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007 穴をまわって


 廊下の突き当りの窓から顔を出し、佐々木たちは周囲を確認する。窓から出た瞬間に足下が崩れたのでは大変である。

 穴の縁からの距離や、地面にひび割れがないかなどしっかりと観察をする。


「ねえねえ、ちょっと高くない?」

「ここから立って飛び降りればな。窓枠に一旦ぶら下がってから飛び降りれば一メートルもねえよ」

「あ、そっか」


 高さに怖気づく高橋だったが、佐々木が実際にやって見せればとても簡単に窓から飛び降りられることも分かり、同じように外に出る。その方法を見てたじろぐのは中村だ。その理由は佐々木にもすぐに察しがついた。


「スカートの中を気にするくらいなら岡林先生(オカセン)と一緒に行けよ!」

「ああもう、わかったよ!」


 その言葉は覚悟を決める方だったようで、パンツを丸出しにして窓枠にぶら下がり中村も外へと飛び降りた。


「んじゃ、高橋は俺から四、五メートルは離れてそっちな。中村はさらに五メートルくらい離れてくれ」

「なんでよ?」

「全員で穴に落ちたらシャレにならねえだろ? 下手したら俺らが落ちたってこと自体が気づかれない可能性もある」

「あー、事故を報せに行く係ね。そういうの聞いたことある」


 言いながらも三人は広がりながら校庭を北に進んでいく。北口の門は、崩落に巻き込まれて無くなっている。門からつながる柵も数メートルほどが崩れており、近くの体育倉庫も半壊している。


 道路に出られそうなところを探すが、先ほどの崩落を考えれば穴の縁には安易に近づけない。


「道路はここらからある」

「もうちょい先に行ってから近づこうぜ」


 初めは軽々しい動きをしていた高橋だったが、崩落を目の当たりにしてビビったのだろう。穴の口に近づくのは及び腰だ。


「中村、これ越えれる?」

「ジャージならね」


 彼らの前にあるのは高さ二メートルほどの柵だ。下部六十センチほどはコンクリート製で、普通の中学生の体力があれば越えるのは物理的にはそう難しくない。しかし、服装による動作の制限というのも小さくはない。スカートを穿いたままで柵を越えるには、かなりの瞬発力と運動神経が必要と思われる。


「何か台になるものあるかな?」

「そこらへんは先生に聞いた方が早いんじゃね? 先生だって学校から出れないと困るでしょ」

「まあ、そりゃそうか。じゃあ、中村頼んでいい? 俺は向こう見てくるわ。下りれるところは探さないとだろ」


 そう言って親指で差してやれば、先ほどの崩落に巻き込まれた者がいるかもしれないなどと口には出さなくても伝わりはする。点呼の結果、犠牲者がないと分かっていればいいのだが、そうでないならば早急な捜索が必要になる。


「わかった。気をつけてね。ほんと、気を付けてね?」

「俺だって穴に落ちて死にたくなんかねえよ」

「じゃあ、また後で!」


 それだけ言って中村はグラウンドの全校生徒が集合している方へと駆けて行った。一方で、佐々木と高橋は柵を乗り越えて道路を渡ると、高校の柵を越えて敷地に侵入する。



 崩れた体育館の残骸をまわってグラウンド側に抜けると、もといた中学校の南口のあたりが見える。その下には自動車が転がっているのも見えるが、周辺に動くものの影もない。


「あの高さじゃ助かってねえんじゃねえか?」

「そうかもしれんけどよ、怪我してクルマから出れないって可能性もあるだろ? 自分だったら腕骨折してあの中から出てこれると思うか?」

「まあ、無理かもな」


 そんな話をしながら二人は高校のグラウンドを右回りに歩き、穴をまわり込んでいく。


「あの辺、なんか地面がひび割れているように見えね?」

「危ね、危ね、危ね。もうちょい離れようぜ」


 穴の手前の地面に少しでも違和感を見つけたら慎重に距離をとる。おかげで進みは遅いが、五分ほどで南の壁面に見つけた斜めに跡のあたりに着いた。


「高橋はもうちょい離れて待っててくれ」

「おい、大丈夫なのかよ?」

「わかんね」


 佐々木は身を低くして、そろりそろりと慎重に穴の縁に近づいていく。それにつられて高橋も身を低くするがそれにはまったく意味はない。


 ほどなくして佐々木は穴の縁に辿り着き、そしてゴバッという音ともに足下が崩壊した。

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