第134話 交錯するもの⑮
▽
私は、マリー・ラキリアス。
歴史学者でもあったりします。
[大公の館]で生活するようになってからというもの、新たな発見が増えたのは、嬉しい限りです。
この世界に関する事はもとより、ラルーシファ王子がたが前世で暮らしていらっしゃった日本や、地球についても、いろいろと知れて、歓喜しております。
“ラドン竜王”が、“ダイワの初代ラダーム王”と友人だったのには驚かされました。
あと、“ハイドワーフのトラヴォグ公爵”の祖父にあたるかたも…。
そんな私は、竜人族や天空人族が飛んでいるのを目の当たりにすると羨ましくなります。
どのような景色が眺望できるのか、興味を惹かれるばかりです。
他には(天空人族の浮遊島に行ってみたい)とも思っています。
こうしたなか、転生者の方々が“先生”と呼ぶ“フリント様”の【スキル】に好奇心が止まりません!
いえ、まぁ、詳しくは、【お取り寄せ】された本によって作られる地球の品々に、ですが。
何かしら出来上がる度に、〝歴史が変わる瞬間に立ち会っているのだ〟と、感動しています。
なかでも[ビール]は最高です!!
そのような日々にて、“セゾーヌ嬢”が幾つかの調味料を完成させました。
おかげで、“アシャーリー嬢”の料理が増え続けています。
私が虜になったのは、やはり、卵系です。
“ひき肉”に“お野菜”が入った[オムレツ]と[ケチャップ]の相性は抜群で、幸せに包まれます。
これだけでなく、[豚肉の卵ケチャップ炒め]にも魅了されてしまいました。
現在は、例の森林で獲れた“バローボア”の肉が余っているので、豚の代わりに使っているそうですが、とても美味しいです。
それと、私は[ケチャップ]も好物になっています。
日本では、こういうのを、〝どハマりする〟と表現するのだとか。
ま、なんにせよ。
[卵]と[ケチャップ]の組み合わせに、踊りたくなる私です♪
そう言えば、[ダイワ王国]と[タケハヤ島]には舞踏会がありません。
古記録によれば、初代ラダーム王が止めさせたみたいです。
〝そんなことに費やす金と労力があらば民のために使え〟〝踊るは人生だけで充分よ〟との理由で……。
まもなく春になろうとしています。
二人の王女が来訪しました。
どちらも“お世話係”を連れて。
更に“リーシア王女の元教育係達”が見受けられました。
勿論、この顔ぶれには、私の母親もいます。
只事ではないと察して、話しを聞くため母に近づこうとした私でしたが、首を軽く横に振られてしまったのです。
数分後、リーシア王女が、ラルーシファ王子に告げました。
ラダン王子の造反を―。
▽
私の名前は、ユーン・バーンネル。
“黒猫の獣人”です。
容姿の殆どは人間と同じでありますが…。
[大公の館]に移ってからというもの、何かしら起きています。
たまには忙しくなったりもしますが、程よい刺激があるため、個人的には悪くありません。
ラルーシファ様は、前世で関わりのあった方々と再会を果たされる度に喜んでおられます。
それにしても……、竜人族は強すぎです。
神様がたは別として、勝てる存在などいるのでしょうか?
かつて耳にした情報によれば〝互角に渡り合えるのは鬼人族だけ〟とのことでしたが…。
ドワーフ族の器用さは賞賛に値します。
特に、フリント様を中心に開発された[ビール]は素晴らしすぎです!
あと、セゾーヌ様による調味料の数々や、これらを用いたアシャーリー様の料理も!!
ちなみに、最近では[ステーキ]を好むようになりました。
いえ、決して[スープ類]を捨てたわけではございません!
[ステーキ用のソース]が“お肉”はもとより“付け合わせのお野菜”に相まって、舌が満たされます♬
……、さておき。
鍛錬と実戦を積んで御立派に成長なされていきつつあるラルーシファ様に、私たち“お世話係”の感激もひとしおです。
また、いくらか背丈がお伸びになられたのもあって、少なからず凛々しくなっておられます。
とは言え、基本的には、まだまだ可愛らしいです。
ご無礼かとは存じますが。
こうした時が流れゆくなかで、お世話係達のなかでは〝ラルーシファ様とアンヌ様は両想いなのでは??〟といった推測がなされています。
それと、“ベルーグ殿”に“マリー殿”も。
教育係のお二人は、こちらで共に生活するようになってから、徐々に距離が縮まっているみたいです。
いずれにしろ。
私どもは、全て暖かく見守ることにしております。
噂を広めたりするのは野暮ですから…。
“リーシア様”と“エルーザ様”がたが、お越しになられました。
ラルーシファ様が避難なされている場所だというのは内密にされている筈なのにです。
きっと緊急事態に違いありません。
そうしたところで、リーシア様が語られました。
ラダン様の件について―。




