第137話 一転二転②
「あまり大勢いで押しかけても迷惑だろうから、できるだけ人数を絞りましょう。」
「ラル君は当然だとして、あとは私と…。」
「ルシム大公、付いて来てもらえるかしら?」
「血筋、家柄、実績、年齢、それらを考慮した場合、貴方しか適任者はいないわ。」
このよう語った“リーシア姉上”に、
「……、かしこまりました。」
「お引き受けいたしましょう。」
大公が会釈する。
そうしたところで、
「わたしもいくぅー!」
“妹のエルーザ”が立候補した。
「遊びじゃないんだから、だめよ。」
こう姉上に止められ、
「いやだッ!! いやだッ!!」
「わたしもいきたいーッ!」
「いきたい!! いきたい!! いきたい!! い、き、た、いぃ―ッ!!」
妹が駄々をこねまくる。
そんな二人の背後より、“メイラ・ラキリアス”が、
「恐れながら、リーシア王姉。」
「エルーザ王妹は、これ以上ご家族と離れたくないのかと。」
「今は片時も。」
このように意見した。
ちなみに、彼女は“細長眼鏡のマリー”の母親だ。
なにはともあれ。
〝あー〟と理解を示した姉上が、
「分かった。」
「連れて行ってあげる。」
「その代わり、おとなしくしているのよ?」
そう伝える。
「うん!」
妹が機嫌を直したなか、僕はある視線を感じた。
そちらに目をやると、“マンティコアのラバス”が〝じぃ――ッ〟と見てきていたのだ。
「もしかして、お前も??」
こう尋ねた僕に、ラバスが“ガフッ”と頷く。
「いや、でも、魔獣だから、さすがに…。」
僕が困惑していたところ、
「“契約の証”を装着しているので問題ありませんよ。」
“ハーフエルフのリィバ”に指摘される。
(あ、そっか。)
と納得した僕は、
「じゃぁ、一緒に。」
そのように許可してあげた……。
▽
[広間]の一ヶ所に、3人と1匹が密集している。
残るメンバーに見送られるなか、[魔法の杖]を逆さにして“クリスタル”を床に向けた姉上が、
「時空よ、我らに狭間の境界を越えさせ、彼方へと導け。」
【低級の闇属性】を詠唱してゆく。
なお、クリスタルは、赤色だ。
さておき…。
僕らの足元に【ブルーホワイトのマジックサークル】が構築された。
こうして、
「瞬間移動。」
姉上によって【テレポート】する僕たちだった。
……、[洋風の館]の正面に渡っている。
〝スタ スタ〟と歩いた姉上が、[ドアノッカー]を叩く。
数秒後、内側から扉を開けて、
「どちら様でしょうか?」
窺ってきた“50歳くらいの女性”に、
「私達はイズモ王家の血筋の者よ。」
「直ちに“ルファザ・ウィンスト侯爵”に会わせなさい。」
「とても重大な用があるの。」
そう告げられた。
これに対し、メイド服のなかでも割と立派なものを着ている相手が〝はぁ??〟と訝しがる。
おそらく“家令”であろう女性は、暫し姉上を観察した流れで、
「ご無礼いたしました!!」
深々と頭を下げ、
「ひとまず客間に御案内させていただきます!」
そのように述べた。
どうやら、姉上のリボンに刺繍されている[紋章]に気づいたらしい。
約二年前の似たような光景が思い出される僕だった…。
▽
僕とエルーザの祖父は、ダイワ王国における南方の中心地が領土となっている。
こういった“ルファザ侯爵”が、3名を伴って[客間]に訪れた。
祖父は、髪と眉に鼻髭が金色で、瞳は青く、痩せ型だ。
僕たちが[クラシックなソファ]から立ち上がる。
ラバスは床に伏せているけど。
……、まぁ、おいといて。
「私はリーシア、こっちは妹のエルーザ。」
「あちらは、タケハヤ島のルシム大公。」
「それに、ラルーシファ新国王陛下よ。」
「あと、陛下の従魔、ラバス。」
そのように姉上が紹介したところ、
「しん、こく、おう?」
侯爵が首を傾げた。
こうした祖父は、
「ルファザ殿。」
「詳しいことはこれより説明するとして…。」
「御前ですぞ。」
大公に言われ、
「失礼しました!!」
我に返ったかのように跪く。
それを、他の人々が倣う。
後で知ったのだけれども、別の3名は、僕などの祖母と従兄妹達だった―。
[ウィンスト侯爵家]
当主:ルファザ(59歳)
妻:エリーシャ(58歳)
男孫:ファルン(15歳)
女孫:ルーシー(13歳)




