第112話 各個の主観⑦
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私は“アンヌ=ルクー”です。
世界の北側を、一年かけて西から東へと巡っている[浮遊島]で生まれ育ちました。
この[カルスム王国]は、年に1回は海に着水して、一ヶ月ほど貿易を行なっています。
それは基本的に初夏です。
……、さておき。
私に関して、お話しさせていただきます。
まず、血筋としては、“天空人”です。
誕生する時は翼を持ち合わせていませんが、3歳を過ぎれば出現させたり消す事ができるようになります。
このため、空を飛ぶのも可能となるのです。
初めのうちは、かなり低めで、距離が短めではありますが…。
そうした天空人族は、女性のほうが強いです。
特に精神的に。
男性は割と怠けがちというのも影響しているのかもしれません。
なので、公私ともに主導権を握っている女性が多めです。
勿論、当てはまらない方々もいらっしゃるので、性格によるのでしょう。
こうした“天空人族”は、代々、女性が王位に就いてきました。
過去には国王になった男性が何人かいたそうですが、全員あまり良くなかったみたいです。
また、領主も殆どが女性となっています。
既に他界している私などの高祖母……、つまり“祖母の祖母”は、当時の女王の妹だったそうです。
その高祖母は、東の領土の一部と、[大公]の地位を、与えられました。
現在、これらを受け継いでいるのは、私などの祖母です。
祖母には四人の娘がいて、一番下が“私の母”となります。
なお、四姉妹とも婿養子をもらっていました。
あと、一度にというわけではないですけれど、祖父は老衰で、父が魔物との戦いで、2つ年上の兄は数年前の伝染病で、それぞれ亡くなっています。
まぁ、親族が揃って同じ館で暮らしているため、たいして寂しくはありませんが。
…………。
すみません、嘘です。
本当は、たまに悲しさが込み上げてきます…。
ちなみに、天空人族は〝長くて150年ぐらい生きる〟とのことです。
こうした私達は、7歳から鍛錬と勉学が開始されます。
私に備わっていた【神法】というものに、いろんな大人たちが驚き騒いでいました。
なんでも、かつて[ノイスト大陸]を統一した人族が使っていたそうです。
あれ以来、およそ五百年、誰も有していないのだとか。
いずれにしろ。
私は[光属性]と[攻撃系]を扱えます。
どちらも“低級”ですが。
それから、[戦闘スキル]は、もともと“剣術/狙撃術/槍術”のみだったものの、日々の積み重ねによって約三年後には“打撃術”と“武術”を習得できました。
全て“壱”ではありますけど……。
この数日後、私は夢を見ました。
それによって、自分が、“山仲智美”という名前の日本人だった事などを、思い出したのです…。
一年程が経ちました。
あれからというもの、前世で関わりのあった人達が気がかりでありません。
いつだったか“学級副委員長”が言っていた〖異世界転生〗とかいう現象が起きたのは、私だけなのでしょうか??
どこかで不安を感じながら過ごしていたところ、[浮遊島]が着水する時期を迎えたのです。
こうしたタイミングで、一番上の伯母様の“次女”が冒険から帰ってきました。
一旦、寄ってみただけで、またすぐに旅立つとのことでしたが……、その従姉妹が興奮と感動の熱弁を揮った珍しい料理に、私は〝ハッ〟としたのです。
しかも、お店には[チキュウビストロ]といった名称が入っているのだとか。
これは、もう、疑いようがありません。
私の他にも生まれ変わった人が存在しているに違いないでしょう。
意を決した私は、前世について語った流れで、どうしても行ってみたいと懇願したのです…。
翌日、従姉妹によって[タケハヤ島]に【瞬間移動】しました。
位置としては[北の港町ジィーモ]の“南門”あたりです。
私を心配した母も付いて来ています。
町に入った私たちは、[馬車]で目的地付近へと向かいました……。
[チキュウビストロ・リジュフィース]で、
「やっぱり美味しい!!」
“レミン姉さん”が[唐揚げ]に上機嫌となるなか、
「まぁ~♪」
[はちみつバタートースト]にほっぺが落ちそうになる母親です。
私は久しぶりの[カルボナーラ]を喜びと共に味わいます。
食後に、そうした品々を考えたのは誰なのか、店員さんに尋ねてみたら、[別室]に案内されました…。
店長だという“リラルさん”が、銀製の[名刺みたいな物]を渡してくれます。
これを手掛かりに、[中央都市]に赴くことにしたのです……。
距離としては、[ユニコーン車]で半月くらいでした。
道中、いくらかの魔物に遭遇しましたが、母と従姉妹が倒してくれたので、無事に都に辿り着けたのです。
そうして、[館]の敷地内で車を降りる私の胸が高鳴ります…。
給仕さんに通された[広間]で待つこと数分。
いろいろな人達が足を運んできました。
これによって、嶋川さんだけでなく、吉野さんにも再会できたのです。
2人は、見るからに、私と同じ年齢でしょう。
となれば、消去法でいくと、正面の男子が“元学級委員長”ということになります。
「日之永くん?」
そう確認したところ、〝うん〟と頷きました。
これによって、私は何よりも嬉しくなったのです。
何故ならば、彼は、私が前世で片想いしていた相手なので―。
現時点での[アンヌ=ルクー]
【神法】
・光属性/攻撃系
※どちらも初級
【スキル】
・亜空間収納
※小規模
【特殊スキル】
・守護
※初期段階
一度に十人の防御力を15秒間だけ二倍にできる
一日一回のみ使用可能
その後30日は発動できない
【戦闘スキル】
・剣術/狙撃術/打撃術/槍術/武術
※どれもが[壱]
前世での名前は[山仲智美]




