第141話 漸進①
代表した“マリーの母”による説明で、
「のうりょくかいじ!」
“妹のエルーザ”が唱える。
そうして、
「おぉー!!」
「なにこれぇ~?!」
「あたまのなかに、もじがでてきたぁー!!」
妹のテンションが上がった。
「あ。」
「理解できないんじゃ??」
ふと口を開いた僕に、
「大丈夫よ。」
「読み方だけなら母上が教えていらっしゃったから、難しい文字でさえなければ分かるわ。」
「あと、書くのも無理みたいだけど。」
このように姉上が知らせてくださる。
ふと僕もそうだったのが思い出されるなか、エルーザが自身の【能力】に関して喋りだす…。
▽
妹には、全ての【戦闘スキル】が備わっていた。
どれもまだ“壱”みたいだけれど。
それと、【小規模の亜空間収納】があるらしい。
ただ、【魔法】は1つも無かったようで、エルーザが落ち込んだ。
しかしながら、
「あまり気にしなくていいわよ。」
「魔法に関する鍛錬を積んでいけば、いつか習得できるから。」
「それよりも。」
「あなたのレアスキル、なかなか凄いわよ!」
“リーシア姉上”に言われ、機嫌を良くする妹だった。
ここから、
「エル、取り敢えず着替えましょう。」
「私たち、二人ともドレスで、動きづらいから。」
そう提案した姉上が、
「ここと部屋を行き来するのに、瞬間移動、使っていいかしら?」
「時間を短縮したいの。」
アシャーリーに質問なさる。
一瞬〝え??〟と戸惑ったものの、
「あ、はい。」
「それぐらいのことであれば、問題ないかと。」
このように答えるアシャーリーだった……。
▽
姉上と妹は、男子みたいな服装になっている。
僕らの合同鍛錬に参加なされた姉上もまた、ある【レアスキル】を備えておられたのだけど…、ま、追々にしよう。
少し離れた位置では、エルーザが、メイラ達と、どれを習っていくか話し合っていた。
その近くで“マンティコアのラバス”が欠伸する……。
▽
“竜人のヴァイア&祖父君/ハイドワーフの先生&祖父君/天空人のアンヌ&従姉妹さん”と別れた後、僕と姉上に妹の“お世話係たち”が[館]に戻ってきた。
何名かの給仕と買い出しに赴いていたらしい。
数時間が経ち、夕方になったところで、“長男さん家族”が、お抱えの魔術士によって[港町スブキィ]から【テレポート】してきたみたいだ。
他にも、あちらで働いていた人々が一緒に移ってきたらしい。
これは、お昼過ぎに“ルシム大公”が女性魔術士さんの【テレポーテーション】でむこうに渡った事によるものだった。
つまり、今までの経緯を伝えた大公が、帰って来るよう促したのだ。
大公はもとより、アシャーリーも僕らと共に[ダイワ王国]へ向かうのを決めている。
そのため、心配したアシャーリーの両親が付き添う運びとなった。
よって、大公が、留守にする間こちらのことを長男さんに任せるべく[スブキィ]から戻ってこさせたらしい。
あちらの領主にも事情を告げたうえで。
余談になるけれど、館の部屋が、満室になった。
それと、各自、ラバスに怖がっている。
まぁ、暫くしたら、“長男ルーザーさん”のところの“ルーシス”と“シャルロッテ”は、ラバスを撫でだしたけど。
エルーザの勧めもあって。
当のラバスは少なからず鬱陶しがっていた。
あと、セゾーヌも僕達と行動する旨を表明している。
“元クラスメイト”であり“同じ転生者”ということで。
こうしたセゾーヌの母親は、雑用係として従軍するようだ。
やはり娘の身を案じて…。
▽
翌日のPM13:50頃。
[館]の正面に、男女問わず200名の兵隊が集結した。
全員が[黒を基調とした軍服]を着用しており、どこか中世ヨーロッパみたいな印象だ。
その最前には、1人の女性が直立している。
20代後半くらいで、背中あたりまでの長さがある髪や、眉に、瞳は、ライトブラウンだ。
こうした彼女の背後に、残りの兵士たちが整列していた。
「あの者は“ルイ・エスガー”といって、ここにおる“中央軍の一番隊”を率いております。」
「ルイを始めとした25人ほどは、初代ラダーム様の近衛衆の末裔です。」
「ちなみに、彼女ら以外は別の職種に就いています。」
そう述べた大公が、
「こちらは、ダイワの新しき国王、ラルーシファ=イズモ陛下であらせられる!!」
「そして!」
「両脇におられるは、王姉と王妹の両殿下である!!」
一番隊に報せる。
〝は?〟と理解できない様子のルイ達を、
「何をしておる??」
「御前であるぞ!」
「無礼であろうがぁッ!!」
大公が叱りつけた。
これによって、
「申し訳ございません!」
ルイを筆頭に“中央軍の一番隊”が急ぎ跪く―。




