第105話 過ぎゆく季節のなかで⑧
大公家の料理人である“レイエル・ローザ”と、その家族が、新規開店に向けて勤しんでいた頃、僕は改めて[神剣ムラクモ]を試すことになった。
このため、いつぞやの〝中央都市から暫く南下した場所〟へと、“魔術師のレオディン”によって【テレポート】する。
なお、僕の“教育係”と“お世話係”はもとより“ルシム大公”が一緒だ。
そうして、約1年前みたいに、【神力】を流し込んだ[ムラクモ]を、下から上へと振るう。
結果、二度目の【閃光斬】で“神力切れ”を起こしてしまった。
これが現時点での僕の限界らしい。
ま、一回は余裕で扱えるようになったので、ひとまずはOKという事にしておこう…。
▽
[チキュウビストロ・ビアクト]が営業を再開した翌日。
もう一つの候補が見つかったそうだ。
その店舗は、中央都市の北西区に在り、この世界で“感謝”を意味する[グラールス]という名称らしい。
若い男性たち四人が経営しているとの事だった。
代表を務めているのは“アレッシド・ピデューラ”で、19歳なのだとか。
そして、16歳の弟と、彼らの従兄弟である17歳の二名が、共に働いているらしい。
後に僕が知った皆の容姿は、“髪”や“眉”がレッドブラウンで、“瞳”はブラウンだった。
……、さておき。
お店は[北の大通り]の裏路地に入って暫く進んだ位置にあるとのことだ。
〝北門からだと歩きで30分あたりになる〟らしい。
あまり条件が良くないように思えるけど、割と繁盛していたのだとか。
初代の“マクドゥーレ”が70歳になったのを機に引退するまでは。
なんでも、この人は、40年以上前に“大公家の料理長”を務めていたそうだ。
その経歴と、慕われやすいのもあって、客足は絶えなかったらしい。
ところが、マクドゥーレさんが数日前に辞めてからというもの、〝次第に売り上げが落ちだした〟との事だった。
こうしたなか、“ピデューラ”といった苗字を〝どこかで聞いたような?〟と気になった大公が、[本館]に残されている記録を片っ端から確認したそうだ。
それによって、〝あぁ、どうりで〟と納得したのだとか。
ちなみに、マクドゥーレさんは“先代の大公”の時に独立したらしい。
つまり、“アシャーリーの曾祖父”が現役だった頃だ。
ルシム大公は、当時20歳ぐらいだったのと、調理するメンバーも何度となく変わってきたので、うろ覚えだったようだ。
何はともあれ。
〝これも縁とういうものだろう〟と考えた大公が、“魔女さん”によって、北門の外に【テレポート】した。
“アシャーリー母子”を連れて…。
▽
AM11:00あたり。
戻ってきたアシャーリーによれば、お店の近くにある自宅で暮らしている“マクドゥーレ夫妻”も顔を出したらしい。
久しぶりに大公に会った本人は〝お懐かしや〟〝あの若君が御立派になられて〟と涙ぐんだとのことだった。
ここから、アシャーリーたちが厨房を借りて何品か作ったそうだ。
それを食べた全員が、〝ぜひともよろしくお願いします!!〟と頭を下げたらしい。
このため、魔女さんの【テレポーテーション】で[グラールス]に通う“アシャーリー母子”だった……。
▽
半月が経っている。
ピデューラ親族は、アシャーリーの料理を習得し終えたみたいだ。
彼らにも、大公から“必要な機材など”が送られた。
明日には[チキュウビストロ・グラールス]として再始動する。
そちらも、当然、[大公家御用達]だ。
なお、珍しい調理に刺激を受けたマクドゥーレが、復帰したのだとか。
ただし、店長の座は、長男の息子にあたる“アレッシド”に譲っているのと、年齢的な事もあって、〝お昼のみ参加する〟らしい。
奥さんは半ば呆れつつも元気な姿に喜んでいたそうだ。
こうした二人の子供たちは、料理の道を選ばず、別の職に就いているのだとか。
そんなこんなで。
南東区の[ビアクト]も、こちらの[グラールス]も、[他のチキュウビストロ関連店]で“張り紙”とかを用いて宣伝してくれているみたいだ。
あと、大公が〝各店舗への迷惑行為は断じて許さん〟〝地元民であれば島からの永久追放、旅人などは無期限で入島を禁じる〟と発令していた―。
現時点での[ヴァイア=カナム]
【神法】
・攻撃系
※中級
・光/闇の属性
※どちらも低級
【スキル】
・亜空間収納
※小規模
【特殊スキル】
・気焔
※初期段階
一日一回のみ全身から放った気で敵を15秒間だけ失神させられる
その後30日は使えない
【戦闘スキル】
・槍術
※段階は[弐]
・狙撃術/剣術/打撃術/武術
※どれもが[壱]
前世での名前は[城宮宗次]




