035 まさかのダンジョン
「とりあえず、判明している脅威は取り除けたはずだが……」
何かあるごとに進むのか戻るのかに悩んでしまうが、今回は特に報告すべき進捗はないとして進むことになった。
特に何か新しい手掛かりを得たわけでもなければ、分岐を見つけたわけでもない。太くなったり細くなったりはしているが、一本道が続くだけならば先へと進むだけである。
大ネズミは退治して以降、出てきてはいない。巨大ワラジ虫はいくつか見つけているが、動きも鈍く容易に避けて通れるため一々相手にする必要はない。
狭い道を塞ぐようにしている場合だけ、スコップで叩き潰していく。
そのまま延々と歩き続け、三時間ほど進んだところで思ってもないものを見つけた。
「階段だと?」
「待て待て待て、絶対おかしいって。ここだけ明らかに人工的な作りでしょ」
周辺の床や壁は大小の凹凸がゴツゴツとしているのに、階段の部分だけ床も壁も滑らかな平面になっている。
面の繋ぎ目も一ミリもブレのない直線で、何をどう見たって自然にできる形状ではない。
戸惑いつつ、佐々木らが確認するのは何らかの罠が仕掛けられていないかだ。まずは槍で突いたり石を投げつけてみたりする。
それで何も起こらないからといって、安心できるものでもない。階段を下りて行った先にどんな危険が待ち受けているかも分からない。大きく右に弧を描いて下っていく先は二十メートルくらいまでしか見通せないのだ。
「こんな時こそドローンの出番だな」
佐々木が飛ばしてやると、ドローンの撮影した映像が手元のコントローラーに映し出される。これまでにも何度か使用しているが、実に便利なものである。
「おお、素晴らしいな。他の災害でも、もっとこういうのを活用していきたいな」
横で見ていた警察官も感嘆の声を上げる。危険の高いところに生身で踏み込まなくても調査ができるのは非常にありがたいことだ。ドローンの場合ならば、最悪の場合でも数十万円を失うだけで済む話だ。命と比べれば実に軽い。
「なんか、明るくなってきてないか?」
「いや、何の明かりだよ? マグマとかならここまで熱が伝わってきてもおかしくないだろ」
そんなことを言うが、進んでいくにつれ画面はどんどん明るくなっていく。
そして階段を下りきると、花畑が広がっていた。
「え? 何これ? ドローン壊れた?」
「いや……、壊れてはいないと思う」
佐々木も不安そうに言うが、コントローラーを操作して百八十度振り向かせると、岩壁に開いた穴の奥に登り階段が伸びているのが映る。
「待て待て待て。おかしいだろ。どう考えても地下の後継じゃない」
「変だと思ってたけど、マジでダンジョンなのか?」
「とりあえず、下りてみようぜ。あの花を摘んで持って帰る。考えるのはそれからで良いだろ」
「そうだな。そろそろ引き返す頃合いだ」
ドローンを飛び回らせてみる限り、危険そうな生物は見えない。しかし、誰からも「もっと奥まで調査を」という意見が出てこないのは体力と時間の都合だ。
既に時刻は十九時半を回っている。復路も往路と同じだけ時間がかかるとすれば、地上に到着するのは二十二時頃になる。
「吉澤、酸素系の電池、大丈夫だよな?」
「ああ、念のため換えておくか。下りだし怪しさ満点だし気を付けるに越したことは無いだろ」
慎重さを忘れないのは良いことだ。油断して階段を下りていって、全員で倒れたりしたら目も当てられない。階段を下りていき、花畑に出る前にビニール袋を被る。
衣服に花粉等が付着してしまうのはどうしようもないが、直接吸い込んでしまうのを避けるだけでも健康への影響は全然違う。
岩壁にあいた穴から出ていくと、不思議な光景が広がっている。足下の岩の床は柔らかい土になり、色とりどりの草花が咲いている。振り返れば暗灰色の岩壁が屹立し、十数メートルの高さで天井につながる。
最も謎なのはその天井だ。赤や青、黄色に緑、紫と細かな光がちりばめられ、全体としては微かな暖色を帯びた白となる。
「一体どういう原理で光ってるんだ? あれは」
「しらん。あの色の数はマジで謎だな。あれも採取できればいいんだけど……」
「高すぎるな。石を投げてみて大きく崩れてきても困る」
材質も全く想像できないため、下手なことはできないという主張に佐々木も吉澤も頷く。興味よりも安全の方が大事なのは当たり前のことだ。ドローンをできるだけ近づけて撮影してはみるが、それ以上の無茶なことはしない。
その後、花を摘んで種類別に袋に入れていく。タンポポや菜の花などよく知られているものもあるが、素人には一見して分からないものも多い。それらを二十種類摘むと引き返して階段を登っていく。
「いったん休憩にしよう」
階段を上ったところで警察官の一人が提案する。あまり長い休憩を取るわけにもいかないが、もうずっと歩きっ放しである。職業柄、平らな舗装路であれば値を上げるような時間でもないが、ガタガタの悪路を歩き続けていれば舗装路の何倍も体力を消耗する。
「用も足したいな」
「飲み物は残っているのか? 残量次第では我慢した方が良い」
「アクエリあと一本あるっす」
五百ミリリットルのペットボトルを出して見せれば、警察官も「なら大丈夫だな」と頷く。そして、壁に向けて用を足すと、少し離れてから揃って腰を下ろした。
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