第123話 山岳での攻防戦③
【フラッシュ】の影響で転んでいた“ランペイジゴートたち”が起き上がる。
まだ目を瞑っているみたいだけど、構わず戦闘に参加しだす。
これで、動けるモンスターは、およそ60頭になった。
なお、最初に“魔術師のレオディン”による【ライトニング・スパーク】がヒットした約30数の魔物は〝ピクリ〟ともしない。
既に亡くなっているようだ。
あれは【極級】なので、かなりの威力があったのだろう。
そうしたなか、僕などの子供達は、ランペイジゴートに翻弄されている。
よく跳ぶので、攻撃が当たりづらいため。
しかも、高くジャンプした後に、全体重を乗せて落下しながら踏み付けようとしてくる。
これは躱せているものの、モンスターたちは時に前方へと跳んで頭突きしてきた。
なかなかのスピードに、地上の“僕/先生/セゾーヌ”は、回避しきれず、まともにくらい、弾かれるのと共に吐血する。
[弓矢]を用いるアシャーリーは後方にいるため、難を逃れていた。
そうした彼女が、僕に【ヒール】を施してくれる。
先生とセゾーヌは自分自身に使っていた。
どれも低級ではあるけれど、【神法】なので、詠唱がないだけ速く発動できる。
補足として、まだ視力が回復しきれていない魔物達は、いささか的を外していた。
あと、宙に浮いている仲間が、上にジャンプしたランペイジゴートを、[武器]で狙い撃ちにしている。
“マンティコアのラバス”は[素手]や【ファイア・ボール】を扱っていた。
これらによって負傷し、墜ちたモンスターらに、レオディンと“魔女さん”が【パラライズ】を使う。
まともに【赤い霧】を浴びた魔物たちの四割ほどが動けなくなったことで、僕ら子供はバトルが若干ラクになった……。
▽
僕達は、“斜面/砂利/岩”といった悪条件での戦いに、勝利している。
空にいたメンバーが着地した流れで、それぞれに体力や魔力を回復させる[ポーション]を摂取していく。
【神法】のメンバーには[魔力用の物]が利かないため、これは飲まずにいた。
ちなみに、僕らは考えながら【神法】を扱っているので、今のところ誰も[神力切れ]にはなっていない。
さておき。
大人が協力してランペイジゴートを[アイテムボックス]に収納してゆく…。
▽
作業が終わり、
「よろしければ、先に進みましょうかな?」
“ルシム大公”が皆を窺う。
次の瞬間、何かに〝ピクッ〟と反応したラバスが、宙に向け〝ガオォ――ッ!!〟と吼えた。
続いて、
「敵です!」
“獣人のユーン”が告げる。
僕たちが、一斉に上空へと視線を送ってみたら、“グリフォンの群れ”が飛来している最中だった。
ざっと20数以上を確認できる。
ラバスが睨み付けながら〝グオォォォッ〟と威嚇しているので、因縁の相手達に違いなさそうだ。
いずれにしろ。
ある程度の距離でホバリングしだす“モンスター集団”を見つつ、
「殆どが4Mか。」
「一体だけ6Mといった感じだな。」
そう“隻眼のベルーグ”が呟く。
「ああ。」
「おそらく、ジェネラルだろう。」
「ロードであれば8Mを超えるからな。」
ヴァイアの長兄にあたる“ラゴーンさん”が述べたタイミングで、ジェネラルを除いた魔物たちが両翼を後ろに反らす。
「全員、伏せろ!!」
ラゴーンさんが急ぎ指示した事で、僕らは慌てたように姿勢を低くする。
ほぼ同時に、グリフォン達が、おもいっきり翼を前方に押し出した。
これによって、“最大幅20㎝×長さ4Mの三日月状”といった【ウィンド・エッジ】が放たれる―。




