第121話 各個の主観⑨
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私は、“アシャーリー=イズモ”です。
前世での名前は“嶋川由美”でした。
こちらの世界では、日本で言うところの“洋食”を作っていたりします。
どれも大好評のため、喜ばしいです。
あと、それに関する【スキル】が進化したことで、料理の速度と味の段階が1つ上がったのにも嬉しくなりました。
ちなみに、他にも完成させたい品がいくつもありますが、調味料があったほうが良さそうなので、取り掛からずにいます。
これは“セゾーヌさん”によって解決できそうなため、今後が楽しみです。
そんな私にとって、実戦は逆に憂鬱でしかありません。
なかでも“昆虫系の魔物”には〝ゾワッ!〟とさせられます。
悲鳴をあげてしまうくらい生理的に無理です。
まぁ、全てのモンスターが苦手ではありますが…。
なので、本当は、戦いたくありません。
しかしながら、“武神カティーア様”によれば〝近い将来に命を落とす危険性が高い〟との事だったので、強くなるためには仕方のないところです。
こうして、現在、島の北西に位置する[山岳地帯]に訪れています。
……、はぁー。
帰りたい。
その望みが叶わないのは分かっているので、諦めるしかありませんが―。
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私は、“セゾーヌ・ディメン”です。
日本人だったときは“吉野薫”という名前でした。
こちらでは、父が亡くなってから、母の故郷である[タケハヤ島の中央都市]に移住しています。
正確には[大公家の館]に住まわせてもらっていますが…。
そんな私は、ここに来て、【研究】というスキルを活かせるようになりました。
他にも、勉学や鍛錬に励んでいます。
前世と同じで、勉強はイマイチですが、体を動かす系は得意なほうです。
そのような日々を送るなか、新たに“アンヌさん”に再会しました。
高校の学級書記だった頃と変わりなく、口数の少ない控えめな印象です。
当時は、学年トップクラスの成績で、美人でもありました。
この世界では天使みたいな雰囲気になっています。
そうしたアンヌさんたちを加えて、実戦に赴いたのです……。
二合目で、“ワイルドモモンガ”とかいうモンスターに襲撃されてしまいました。
全部で20数あたりでしょう。
“ヴァイア君”などの“竜人族の方々”は、さすがに強いです。
私は過去に二度の経験を積んだことで、だいぶ戦闘に慣れています。
こうして、[雑木林]を進んで行くのでした―。
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私は、ヴァイア=カナム。
前世での名は“城宮宗次”だ。
かつての記憶を取り戻し、[タケハヤ島]に訪れてからというもの、何かと慌ただしくなった。
自分も、家族も。
いや、決して悪くはない。
充実しているぐらいだ…。
以前、父上に「余程の事がなければ二千年は生きる我々にとって、短命な他種族との別れは特に悲しくて辛いものだから、覚悟しておくように」と助言された。
それによって、ラルーシファ達との接し方に、私は悩んでしまったのだ。
しかし、500年の寿命を持つハイドワーフに転生していた“先生”に「だからこそ、悔いが残らぬよう、自分で壁を作らず、やれることをやったが良いでしょう」「斜に構えず、正面からコミュニケーションを図るのも、その1つではありませんか?」と諭された。
これで考えを改めた私は、なるべく委員長たちと行動を共にしている。
そうした経緯で、例の[山]を登っている最中だ……。
四合目で約25羽の“アルミラージ”を倒し、更に[雑木林]を歩く。
道は途中で北東方角に曲がっていた。
五合目を越え、六合目に来たところで、“ラタトクス”とやらに囲まれてしまう。
これによって、およそ30匹の“イッカクリス”とのバトルを繰り広げていく私達だった―。




