第122話 山岳での攻防戦②
六合目で“ラタトクスの群れ”を倒した僕達は、更に進んで行く。
暫くして[雑木林]を抜けたところ、景色が変わった。
七合目から頂上に掛けては[岩山]になっている。
こうしたなか、
「王子、アンヌ嬢、ラバス。」
「これより先は、火炎系を使って構いませんよ。」
「あと、雷も。」
「ただし、爆発はやめておいてください。」
「“山崩れ”が起きかねませんので。」
“ハーフエルフのリィバ”に声をかけられた。
「うん、了解。」
「分かりました。」
「ガフッ。」
僕とアンヌにラバスが返事した流れで、一同は改めて登りだす。
「それにしても、僕の想像よりは魔物が少なかったんだけど、たいして棲息していないのかな?」
「この山には。」
ふと疑問を呈してみたら、
「いえ、雑木林の中に沢山いたと思いますよ。」
「単に、こちらが縄張りに侵入していなかったり、相手が空腹ではなかったという理由で、襲ってこなかったのでしょう。」
「ボクらが遭遇したのは、餌を求めて徘徊していた魔物たちに違いありませんね。」
そのように説明してくれるリィバだった…。
▽
八合目にて、
「ガオッ!!」
「魔物です!」
“マンティコアのラバス”と“獣人のユーン”が、ほぼ同時に知らせてくれる。
こちらへと跳ねながら下山してきているのは“ヤギの集団”だった。
数は、50頭あたりだろう。
“黒色”と“茶色”の種類が多めだけれど、“白色”もチラホラと見受けられる。
……、それにしても、大きい。
通常のヤギの三倍はあるかもしれない。
“細長眼鏡のマリー”が、
「“ランペイジゴート”ですね。」
こう述べたところで、
「真の力を解き放ち、誰憚らず舞い狂え。」
「神の鉄槌かの如く、天に響け、地に轟け。」
「万象を、貫き、砕き、焦がせ。」
宙に直径4Mの【マジックサークル】を構築して、
「全員、耳を塞いでくだされ!!」
そのように促した“魔術師のレオディン”が、
「ライトニング・スパーク!」
200発の【雷】を落とす。
ヒットした30数は倒れたものの、範囲外だった20頭は無傷だ。
凄まじかったのだろう音にビックリしたのか、立ち止まって呆然としていたモンスター達が、一斉に興奮して鳴きだした。
これによって、奥のほうから新たに40数ぐらいの“ランペイジゴート”が向かって来る。
「増えるのかよ、おい。」
“片目のベルーグ”が少なからず嫌そうにしたところで、
「あれしき、問題ない。」
それなりの後ろで声がした。
僕たちは揃って振り返る。
すると、二合目で別れた“味方”を確認できた。
ちなみに、さっき喋ったのは、ヴァイアの長兄にあたる“ラゴーンさん”だったらしい。
いずれにせよ。
戦闘態勢に移る僕らだった…。
▽
眼球が赤いランペイジゴート達と睨み合っていくなか、
「翼を有している者は、上昇を。」
ラゴーンさんの指示で“竜人族/天空人族/ラバス”が、空中に浮いてゆく。
このタイミングで、魔物らが突撃しだす。
なお、ランペイジゴートのジャンプ力は3M以上ありそうだ。
それなりに距離を詰められたところで、僕を除いた[光属性の神法]を備えているヒトたちが、宙と地で【フラッシュ】を放つ。
これもまたラゴーンさんによる提案だった。
結果、視力を奪われた七割のモンスターが[岩場]や[砂利道]で転ぶ。
ただ、“獣系のモンスター”は、鼻や耳が利くので、一時しのぎでしかない。
そうしたなか、僕などの“接近型グループ”が、武器を振るったり、パンチやキックを繰り出す。
これを、“後方のメンバー”が[弓]や[クロスボウ]で支援する。
レオディンや“魔女さん”は詠唱を始めていた―。




