第110話 ダンジョン探索⑤
僕らは“シャドードッグ”を倒しきっている。
このモンスター達からも素材が取れるため、ルシム大公などが[アイテムボックス]に回収していた。
そこから2分ほど歩いたところで、道が三又になる。
「左です。」
ヴァイアの次兄である“ドゥーラさん”に、僕たちは先導されていく……。
▽
4分ぐらいが過ぎて、かなり開けた場所に出た。
〝ひぃッ!!〟と悲鳴を上げたのは、勿論、アシャーリーだ。
僕などは、もう、このリアクションに慣れてしまっている。
それはさておき。
ここでは、全長2M~4Mあたりの“イモリ”が、地面/床/天井に見受けられた。
ざっと50数はいそうだ。
他に、6M級が一体だけ最奥に控えている。
余談になるかもしれないけど、二時と十時の方角には通路があるみたいだ。
いずれにせよ。
“イモリ集団”が僕らを〝じっ〟と観察するなか、
「間違いなく“ビッグニュート”ですね。」
「王子がた、あの魔物達は背中と尻尾の皮膚から毒の粘液を分泌するので、気を付けてください。」
「それから、割と素早いですよ。」
“ハーフエルフのリィバ”が伝えてくれる。
それに僕たち子供が頷いたタイミングで、
「あの大きいのは、“ジェネラル”でしょうか?」
“細長眼鏡のマリー”が疑問を呈した。
「おそらくそうでしょう。」
「あのジェネラルは、私が引き受けます。」
「それと、ここに魔素が溜まっているので、戦いを終えてから処理しましょう。」
こうドゥーラさんが述べたところで、“ジェネラル”が〝ゥガッ!〟と咆える。
それを合図に、今まで様子を窺っていたイモリ達が、一斉に動きだす。
ほぼ同時にドゥーラさんが低空飛行で“ジェネラル”へ向かう。
結構なスピードだ。
焦って左へ逃げようとする“将軍”を、ドゥーラさんが[パルチザン]で突く。
これが首の左側に刺さった“ジェネラル”が〝グギャッ!!〟と痛がるなか、僕たちは“ビッグニュートグループ”とのバトルになっていた。
確かに速度があるため、【神法】や【魔法】の狙いを定めるのが難しい。
“魔術師のレオディン”などの練達は、〝範囲を絞りやすいのと、詠唱が短めで済む〟との理由で、【低級】を用いている。
他のメンバーは[素手]や[武器]で戦闘を繰り広げていった。
ビッグニュートらに対して、“竜人の双子さん”と“獣人族”は余裕があるみたいだったけれども、それ以外は反応が遅れがちだ。
特に、子供は。
ただ、まぁ、大人のフォローによって、なんとかなっている。
こうした状況で、“将軍”の断末魔が響く。
ドゥーラさんが勝利したようだ。
“イモリの子分たち”が、そちらに気を取られるなり、
「好機です!」
「猛攻を仕掛けましょう!!」
このように告げる“片目のベルーグ”だった…。
▽
約3分が経っている。
僕らは敵を殲滅できた。
多くのヒトが〝ふぅー〟と息を吐いたところで、
「フラッシュを備えている方々は、中央に集まってください。」
「これより使いますので。」
ドゥーラさんが呼び掛ける。
更に、ドゥーラさんの指示で、[光属性]を扱えない僕などは、端に寄った。
そうして、“レオディン/リィバ/魔女さん/アシャーリー/ヴァイア/先生/セゾーヌ/ドゥーラさん/先生の祖母さん”が、壁を向いて円になる。
ここから、全員が目を瞑ったところで、“魔法組”が息を合わせ、
「聖なる煌めき、仇なす者の視界を奪いて、悔いを与えよ。」
「フラッシュ!」
【閃光】を放ち、
「フラッシュ!!」
“神法組”が無詠唱で続く。
誰もが瞼を開けたら、
「……、ふむ。」
「この空間の魔素は完全に払えましたね。」
穏やかな笑みを浮かべるドゥーラさんだった。
その流れで、
「ここって湖に囲まれた小島なんだから、スタンピードって起きるの??」
「そもそも。」
アシャーリーが首を傾げたところ、
「最下層は湖底と繋がっておる故、魚の魔物は行き来できる。」
「それだけでなく、普通に泳げる“ビッグラット”や“シャドードッグ”に、羽や翼を有しておる連中は、洞窟を出て別の場所に上陸する事が可能だ。」
このように大公が教えてくれる。
そうした説明に、僕もまた〝成程ぉ〟と納得させられた―。




