれた人々や、国王への忠義忠節を重んじるメンバーだ。
兄上の謀反と、僕が父上から王位を継承して兵を挙げた事に、王都を目指す旨を、この屋敷の大人たちが認めておいてくれた。
まぁ、相手によっては細かい要請を書いたらしいけど、簡単に言えば〝呼応せよ〟といった内容になっている。
それらの手紙に、僕が署名して王印を押す。
大人達は、これを折って封筒に入れる。
受け取った姉上が、僕の代わりにシーリングスタンプを行なっていく。
その印璽に使う金は侯爵が用意してくれたので、今回の騒動が終わったら返す約束だ。
ちなみに、エルーザと“従兄妹のルーシー”は、床でラバスを撫でている。
ルーシーの兄にあたる“ファルン”は僕らのほうに参加してくれていた―。




