第132話 交錯するもの⑬
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我は、砂というものが多い土地で生まれ育った。
所々、草に木とやらが生えている。
こうした環境で、家族と共に、いろんな生物と戦ってきた。
そんな或る日、割と成長した我は、旅立つ事になったのである。
番となってくれる者を見付けるために。
ま、夫婦で戻ってくるもよし、何処かで暮らしてゆくもよし、らしい。
よって、我は、なんとなく飛行する……。
少し進んだら、水だらけの所に出た。
後で知ったのだが、海というものらしい。
ここを更に飛んだところ、山が見えてきた。
山は、我が故郷にも在ったので、分かる。
その真上を通り過ぎようとしたら、大きな鳥どもが向かってきた。
どうやら連中の縄張りだったらしい。
にしても、体の半分が我によく似ている。
さておき…。
空中で戦闘となり、二頭を倒したが、まだ数多くいた。
さすがに勝てなさそうなので、とりあえず逃げる。
しかし、鳥どもの十体ほどに追われてしまう。
何日か不眠不休となった。
まだ付いて来る。
実に、しつこい!!
覚悟を決めた我は、宙で止まり、改めて戦うことにした。
結果。
一頭が両翼を動かして放った【風の刃】で、腰を負傷し、地面に墜ちる。
この場にいた人間が、
「“マンティコア”か。」
我をそう呼んだ。
片目が見えない人間によれば、鳥どもは“グリフォン”というらしい。
こうしたなか、別の“小さき者”が【雷】を発した。
なかなかの威力だ。
主と認めた“ラルーシファ”とかいう人間に、我は名づけてもらった。
“ラバス”と……。
主がたと、例の山に赴き、グリフォンどもを一掃した。
おかげで、気分が〝スカッ〟と晴れたのである!
それにしても…、“アシャーリー”が考えたらしい料理とやらは、どれもこれも美味い!!
もう生肉を食べたいとは思えん。
ちなみに、野菜は、苦手である……。
神とかいう者達が訪れた。
どやつも強そうだ。
このように感じていたところ、他の神らも現れた。
途端に我は恐怖を覚える。
“カティーア”と呼ばれた者に。
あれは、やばい!
闘おうものなら瞬殺されかねん!!
そう我が本能が告げておる。
何人かも我と同じなのか、震えていた…。
主の姉妹がやって来たそうだ。
部屋を移動したら、“リーシア”とやらが喋りだした。
かなり深刻そうに。
この側で、“エルーザ”とかいう者に撫でられ続ける我だった―。
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儂は、レオディン・セル―ロ。
魔術師である。
[タケハヤ島]に移ってからというもの、全くもって飽きない。
本来であればラルーシファ殿下は15歳になってから実戦を行なう決まりになっておったが、それが早まった。
このため、儂もお供できるようになったのじゃ!
まさに誉である。
それだけでなく、“竜人族/ドワーフ族/天空人族”とも交流を持てるようになった。
しかも、殿下と同じ転生者の方々は、当然ながら【神法】を備えておられる。
儂は感動と興奮が冷めやらぬ!!
(最近、若返ってきたのではないか?)と思うぐらいだ。
……、分かっておる。
気のせいだという事は。
何せ、冬場は特に、全身の節々が痛むでの。
ま、おいといて…。
ヴァイア殿下の兄君がたも父君も、相当な強さであらせられる。
この世界で一番の長寿を誇る竜人だからじゃろう。
鍛錬であれ、実戦であれ、いくらでも積み放題じゃからな。
〝そもそもの身体能力が高い〟というのもあるだろう。
“ジェネラル”や“ロード”を一撃とは、ただただ驚かされるばかりだ。
殿下がた“お子たち”には、毎回〝あれは普通ではない〟といった旨を申し上げておる。
〝簡単に大将級の魔物や魔獣に勝てる〟と勘違いなされてしまっては、あまりにも危険すぎるため……。
そうした日々が過ぎるなか、殿下がたが“先生”と呼んでおられる“フリント様”によって、[ビール]が作られた。
確かに、[エール]とは比べものにならぬほど極上である!
あと、“セゾーヌ嬢”の【スキル】で幾つかの調味料が完成した。
これに伴い、“アシャーリー嬢”の献立が増えてゆく。
儂はもともと[白身魚の塩カラアゲ]が好物だったのじゃが…、近頃、変わってきた。
今は、もっぱら、[エビフライ]が楽しみになっておる!!
外側の〝カリカリ〟と、内側の〝プリプリ感〟に、[タルタルソース]が相まったら、それはもう、格別なのじゃぁ――――ッ!!!!
…………、ハッ!
いかん。
久方ぶりに我を忘れてしもうた。
なにはともあれ。
二人の王女殿下がお越しなられた。
各自の“お世話係”などを連れて。
ご来訪なされた理由をお尋ねするも、ラルーシファ殿下に直接お伝えすべきだとかで、“リーシア殿下”が待つよう仰せになられる。
そこから、逆に、ここでの生活を御質問なされた。
よって、儂が代表して語らせていただく。
できうる限り簡略的に。
勿論、“ラバス”についてもお知らせしておいた。
後で騒ぎにならぬよう。
こうしていたところ、ラルーシファ殿下が[第一広間]に足を運んでこられた。
すると、
「ラダン兄上が謀反を起こしたわ。」
リーシア殿下が告げられる。
は??
いささか耳が遠くなっておる儂の聞き間違いじゃなく?
……、そうであってほしいと願うばかりじゃ―。




