第128話 森林での攻防戦②
ジャッカロープ達による【雷】は、後方の数名には当たっていない。
そこで、アシャーリーが、まず、セゾーヌに【ディスオーダー・リカバリー】を施した。
ほんの少し遅れて、ヴァイアが先生に用いる。
セゾーヌも先生も【光属性】を備えているので、優先したようだ。
“ハーフエルフのリィバ”が、
「神域より叡智の結晶を喚び起こさん。」
「奇跡の波動よ、苦痛を消し去れ。」
「ディスオーダー・リカバリー!!」
【魔法】を扱うなか、“アシャーリー/ヴァイア/先生/セゾーヌ/アンヌ”が【神法の異常回復】を発した。
“ドォーゴ王子殿下”に“アンヌの母親ザベルさん”と“マンティコアのラバス”は下降しながらモンスターを攻撃する。
ここへ、順次、自由になったヒトたちが加わっていく…。
▽
倒し終えて回収した全てのジャッカロープを、預かったリィバが【アイテムボックス】に収納した。
そこから、僕達は、再び歩きだす。
ちなみにだけど、ヴァイアの父君であるドォーゴ殿下は、[騎士みたいな甲冑]と[ハルバード] を装備している。
銀色である防具と武器は[ミスリル製]との事だ。
あと、肩当てに[白いマント]が付属していた。
……、およそ10分が過ぎたところ、
「この先、気配がします。」
「どうやら、争っているみたいです。」
“獣人のユーン”が告げる。
更に暫く進むと、いくらか開けた場所に出た。
池が存在しており、この側で魔物たちがバトルを繰り広げている。
片や、全長2Mあたりの[亀]で、甲羅が幾つにも尖っていた。
もう一方は、約1.5Mの[鼬]だ。
なお、亀は3頭で、イタチは6匹、見受けられた。
ただし、どちらも、別の数体が横たわって動かないでいる。
割と流血していることから、既に亡くなっているものと推測できた。
このような状況にて、
「ふむ。」
「“ヴァイオレントタートル”と“フェロウシャスウィーゼル”か。」
“ルシム大公”が呟く。
「ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、特に亀どもの甲羅は何かしらの素材になるので、爆発系は控えていただきたい。」
「粉々になると、使い物にならなくなりますからな。」
そう“トラヴォグ公爵”が伝えてきたところで、モンスター達が揃ってこちらに視線を向けてくる。
完全に気づかれてしまったみたいだ。
これによって、“隻眼のベルーグ”が[ロングソード]を鞘から抜きつつ、
「そんじゃ、戦いますかね。」
そのように皆を促す。
僕たちが構えるよりも先に、こちらへと“|フェロウシャスウィーゼル《狂暴な鼬》集団”が駆けだした。
それなりに速い。
すかさず、ヴァイアが、
「フラッシュ!」
目を眩ませる。
おかげで、イタチらが足を止めた。
けれども、魔獣は、耳と鼻が利くため、すぐに動きだす。
とは言え、数秒だけでも余裕が生じたので、誰もが冷静に対応していく。
なかでもラバスが、前足で薙ぎ払ったり、首根っこを噛んだりと、活躍している。
こうしたところに、“|ヴァイオレントタートル《暴力的な亀》達”が近づいて来た。
普通の亀よりはスピードがある。
んー? どれくらいだろう??
人間の赤ちゃんの“ほふく前進”あたりの速度かな?
まぁ、それはおいといて…。
「大地に刻まれし根源よ、その権能を我に授くべし。」
「深淵より出でて、全てを貫け。」
「深き底から湧き上がれ。」
地面に直径4Mの【マジックサークル】を構築した“魔術師のレオディン”が、
「バンプ・アース!!」
土を1M~4Mといった高さで何本にも隆起させた。
ヴァイオレントタートルのうち2頭は、負傷するのと共に弾き飛ばされる。
範囲外だった1体は驚いてストップし、“頭/尻尾/四本の足”を甲羅の内に引っ込めた。
その光景に、
「“鉄壁の防御”といったところですね。」
アンヌが感想を述べる。
「ま、対策はあるので、問題ありませんよ。」
〝ニッコリ〟したリィバが、
「ラバス。」
「頭が入っている穴に、“火の玉”を1発お見舞いしてください。」
こう指示した。
軽く〝ガフッ〟と応じたラバスは、例の亀へと歩く。
「あー、成程。」
リィバの考えを察したらしいベルーグが、
「じゃぁ、俺も。」
ラバスに続く。
イタチに関しては、ユーンなどの獣人族が協力した事もあり、とっくに殲滅している。
レオディンの【魔法】がヒットした2体は仰向けで〝ジタバタ〟していた。
その魔物たちには、大公とトラヴォグ公が向かう―。




