第133話 交錯するもの⑭
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ボクの名は、リィバ・シルブ。
ハーフエルフだ。
(ラルーシファ王子の教育係になれて良かった)と、つくづく思う。
まず、“竜人族”と親しくなれた。
それによって、40年以上前にボクが遠目で見た竜が、“現在のドゥユール国王”だと知れたのは、嬉しいところだ。
あと、“ヴァイア様”に竜の姿を披露していただけたのもまた、感動ものだ♪
こうした月日が過ぎていくなか、“天空人族”とも繋がりができた。
ま、それ以前に、“フリント様”がたハイドワーフ家族とも出会ったけど。
ドワーフは何人か交流を持ったことがあるので、珍しくはない。
とは言え、ハイドワーフの鍛冶や建築に裁縫と装飾などは、特に素晴らしい限りだ。
フリント様によって、〝地球では当たり前のように市場に出回っている〟という[ビール]が完成したのも喜ばしい。
一方で、天空人族は、普段、翼を出さないので、どこかですれ違っても分からなかった。
このため、“アンヌ嬢”などの飛行を目撃できて、興奮した次第だ。
もう、だいぶ、慣れてしまったけれど…。
そんなボクは、実戦から戻ってきては魔物や魔獣を捌いている。
基本的には楽しいものの、量が多い。
他者と分けるようになったのは非常に助かる。
けど、せめて1人でもいいので補佐がほしいところだ。
ただ、まぁ、“アシャーリー嬢”が[ポテトチップス]を用意してくれるので、たいした不満はない。
こうした日々のなか、とある“マンティコア”が王子の従魔になった。
“ラバス”は割と賢い。
会話できないのが残念だけれども……。
幾つもの調味料が“セゾーヌ嬢”によって作られた。
それに伴い、アシャーリー嬢の料理の幅が広がっている。
クリームやビーフの[シチュー]であれ、[コロッケ]に、芋が入っているというのは、ボクを〝ワクワク〟させてくれる。
これらだけでなく、[マヨネーズ]が出来あがった事で爆誕した[ポテトサラダ]には熱狂させられた!!
食パンを使っての[ポテサラサンド]も美味しい☆ミ
願わくば大きな物を作ってもらい枕にしたいぐらいだ!
あぁ~、想像しただけで、なんとも至福な…。
いや、ボクは断じて変態などではない。
……、はずだ。
うーん。
最近、そこら辺に関して自信がなくなってきている。
さておき…。
二人の王女たちが[本館]に訪れた。
ここにラルーシファ王子が居る件は極秘なのに、だ。
もしや、[ダイワ城]あたりで何か起きたのかも?
そうしたボクの悪い予感が的中する。
“ラダン第一王子”が乱逆したらしい。
かつてボクが教育係を務めたことのある“ライザー王”は、無事だろうか??
安否が気になってならない―。
▽
俺は、ベルーグ・ゾアノ。
騎士だ。
[大公の館]で暮らすようになってからというもの、驚きの連続となっている。
“竜人/ハイドワーフ/天空人”に初めて会った。
ちなみに、“通常のドワーフ”であれば知っている。
ま、おいといて……。
噂には聞いていたが、竜人族は物凄く強い。
絶対に勝てないと思わされる。
敵じゃなくて良かった。
本当に。
あと、“ヴァイア殿下”の【気焔】というスキルが羨ましい…。
“フリント殿”の発案で酒造された[ビール]は最高だ!!
[エール]とは比べものにならないぐらい泡の刺激が喉に〝ガツン!〟とくる。
地球で言うところの〝炭酸にキレがある〟のだそうだ。
これだけでなく、味わいも深い。
現在は、あまり多くは生産できないみたいで、1日で摂取できる量が限られている。
残念ながら。
他にも、葡萄を用いて[ワイン]なるものを試しているらしいが、〝最低でも1年は寝かせたがいい〟とのことで、まだ飲めていない……。
セゾーヌ嬢の【スキル】によって、いろんな調味料が完成した。
それらのおかげで、アシャーリー嬢の料理が増えている。
俺は、もともと[鶏のカラアゲ]が好物だったのだが…、近頃は[トンカツ]や[メンチカツ]にも心躍るようになった。
[ソース]との相性が抜群というのもあって。
また、この品々は、[ビール]によく合う!!
そうしたところで、ふと気づいた。
俺は[肉の揚げ物]に目がないのだと。
これはラバスも同じらしく、いつも夢中でガッツいている。
さすが、分かる奴だ。
なお、ラルーシファ殿下は、そういったものを与えていいのか心配なされておられたが、“リィバ殿”によれば「動物ではなく魔獣なので大丈夫でしょう」との事だった。
いずれにせよ、ラバスが平然としているので、安堵なされたみたいだ……。
“リーシア殿下”と“エルーザ殿下”が、お供を連れて、赴かれている。
全員、深刻な表情となっていた。
これによって、場が緊張に包まれる。
“レオディン殿”の話しでいくらか和んできたところへ、ラルーシファ殿下がお越しになられた。
そうして、ラダン殿下が、父君であらせられる陛下に、反旗を翻した旨が告げられる―。




