第107話 ダンジョン探索②
一本道を歩きつつ、
「あれ、試してみたらどうです?」
「ダンジョンは、先へと進んで行くにつれて魔物が強くなっていきますからね。」
「最初に使っておいたほうが、効果が分かりやすいでしょう。」
そのように促した“次兄のドゥーラさん”に、
「はい。」
ヴァイアが従う。
こうした流れで、僕たちは、広めの空間に出た。
次の瞬間、僕などの後方で、
「うっひぃ――ッ!!!!」
アシャーリーが、おぞましがる。
地面/壁/天井に、全長2Mあたりの“ハサミムシの集団”がいたからだった。
ざっと50匹は超えていそうだ。
それらのモンスターは“キラーイヤーウィッグ”という名称らしい。
僕らの前線では、
「気焔。」
ヴァイアが【特殊スキル】を発動した。
これによって、“キラーイヤーウィッグ”の三割ほどが転びだす。
間違いなく失神したのだろう。
確か、タイムリミットは15秒だった筈だ。
なにはともあれ。
効かなかったハサミムシ達は、僕らへと走りだした。
そうした面子へと、
「サンダー・シェル!」
僕は直径20㎝ぐらいの【雷の砲弾】を放つ。
この一斉に発射された【神法】の数は、全部で25コだ。
それらがヒットした敵たちは倒せたみたいだけれども、範囲外だった約15体は無傷で動いている。
そこへ、ユーンなどの“獣人”が飛び出して、戦いだす。
伯母にあたる“フィネルンさん”に、
「ほらッ!!」
「あたしらも!」
鎧ごしに背中を〝バンッ!!〟と平手打ちされた先生が、
「りょ、了解です!」
前へと足を運ぶ。
こうした先生の祖母である“ディーザさん”は、[メイス]を振るって“キラーイヤーウィッグ”を殴打してゆく。
何故だか〝ニコニコ〟しながら。
ご本人の穏やかな感じと、“紫色の血飛沫”をあげるハサミムシ達とのギャップによるシュールさが、逆に怖い。
……、ま、それはさておき。
セゾーヌは、“キラーイヤーウィッグ”に [武術]や【ホーリー・ボール】を扱っている。
こうしたなか、
「いっやぁ――ッ!!」
叫びながら矢を射るアシャーリーだった…。
▽
敵を殲滅し終え、先生とセゾーヌが〝すぅ~、はぁ~〟と深呼吸する。
アシャーリーは〝ぜぇはッ、ぜぇはッ〟と肩で息していた。
ちなみに、キラーイヤーウィッグたちの襲撃にビックリした三人は、あの時、【ライト・ボール】が自然と消えてしまったみたいだ。
動揺したのが原因で。
「ここからは、神法の“ライト・ボール”は用いなくて結構でございます。」
「徒に使って、神力切れになると困るでしょうからな。」
そう“魔術師のレオディン”が提言したことで、ヴァイアも【光の玉】を消灯する。
「では、進みましょうか。」
優しく述べたドゥーラさんが先頭に立ち、これに僕らが続く……。
▽
再びの一本道を2分ほど歩いたところ、階段になっていた。
10段くらい下りて、[踊り場]を左に折れ、また10段あたり下りる。
そこから少しだけ進んだところ、三又になっていた。
「魔素の殆どが右の通路へと流れていってますね。」
こう喋ったドゥーラさんに、“竜人族”と“ハイドワーフ達”が頷く。
“ハーフエルフのリィバ”も、それを感知しているようだ。
かくして、ドゥーラさんが告げた道に向かう僕らだった…。
▽
3分が経った頃に、
「前方より、かなりの数が来ています。」
「宙を飛んでいるみたいです。」
ユーンが皆に伝える。
「もしかしたら、“クリーピーフライ”かもしれませんね。」
そのように推測したドゥーラさんが、
「なんにせよ、改めて戦闘準備を整えましょう。」
僕たちに指示した。
「それでは直ちに。」
“ルシム大公”が応じた事もあって、僕らは武器を構えていく―。




