第102話 渓谷探索③
僕とヴァイアは、【神法】が“中級”になった。
ただし、ヴァイアの[光属性]と[闇属性]は“低級”のままだ。
僕には[攻撃系]しか備わっていない。
それでも、僕の“教育係”と“お世話係”に、ヴァイアの“三兄にあたるガオンさん”や“竜人の双子さん”が、喜んでくれた。
一方で、“ルシム大公”は〝むぅ~ッ〟と悔しげになっている。
アシャーリーの【能力】が進化していなかったので…。
先生も“現状維持”だったけど、
「ま、当然だな。」
こう納得する“トラヴォグ公爵”だった。
あと、セゾーヌも変わりない。
そうしたなか、
「まだ昼までは時間があるので、もう暫く歩き回ってみましょう!」
いささか躍起になった大公によって、渓谷巡りが続行される。
“次長のルムザさん”が〝仕方ない〟といった感じで、
「このまま川沿いを進みますか?」
「下流へと。」
大公に尋ねた。
「……、いや、気分転換に別の道を選ぶ。」
このように返した大公が、
「最初に蜂どもと戦った所へ戻ろう。」
“魔女さん”に視線を送る。
「かしこまりました。」
会釈した魔女さんによって、【テレポート】する僕たちだった…。
▽
「真ん中にするかの。」
大公が述べた事で、そこを歩いてゆく……。
3分ほどが過ぎたあたりの位置では、道が三又になっていた。
「このまま直進しよう。」
そう告げた大公によって、更に歩く…。
およそ5分が経った頃、割と広い場所に出た。
遠くには[五つの滝]と[大きな滝壺]に[二本の川]が見受けられる。
川は、四時と八時の方角に流れており、どちらにも[丸太の橋]が架かっていた。
なお、滝壺の近くには“モンスター集団”が屯している。
全部で50数はいそうだけれど、まだ僕達には気づいていない。
「どうやら、“ラミア”と“ナーガ”みたいですね。」
このように開口したのは、“ハーフエルフのリィバ”だ。
「ひと際デカイのがおるが、ロードではあるまいな??」
トラヴォグ公が独り言みたいに疑問を呈したら、
「いや、あのラミアはジェネラル級じゃねぇか?」
「ロードだったらアレよりもデカイだろうからな。」
そう見解を示したガオンさんが、
「アイツは俺が引き受けよう。」
〝ニッ〟と笑みを浮かべた。
なんだか楽しそうだ。
ちなみに、ラミアは〝上半身が女性〟で、ナーガは〝男性〟だ。
どっちも〝下半身は蛇〟となっている。
この下半身は、ラミアが“赤色”で、ナーガは“青色”だった。
個体差はあるけど、ラミアの全長が6M~8Mぐらいで、ナーガは2M~4Mあたりだ。
ただ、ナーガのほうは、腕が四本ある。
それから、“ラミアジェネラル”の全身は10M以上の長さがありそうだった。
こうした魔物たちは、半数ほどが[素手]で、残りは[サーベル&円盾]を装備している。
それだけでなく、全員が[銅製らしき胸当て]を着けていた。
「作戦、いかがいたします??」
“細長眼鏡のマリー”が誰ともなく尋ねたところ、
「はい!!」
「ラルーシファ王子とヴァイア様の“中級神法”を見てみたいです!」
嬉々としてリィバが挙手する。
「俺としては“戦闘スキル”も上げていただきたい。」
「特に剣術が進化すれば、これまでより“ムラクモ”を扱いやすくなるんじゃないかと思っているんで。」
このように“片目のベルーグ”が推測したら、
「んー、……、じゃぁ、まずは、二人が“中級の神法”をぶっ放すだろ。」
「で。」
「奴らが倒れたり焦っている隙に、俺がジェネラルに接近するから、あとは任せた。」
「てことで、どうだ?」
ガオンさんが大まかな方針を提案した。
「まぁ、儂は構いませんが。」
そう賛成したトラヴォグ公に、
「分かりました。」
首を縦に振った大公が、
「御二方とも、それでよろしいですかな??」
僕達に確認してくる。
「いいよね?」
こう僕が窺ったところ、〝ああ〟と頷くヴァイアだった…。
▽
僕とヴァイアが“直径1Mでホワイトゴールド”の[神法陣]を築く。
そして、
「アイシー・ランス!!」
僕は“直径5㎝×長さ2M”といった【氷の槍】を50発、
「ウィンド・エッジ!」
ヴァイアが“最大幅10㎝×長さ2M”で三日月状の【風の刃】を100本、飛ばした。
これらが直撃した“ラミア”と“ナーガ”が倒れていく。
低級のときより二倍はありそうな威力に、僕は目を丸くし、多くのヒトが〝おぉーッ!!〟と興奮する。
そうしたなか、“ラミアジェネラル”へと、翼を用いて一気に向かうガオンさんだった―。




