第140話 ターニングポイント③
それなりの人数なので、[広間]で夕飯となった。
[食堂]では手狭なため。
配膳されたメニューは、[ソフトパン/ハンバーグ/ケチャップスパゲッティ/野菜スープ]だ。
パンは1人につき2個ある。
ケチャップスパゲッティ…、つまり、日本で言うところの[ナポリタン]は、半人前の量だった。
他には各自に応じて[ジュース]や[ビール]が出されている。
“リーシア姉上”や“妹のエルーザ”などは、[ハンバーグ]と[ケチャップスパゲッティ]に関しては初めてなので、感激しているみたいだ。
大人は[ビール]にもテンション上がっていた……。
▽
“ルシム大公”によって、ひと部屋ずつあてがわれようとするも、姉上がエルーザとの同室を望まれる。
これまで両親と一緒に寝ていた妹を淋しがらせないために…。
▽
翌日。
朝食が済んで暫くしたら、合同鍛錬の参加者と、付き添いのヒト達が、次第に集まってきた。
顔ぶれは、“竜人のヴァイア&祖父君/ハイドワーフの先生&祖父君/天空人のアンヌ&従姉妹さん”だ。
[広間]に足を運んでもらい、姉上と妹などを紹介した流れで、本題に入る僕だった……。
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「成程。」
「それで重々しい空気になっておったのか。」
そのように口を開いた“ラドン陛下”に、「はい」と頷いた僕は、
「なので、皆さんとは暫く会えなくなります。」
「いえ、もし、ダイワ王国の内戦で僕が命を落とすような事があれば、これが最後になるかもしれません。」
こう六名に伝える。
すると、
「僕も行きます!」
「たいした力にはなれないでしょうが、元生徒を放ってはおけませんので。」
先生が立候補してくださった。
誰もが先生に注目するなか、
「よくぞ申した!!」
「それでこそ儂の孫だ!」
「世の中、義理人情は欠かせんからのッ。」
“トラヴォグ公爵”が上機嫌となる。
その状況で、ヴァイアが、
「私も共に。」
ラドン竜王を窺う。
これに〝うむ〟と頷き、
「ラダームの子孫たちのためだ。」
「我も動こうぞ!!」
〝ニッ〟と笑みを浮かべる竜王だった。
更には、
「私も、ご一緒したいのですが。」
アンヌが“従姉妹のレミンさん”を見る。
「あー、ん~。」
少し困った表情になるも、
「私が許可するわけにはいかないわ。」
「あなたの母親に聞いてみないと。」
「それに、お祖母様の承諾が必要になるかも…。」
「ま、私もお願いしてあげるわよ。」
優しく述べるレミンさんだった……。
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取り敢えず、僕ら子供達は、合同鍛錬のため[庭]へと赴く。
それに、〝面白そう〟との理由で姉上が付いて来られる。
当然、エルーザも。
“姉上の元教育係たち”もまた興味を示したようで、後ろに続いてきた。
他に、今日の担当だった“細長眼鏡のマリー”と“アシャーリーの教育係”がいる。
あと、“マンティコアのラバス”が、お供してくれていた。
なお、“メイラ&マリー母子”は、あれから仲直りしたようだ。
いずれにせよ。
僕たちの稽古を暫く眺めておられた姉上が、
「私も参加するわ!」
嬉々として宣言なさる。
こうしたところで、
「わたしも―!!」
妹が希望した。
「いや、だけど、まだ七歳になってないから。」
そのように僕が止めると、〝ピョン ピョン〟跳びはねつつ、
「や、だッ! や、だッ!」
「わ、た、し、も、や、り、た、い~ッ!!」
エルーザが自己主張する。
この隣で、お座りしているラバスが、妹につられて〝縦ノリ〟していた。
さておき…。
エルーザを強く叱るべきか否か悩む僕へと、
「妹さんは、日本だと小学一年生になる頃ですよね?」
「だとしたら、いろいろな学びをスタートさせてあげても構わないのでは??」
先生が声をかけてこられる。
「ですが、ダイワ王国の決まりごとですし…。」
躊躇う僕を、
「いいんじゃないかしら。」
「その“しょうがくいちねんせい”や“すたーと”が、どういう意味かは分からないけれど、兄上の軍勢との戦でラル君や私にもしものことがあるかもしれないでしょ?」
「そうなった場合、エルが女王になるのだから、これに備えて、知識や経験を与えておくべきよ。」
姉上が説得しようとなされた。
「でも、仕来たりがあるので。」
了解しがたい僕に、
「そんなもの、囚われていると何もできやしないわよ。」
「もはやラル君が国王なんだから、改めればいいじゃないの。」
そう姉上が告げられる。
さすがは発想が自由な人だ。
……、まぁ、確かに姉上の考えはもっともだと思う。
僕ら姉弟が亡くなりでもすれば、エルーザに王位を継承してもらうしかないのだから。
納得した僕が、
「もともとの予定より時期を早めるけど、妹の指導、よろしく頼んだよ。」
メイラ達5人に伝えたところ、
「はッ!」
「王命、謹んでお受け致します!!」
揃って跪く。
この結果、
「やったぁー♪」
万歳して喜ぶエルーザだった―。
 




