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第139話 訳柄⑥

“セゾーヌ”が母親と共に[広間]へと足を運んできた。


僕の勧めによって、主だった者が、幾つか在る円卓へと散らばって席に着く。


そうしたところで、給仕たちが[アップルティー]を配膳してくれる。


“リーシア姉上”や“妹のエルーザ”など初めて飲んだヒトらが瞳を輝かせた☆


“マンティコアのラバス”のぶんは[銀製ボウル]に入れてある。


ゆったりとした雰囲気のなか、僕は転生などについて語ってゆく。


“初代ラダーム様と近衛衆(このえしゅう)”の件も含めて……。


何分か経ち、聞き終えた姉上が、


「それで、神法(しんぽう)が備わっていたり、ムラクモの光線を扱えるのね!」

「しかも、数柱の神々にお会いしたりだとか、実戦を積んでいってるだなんて、ラル君、凄いじゃない!!」


まるで自分のことのように喜んでくださる。


裏表のないかただから、本心に違いない。


なんだかくすぐったくも嬉しくなるなか、


「にぃさま、すっごぉーい!」


妹が〝ニコニコ〟した。


きっと、あまりよくは分かってないんだろうけど。


これもまた、以前、見た事のある光景だ。


余談かもしれないけれど、いろいろと知らなかったヒト達は驚きを隠せないでいた。


さておき。


「それらの件を、他に把握しているのは?」


姉上に問われ、


「父上にはレオディンを通じて伝わっています。」

「なので、もしかしたら、母上も。」


そう答える。


「ところで。」

「どうして、姉上の()教育係たちも、ここに訪れたんです??」


今度は逆に僕が尋ねてみたら、


「あー、それね。」

「私が13歳になった時点で契約は満了を迎えたのだけれど…、父上が〝次はエルーザが7歳になったとき担当してもらいたい〟〝それまでは別の役職を与えるので、城で勤めてくれ〟ってお願いなされたのよ。」

「そういうのもあって、私が1人で鍛錬する際に、たまに見てもらっているの。」

「これまでの(よし)みで。」

「魔法は問題ないのだけど、戦闘スキルは12歳を過ぎてからようやく習得したというのもあって心許(こころもと)ないのよ、個人的に。」


このように述べられた。


「……、あ、そう言えば。」

「去年の春に僕が帰省した際、マリーの母が姉上と一緒に居ましたね、庭に。」


ふと思い出したところ、姉上が「ええ」と頷かれる。


「すみません。」

「自分のことで頭がいっぱいで、うっかりしていました。」

「あの頃、姉上は既に13歳になっていらっしゃったというのに。」


僕が謝ると、


「いいのよ。」

「ラル君は、神剣(しんけん)を抜いてからというもの、二度に亘って命を狙われたり、親元を離れて暮らす事になって、それどころじゃなかったでしょうから、自分を責めたりしないで。」


優しく微笑む姉上だった。


そうした流れにて、後ろを振り返った僕は、


「知ってたんだよね? 当然。」


別の円卓にいる“細長眼鏡のマリー”に確認してみる。


「はい。」

「約1年前に母のメイラと再会したとき、いろんな話しをしましたので…。」

「申し訳ございません。」

「ラルーシファ王は、リーシア王姉(おうし)あたりから伺っているものだと、勝手に判断し、ご報告しておりませんでした。」

「お許しください。」


お辞儀したマリーに、


「いやいや、そんな深刻に受け止めなくていいよ。」


このように声をかける僕だった。


「それにしても……。」

「父上が、私の元教育係達に〝リーシアの担当を途中で投げ出すことなく最後まで務めあげたそなたらであれば、エルーザが相手でも大丈夫だろう〟〝いや、寧ろ、そのほうらしかおらん!!〟〝信用しておる故、何がなんでも頼んだぞ!〟て、切実に仰せになられていたけれど…、あれってどういう意味だったのかしら??」


姉上が首を傾げたところ、他の席にいる“メイラ”が〝はぁー〟と溜息を()き、


「本当にお分かりになっておられないので?」


そう訊ねる。


ますます〝ん~??〟と姉上が不思議がったら、


「誰かさんによく似て、おてんばだからですよ!!」

「エルーザ王妹(おうまい)が!」

「貴女様の数々の悪戯(いたずら)を受け継ぎ、隙さえあらば行動に移す!!」

「それがどれだけ(はた)迷惑な事かぁ!」


おもいっきり激昂するメイラだった。


僕と目が合った妹が、何故だか右の親指を〝グッ〟と立てつつ〝ニカッ〟とするなか、


「ちょっ、待っ。」

「11歳になった頃からイタズラは自然と減っていったし、いつしか全くもってやらなくなったでしょ!!」


姉上がメイラに対抗する。


起立して、


「もう終わったことだから関係ないとでも?!」

「〝過去にする〟にはまだ早すぎます!!」

「反省、いえ、猛省してください!」


メイラがヒートアップしたところへ、


「なんだか、祖母と孫娘、といった感じですね。」


何気なくマリーが口にした。


結果、


「何を言ってるんです??」

「そもそも、あなたが私に孫の顔を見せるべきでしょうが!!」

「そういうお相手はいないのかしら?!」

「え??」

「どうなのッ?!」


メイラの火に油を注いでしまったようだ。


「そっ、それは……。」


反論しかけて黙ったマリーへと、


「なんです??」

「ハッキリなさい!!」


メイラが凄む。


この状況に、マリーの隣に座っていた“隻眼のベルーグ”が、


「まぁまぁ、落ち着いて。」


躊躇(ためら)いがちでメイラを(なだ)める。


そんなベルーグなどの近くで、ユーンたち“お世話係5人組”が珍しく〝ソワソワ〟しだす。


どうしたんだろう?


ともあれ。


自身の両手を〝パチィン!!〟と叩き、


夕餉(ゆうげ)に致しますかな。」

「腹が満たされれば、穏やかさを取り戻せるでしょうから。」


〝ふはッ!〟と笑みを浮かべる“ルシム大公”だった―。


現在のイズモ兄妹


長男ラダン:16歳


長女リーシア:14歳


次男ラルーシファ:11歳


次女エルーザ:6歳


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