第124話 山岳での攻防戦④
ヴァイアの長兄である“ラゴーンさん”が、左足を〝ダンッ!〟と踏み込んで、[中剣]を〝ブンッ!!〟と振るう。
まるでバッターみたいに。
それによって生じた風圧で、グリフォン達の【ウィンド・エッジ】が半数ぐらい掻き消された。
残りは、後方の岩や砂利道に直撃する。
土煙が起きるなか、しゃがんでいた誰もが立ち上がっていく。
すると、突然、“マンティコアのラバス”が、“グリフォン集団”へと勢いよく飛びだした。
「あ!!」
僕が慌てたところで、
「ジェネラルは任せろ!」
ラゴーンさんがラバスを追う。
更には、他の“竜人族”と“天空人族”が続く。
この流れで、
「アンヌ!!」
「特殊スキルを!」
母親にあたる“ザベルさん”が指示する。
「守護。」
アンヌによって、本人を含めた7名が、【ホワイトゴールドの光り】に包まれた。
それは、〝一度に10人の防御力を15秒間だけ二倍にできる〟というものだ。
また、〝使えるのは一日一回のみ〟で〝その後一ヶ月は発動できない〟といった縛りがあるらしい。
現在は[初期段階]みたいなので、これから先、進化するのだろう。
おそらく…。
対して、ジェネラルが短く鳴いて合図を送った事で、およそ20体のグリフォンが突進する。
ただ、そのうちの12匹は、地上の僕たちに向かって来た。
しかも、[大公家の館]で襲ってきたグループより速い。
例えるなら、あっちが二軍で、こっちは一軍なのかも?
サイズ感が違うし。
とかく。
大人のなかでも前線から中盤にかけてのメンバーが、胸元に嘴を当てられ、弾かれる。
後ろの方にいた大人や、背が低い子供と“トラヴォグ公爵”の、計7人は範囲外だった。
“モンスターの群れ”が上昇してゆくのと同時に、地面に転がったヒト達が血を吐く。
一方、宙では、ラゴーンさんと“竜人の双子さん”だけが、躱せている。
他は完全には回避しきれず、グリフォンの翼などがぶつかり、落下するも、途中で止まって、体勢を整え直す。
そのような状況で、ラゴーンさんがジェネラルに向かう。
これに、グリフォン将軍が応じた。
かなりのスピードが出ている双方が、正面から衝突しようとする。
そうしたなか、ラゴーンさんが右手の剣を突きだす。
これによってジェネラルが真っ二つになっていく。
ラゴーンさんの両脇を過ぎて次第に下降する“ジェネラルの左右”が、[雑木林]へと墜ちていった。
その光景に、魔物らが驚き惑う。
竜人双子の兄にあたる“ドッシュさん”が、
「皆さん、今です!!」
こう告げたことで、宙にいるヒトたちがモンスターを攻撃しだす。
我に返ったグリフォンらが逃げだそうとするところへ、急ぎ直径1Mの【神法陣】を築いた僕は、
「アイシー・ランス!」
“直径5㎝×長さ2M”といった【氷の槍】を50コ発射する。
それらが12頭の魔物にヒットした。
なお、神法における【アイシー・ランス】は、1本につき、刺さった箇所を軸とした直径20㎝の領域が〝ピキピキピキピキィ〟と凍り付いて、〝パリンッ!!〟と割れる仕組みだ。
こうして負傷したグリフォン達はバランスを失い、落ちてくる。
その最中に、
「森羅万象、神聖なる霊脈よ、此処に集え。」
「暖かな輝きとなりて、崩れゆく者らを、救い給うべし。」
地に直径4Mの【魔法陣】を展開した“ハーフエルフのリィバ”が、
「グレード・ヒール。」
こう唱えた。
【マジックサークル】から放たれた[虹色の光]によって、味方が全快する。
と言っても、〝空にいるヒトたち以外は〟だけど。
そんなこんなで、モンスターを掃討していく僕らだった―。




