第100話 渓谷探索①
僕たちは、それなりの数の“キラービー”と“キラーホーネット”を回収し終えている。
虫が苦手らしいアシャーリーは顔がひきつっていたけど、セゾーヌは平気みたいだった。
落ち着いて景色を見てみると、ここから先の道は5つある。
その右から二番目が、キラービーが飛んできた所だ。
なので、僕らは、この道へと進みだす…。
▽
ジグザグした土路を歩きつつ、
「ここのダンジョンマスターを倒したとかいう冒険者達は、さっきの“蜂の集団”に襲われなかったのかな?」
素朴な疑問を口にした僕に、
「あー。」
「この渓谷は、儂らが来た北西以外にも、幾つか出入口がありますので、そのどれかで触手目玉に遭遇したのでしょう。」
ルシム大公が教えてくれた。
「なるほど。」
そう納得していたところへ、
「左斜め上、敵です。」
“獣人のユーン”が知らせてくれる。
視線を送ってみたら、“キラービーの群れ”だった。
「え??」
「またぁ?」
辟易したのは、アシャーリーだ。
一方で、
「あの向こうに“巣”があるに違いない♪」
“トラヴォグ公爵”が喜ぶ。
こうしたなか、
「取り敢えず、ぶっ倒そうぜ!!」
「まずは、魔法や神法で攻撃だ!」
ヴァイアの三兄にあたる“ガオンさん”に指示され、皆がハッとなる。
そこから、
「新たに素材を集めるのであれば、使うのは中級までにしてください。」
「それ以上は損傷が激しくなってしまいますので。」
このように“ハーフエルフのリィバ”が告げる。
そうして、“魔術師のレオディン”が【デッドリーポイズン】を、“魔女さん”が【パラライズ】を、再び用いた。
ただ、さっきの倍は数がいるみたいで、【猛毒】や【麻痺】の範囲から逃れた敵は少なくない。
迫る蜂たちに、リィバが、
「純潔なる煌めきよ、我がもとで強さをましてゆくべし。」
「より一層に輝き、立ち塞がる障壁を貫け。」
「ホーリー・レイズ!!」
直径2㎝×長さ50㎝の【光線】を100コ発射する。
“細長眼鏡のマリー”は、
「彼方に在りし結晶よ、この手に冷たき力を捧げ、我が前に現れろ。」
「アイス・アロー!」
25本の【氷の矢】を放つ。
ガオンさんは、
「我に宿りて、姿を現せ。」
「秘めし力よ、敵に後悔を与えるべし。」
「サンダー・シェル!!」
直径20㎝といった【雷の砲弾】を25コ飛ばす。
なお、リィバとガオンさんが【中級】で、マリーは【初級】だ。
僕は直径5㎝の【サンダー・ボール】を10発、ヴァイアが50本の【ウィンド・アロー】を、発した。
アシャーリー/先生/セゾーヌは、直径10㎝の【ホーリー・ボール】を50コ放射している。
当然、これらの【神法】は下級だ。
ちなみに、今までの鍛錬や実戦で、〝下級神法の威力や効果時間は中級魔法と同等〟ということが判明している。
……、さておき。
落下しているキラービー達に武器などを振るう一同だった…。
▽
「ちと、あっちの方角、確認してくる。」
そう述べて、翼をはためかせ、宙に浮いたガオンさんが、
「ドッシュ、ラッス。」
「念のため、俺と一緒に。」
“竜人の双子兄妹さん”に声をかける。
「了解です。」
「かしこまりました。」
このように応じた双子さんもまた、上昇していく……。
▽
それなりに離れた崖で、ガオンさんたちは、空中戦になっている。
どうやら、キラービーの生き残りがいたみたいだ。
でも、たいした数ではなかったようで、割と早めに決着がついた…。
▽
崖の窪みに[巣]があったらしく、ガオンさんが【アイテムボックス】から引っ張り出した剣で、これを切り離す。
そうした巣を、両脇で抱えた双子さんが、僕達の側まで運んでくる。
巣は“直径1.5Mぐらいの歪な円形”だ。
これに、アシャーリーが〝うッ〟と気持ち悪がった。
そこへ、地上で何かを探していたガオンさんも戻ってくる。
“全長80㎝あたりの蜂”の首根っこを右手で掴んでいた。
「“クイーンビー”ですね。」
ふと気づいたリィバが、
「預からせてください。」
「大公家に帰ったあと、ボクが捌く事になりますので。」
〝ニコニコ〟しながら申し出る。
「おう。」
ガオンさんが“女王蜂”を渡すなか、
「巣は、ひとまず、ルシム殿が受け取ってくだされ。」
「細かい話しは後程にしましょうぞ。」
このようにトラヴォグ公に勧められ、
「では、失礼して、そうさせていただきます。」
快諾する大公だった―。




