第126話 逐日③
威圧気味で、
「まったく。」
「謹慎が解けて、ラルーシファ達に会いに行ったきり、なかなか戻って来ないと思ったら…。」
「いい身分だな。」
「揃いも揃って。」
そう喋られた“武神カティーア様”に、
「あ、いえ、これは、その……。」
“癒しの女神パナーア様”が、しどろもどろになった。
他の神様がたは、おもいっきり目を反らしている。
どうやらカティーア様を恐れているみたいだ。
一方で、神気を感じられるヒトたちが震えていた。
ただし、“ラドン竜王陛下”と“ドォーゴ王子殿下”は平然としている。
いや…、よく見ると、両名共に冷や汗をかいているようだ。
床に座っていた“マンティコアのラバス”は、いつでも逃げられる体勢になっていた。
場の空気を変えるべく、
「カティーア様。」
「そちらは?」
僕が質問してみたら、
「ん??」
「あー。」
「私の孫の一柱で、“カッティ”だ。」
「母親が“闇の神の一族”でな、この子は、その血を濃く引いている。」
「天界から館の様子を私と一緒に覗いたところ、美味そうな品々を飲食しているパナーア達を羨ましがったので、連れてきた。」
「容姿こそ幼いが、二百年近くは生きておるぞ。」
このように説明なされた。
そうした流れで、
「ルシムよ。」
「カッティにも席を設けてもらえないか?」
“赤髪の武神様”が窺う。
「はッ。」
「すぐに二つ分ご用意いたします。」
こう“ルシム大公”が述べたら、
「いや、私は帰る。」
「肝を冷やしている者が多々おるみたいだからな。」
優しく微笑むカティーア様だった……。
▽
カッティ様は、パナーア様の隣の椅子に腰かけている。
基本的に無表情かつ無口だ。
そのため、感情が読み取りづらい。
けれども、“食べ物”や“ジュース”を口に運んでは、〝パァ―❀〟と嬉しそうな顔つきになられる。
こうしたカッティ様に、誰もが〝ほんわか〟していた…。
▽
大公が、急遽、“館の料理人たち”に追加を作らせている。
カティーア様や最高神様などに献上するそうだ。
“トラヴォグ公爵”は[ビール]を進呈していた。
それらを、パナーア様が代表して【亜空間】に収められる……。
数十秒後、別れの挨拶を交わす。
こうしたところで、
「ありがと。」
「どれも美味しかった。」
カッティ様が幸せそうになされる。
全員が〝ニコニコ〟するなか、
「それでは、いずれまた、機会がございましたら。」
〝パッ!〟と消えるパナーア様がただった…。
▽
5日が経っている。
僕達は、中央都市の東に位置する[森林]に訪れていた。
そう。
僕とアシャーリーが初めての実戦に臨んだ場所だ。
あの時とは違って、“ヴァイア/ドォーゴ王子殿下/先生/トラヴォグ公/セゾーヌ/アンヌ/ザベルさん/ラバス”も参加している。
今回、この森林に再び赴いたのには、理由があった。
なんでも“ロード級の魔物”とやらが現れたらしい。
いろんな冒険者が挑んだものの、討伐できないでいるそうだ。
それによって〝森の食材を採れなくなっている〟のだとか。
また〝いつロードが配下たちを連れて森林から出て、町や村を襲うか分からない〟とも。
こうしたロードは、ギルドマスターによれば〝ゴールドクラス、もしくはミスリルクラス以上が、何人かいないと、倒すのは難しいでしょう〟との事らしい。
ちなみに、強いほうから[オリハルコン > ミスリル > ゴールド > シルバー > ブロンズ > スティール > アイアン > ストーン > ウッド > ペーパー]と万国共通で定められているのだとか。
それを基に推測するならば、[森林のロード]はかなり危険な存在のようだ。
このため、大公が周辺を封鎖させていた。
そうした経緯で、小雨の降るなか、僕達は森へと入ってゆく―。
[カッティ神]について
・“長い黒髪”や“白肌”に“金色の瞳”といった特徴を持つ
・続柄は武神カティーアの孫
・癒しの女神パナーアにとっては従姪(じゅうてつ/いとこめい)にあたる
・カッティ自身は“闇を司る神の一柱”とのこと
・容姿は10歳ぐらいの少女だが実際のところ約200年は生きている
※カッティ神も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。




