第130話 森林での攻防戦④
魔獣に怖気づいていた僕らは、〝ハッ!〟として、それぞれに行動を開始する。
まず、ヴァイアと先生が、各自の正面で直径50㎝のサークルを構築した。
そして、
「ポイズン!!」
ほぼ同時に、闇属性の【低級神法】を発する。
先頭にいた数体のモンスターが【毒の霧】を浴びた事で、足を止めて苦しみだす。
これによって、後列の魔獣らが詰まった。
そこへ、セゾーヌとアンヌが、
「ホーリー・ボール!」
光属性の【低級神法】を放つ。
アシャーリーの射った矢が、1頭の“バローボア”の右目に刺さるなか、僕と“マンティコアのラバス”はモンスター集団に突撃した。
これに“ヴァイア/先生/セゾーヌ/アンヌ”が続く。
そうしたなか、
「森羅万象、神聖なる霊脈よ、此処に集え。」
「暖かな輝きとなりて、崩れゆく者らを、救い給うべし。」
“ハーフエルフのリィバ”が、地面に直径4Mの魔法陣を展開し、
「グレード・ヒール。」
転倒していた“大人メンバー”を全快させる。
これは、【光属性の極級】だ。
しかし、数名が範囲外だったので、“アンヌの母親ザベルさん”が新たに扱う。
一方で、“ウォリアーベアロード”の死を確認した“ドォーゴ殿下”が、僕達に合流してくれた。
更に、リィバやザベルさんによって【治癒】が施された顔ぶれも、参戦しだす。
“魔術師のレオディン”と“魔女さん”は何かしらの【攻撃系】を詠唱している……。
▽
“モンスターの群れ”に勝利し、僕ら子供たちが大きく安堵の息を吐く。
既に小雨は降りやんでいて、雲の切れ間から陽光が差し込んでいる。
そうした風景のなか、
「先程は失礼しました。」
「声を荒げてしまって。」
“ハーフエルフのリィバ”が謝罪に来た。
「いえいえ、僕らを思ってのことだと理解していますので、どうか気になさらないでください。」
「寧ろありがとうございます、リィバさん。」
このように先生が伝え、僕なども「ありがとう」や「ありがとうございました」とお礼する。
嬉しそうに〝ニコニコ〟しだしたリィバは、他の大人達と魔獣を回収しだす。
ラバスが欠伸したところで、
「そう言えば、熊や猪って、食べられますよね。」
ふと喋った先生が、
「あー、でも、専用の鍋が無いと難しいのか…。」
「いや、それは和食のイメージだから、別の調理法であれば問題ない?」
独り〝ブツブツ〟と呟く。
それが聞こえたらしく、
「確か、どちらもステーキやハンバーグにできる筈ですよ。」
「ただし、ソースがあったがいいでしょうね。」
「それを作るためには、お酢が不可欠です。」
「あと数日もすれば、セゾーヌさんのスキルで試している物が熟成されるので、やってみましょう。」
「その際には“地球の本”を取り寄せていただきたいです。」
「熊や猪の下処理を知りたいので。」
このように述べるアシャーリーだった……。
▽
僕たちは[館の庭]に戻っている。
今回も、素材は、手分けして捌いたりするらしい。
ただ、“バローボア”と“ウォリアーベア”の肉は、後々、ルシム大公が買い取るそうだ。
アシャーリーに料理してもらうために。
少し余談になるけど、庭の西側に[ラバスのトイレ]が完成している。
それは[渡り廊下]で館と繋げてあった。
ちなみに、この世界のトイレは、個室のみだ。
そんな各部屋の壁上に[貯水タンク]が設置されている。
タンクに付属している[太めのロープ]を引っ張ると、水が流れる仕組みだ。
ラバスには口で加えて引くようにさせている。
話しを戻そう…。
全員が庭で解散した。
大公は、ロードの討伐が完了したのと、森林の封鎖を解除していい旨を、各担当者に告げるため、魔女さんによって【テレポート】する。
なお、ヴァイアの【光と闇の属性】が進化していた。
彼以外は【神法】も[スキル]も変わりない。
残念ながら―。
現時点での[ヴァイア=カナム]
【神法】
・攻撃/光/闇の全属性を使用可能
※どれもが中級
【スキル】
・亜空間収納
※小規模
【特殊スキル】
・気焔
※初期段階
一日一回のみ全身から放った気で敵を15秒間だけ失神させられる
その後30日は使えない
【戦闘スキル】
・槍術
※段階は[弐]
・狙撃術/剣術/打撃術/武術
※どれもが[壱]
前世での名前は[城宮宗次]




