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第138話 ターニングポイント②

ソファに、左から“リーシア姉上/僕/ルシム大公”の並びで座っている。


対面では、“祖母/祖父/男孫(だんそん)”といった順で腰かけていた。


女孫(じょそん)は“妹のエルーザ”と一緒に、床に伏せている“マンティコアのラバス”を撫でている。


最初のうちは恐る恐るだった“ルーシー”だけれども、すっかり慣れたみたいだ。


そんな彼女と“兄のファルン”には、両親がいない。


〝数年前の伝染病で他界した〟との事だった。


こうした二人の父にとって、妹にあたるのが、僕とエルーザの実母だ。


さて…。


僕はアイテムボックスから取り出した[王印(おういん)印璽(いんじ)/父上の遺言書]をテーブルに置いていった。


余談になるけど、僕と大公は、それぞれ、家紋が刺繍された[ベスト]を着ている。


とにもかくにも。


これまでの経緯(いきさつ)を、姉上が“ウィンスト侯爵一族”に説明してゆく。


ルーシーはラバスに夢中で聞いていないけれど……。



〝ふぅー〟と息を吐いた“ルファザ侯爵”が、


「状況は理解できました。」

「王城に残られたライザー元陛下がたの安否が気遣われますな。」


そのように述べたら、


「貴方達にとっては、特に、娘がね。」


こう姉上が返した。


見透かされたかのような意見に、


「あ、いえ…。」


祖父が口ごもる。


「いいのよ、それについて遠慮しなくたって。」

「私もエルシファン母上のことを案じているのだもの。」

「血の繋がりはないけど、そんなの関係なく本当の親子みたいに接してくれたから、大好きなのよ。」

「だからこそ、心配で仕方ないわ。」

「父上ともども。」


暫くの沈黙を経て、


「もしかしたら、もう、亡くなっているのかもしれない。」

「生きていると仮定するならば、お城の地下牢に閉じ込められているでしょうね。」

「あるいは、軍勢に王城を包囲させたであろうラダン兄上が何かしら交渉している最中かも……。」


そう締め括る姉上だった。


「結局は兵を挙げねばなりますまい。」

(かたき)討ちになるのか、救出になるのかは、定かではありませんが。」

「ただ、陛下や、王姉(おうし)殿下と王妹(おうまい)殿下におかれましては、兄君と戦う羽目(はめ)になりますが…、ご覚悟のほどは?」


このように伺ってきた侯爵に、


「とっくに決めているわ。」


姉上が即答する。


それに続き、


「あ、うん。」

「僕も、です。」


少し躊躇いながら表明した。


「では、その方向で動くとしましょう。」


祖父がまとめに入ったところで、


(しか)らば、一旦、我が館に帰らせていただく。」

「こちらも何かと準備したいので。」


このように大公が告げる。


僕が〝ん??〟と首を傾げたら、


「明朝は恒例の合同鍛錬です。」

「お集まりになる皆さんには、陛下が直接お伝えするのがよろしいでしょう。」

「これまでと、これからの、事を。」


そう大公に勧められた。


〝僕が本格的にダイワ王国に戻れば当分は会えなくなるだろうから〟との配慮に違いない。


「確かに、そうだね。」


納得する僕の隣で、


「合同、鍛錬?」


ふと姉上が不思議がるも、


「それはまた後程お話しするとして。」

「個人的にもやっておきたいことがありますので、ここらへんでお(いとま)いたしましょう。」


大公に促され、席を立つ……。



外にて。


姉上が【瞬間移動】するための魔法陣を足元に築く。


「じゃぁ、二日後の昼過ぎに、改めて。」


こう僕が喋ったところで、ウィンスト家族と、何人もの配下たちが、会釈する。


「まったねぇー♪」


妹が〝ブンブン〟と手を振るなか、【テレポーテーション】を発する姉上だった…。



[第一広間]に現れた僕らを、


「お帰りなさいませ!」


皆が迎えてくれる。


あれからずっと待てっていてくれたらしい。


その流れで、


「どうなりました??」


“ハーフエルフのリィバ”が聞いてきた。


「加勢を約束してくれたよ。」


このように僕が教えたところ、誰もが安堵する。


一段落(いちだんらく)したら、


「それで?」

「さっきのは、どういう意味??」


姉上に問われた。


「あー。」

「その件も陛下が説明なさるのが一番でしょう。」

「となれば、セゾーヌも呼ぶべきですな。」


そう考えた大公が、


「今どこにいるか知っておる者は?」


壁際に控えていた数人の給仕達に声をかける。


このなかにいた“セゾーヌの母”が、


「〝ケチャップなどの調味料を補充してもらいたい〟と頼まれていたましたので、厨房で作っている頃かと。」

「私が行って参ります。」


お辞儀して [広間]から去っていくなか、再び椅子に座りだす僕らだった―。


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