第119話 各個の主観⑧
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私は“アンヌ=ルクー”です。
前世は、“山仲智美”という名前の日本人で、とある高校の学級書記を務めていました。
[惑星ガーア]では“天空人族”として生を受けています。
そんな私は、かつてクラスメイトだった数人や、元担任の先生と、再会を果たせたのです。
特に、“日之永くん”の存在には、とても嬉しくなりました。
現在は[ダイワ]の“ラルーシファ=イズモ第二王子殿下”ですが…。
あと、“嶋川さん”こと“アシャーリーさん”の調理にも満たされています。
こうした私は、[ダイワ大公家の館]に通う事になりました。
〝日之永くんに会える〟のと〝地球の料理品を得られる〟といった状況には秘かにルンルンしています。
〝週に一度〟が待ち遠しい限りです。
また、吉野さん…、つまりは“セゾーヌ・ディメンさん”が作ろうとしていらっしゃる“調味料”も楽しみになっています。
それによってアシャーリーさんが〝料理のレパートリーを増やせる〟とのことでしたので。
……、さて。
このような時が過ぎるなか、日之永く…、ラルーシファ王子が“マンティコア”を従魔にしていました。
見た目は殆どライオンなので、最初は物怖じしてしまいましたが、“ラバス君”は知能が高く言葉を理解できるので、割とすぐに打ち解けられたのです。
いえ、私が一方的に〝そういう気がしているだけ〟かもしれませんけど……。
ともあれ。
[タケハヤ島]の北西に在るという“山岳”に訪れました。
暫く雑木林を真っ直ぐ歩いたら、道が二又になっていたのです。
余談にかるかもしれませんけれど、どの道幅も割と広めになっています。
集団をどのように分けるか、誰もが悩みだしたところで、
「男性が右斜め前、女性は左斜め前、にします?」
先生がご提案なされました。
それだと、ラルーシファ王子と離れ離れになってしまうので、先生の事を嫌いになりそうな私です。
結局は、大人たちの相談で同じグループになれました♪
こうして、私は静かに喜びを噛みしめたのです…。
二合目で、“ワイルドモモンガ”とかいうモンスターに襲撃されてしまいました。
ラバス君が【ファイア・ボール】を放ったことで、“ハーフエルフのリィバさん”が火災になりうる危険性を説明します。
そうしたなか、“魔術師のレオディンさん”が詠唱を行なっていました―。
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僕は“フリント=ロデール”です。
現世では“ハイドワーフ”で、前世では“日本の高校教師”でした。
こちらの両親を、幼くして亡くした時は、とても悲しかったですが、元教え子たちと次第に再会していけるのは嬉しい限りです。
そのような日々のなか、[ラガービール]が完成しました。
なかなか上質な味わいです。
僕の祖父である“トラヴォグ”は、山仲さん……、今は“アンヌさん”の、祖母にあたる方と、ビールを[オリハルコン]や[ミスリル]と交換していました。
あまり量は多くなかったので、[武器]と[防具]を作るには足りなかったらしく、何個かの[装飾品]に加工したそうです。
エルフの【錬金術】も用いたので、結構な値段で売れるのだとか…。
こないだは、祖父などが、出来上がった遊具を、ルシム大公達と、[娯楽施設]に設置しに行きました。
なお、ドワーフ族が関わっている件は内密にさせているそうです。
ラルーシファ君の命を狙っているらしい“謎の人物”に、どのような経緯でルシム大公とドワーフ族が繋がりを持ったのか知られるのを危惧して。
要は、タケハヤ島に身を隠しているラルーシファ君に辿り着かれてしまいかねないので。
そうしたなか、[南北の港町]にて、娯楽施設で働くメンバーに使い方を教えてきたみたいです。
ちなみに、[拡張区域]では、幾つもの宿を含め、“屋台を経営していたヒトたち”が、従業員になっています。
[チキュウビストロ系列店]が誕生して以来、飲食関連は、特に屋台が打撃をこうむったらしく、皆さん生活が厳しくなっていたようです。
この情報を得たルシム大公が「それらの者を全て雇う」となされたのだとか。
それによって、誰もが大助かりしたそうです……。
数ヶ月ぶりの実戦に赴いています。
山内の道が二又になっている箇所で、「男女で別れる」といった考えを勧めてみました。
すると…、どうした事でしょう??
何故だかラルーシファ君とアンヌさんに軽く睨まれてしまいました。
僕は嫌われているのでしょうか?
まぁ、どちらもすぐに穏やかな表情となったので、僕の勘違いだったのかもしれません。
おそらく、〝たまたま日差しが眩しくて目を細めた〟とか、こうした理由だったのではないかと思います。
多分、きっと。
……、僕は、二人を、信じていますよ―。




