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022 『地下探索紀』(3)

「人員と機材が足りなさすぎます」


 報告は端的に行われる。というか、消防や警察の報告全てを動画配信されているわけでもない。


 大事なことは、思った以上に深い横穴が分岐して広がっていて、数人だけで手掛かりを見つけるのは非常に困難であろうということだ。



『今日のところは、これで終わり……と思っただろう?』


 一人が声を上げたことで、騒然とする事態になった。


「そこにいるのは誰だ⁉  何をしている?」


 向けられたライトの先には人影と思しきものが揺れている。探索中の警察や消防ではない。彼らは全員がライトを持っているし、万が一電池が切れた場合など、声や物音を出しての合図の方法も決まっている。


「あの! ここどこですか?」


 問いかけの回答はなく、逆に質問が返ってきた。


「一条高校のあった場所の地下だ。君たちは一条高校の生徒か?」


 何者かは分からないが、行方不明の可能性は高い。確認すべきことはいくつもある。


「一条高校の全生徒が行方不明になり、現在捜索中だ。君たちは、一条高校の生徒か?」


 まごまごとしている人影に近寄りながら、質問を重ねる。


「はい、二年二組の木下です。と、三浦と高坂も一緒です」


 互いの顔を視認できる距離にまで近づくと、はっきりとした答えがあった。光に照らされ三人の女子生徒も進んでくるが、不意に足が止まる。その表情が翳っているように見えるのは、光が眩しいからというわけでもなさそだ。


「ちょいと、おじさんら。囲みすぎ」

「ああ、済まない。外に出ようか、あちらだ」


 女子高生が三人、暗闇の中で作業服の男に取り囲まれれば警戒するというものだ。もちろん善意で集まっているだけで害意など無いのだが、それが即座に伝わるならば世の中に不幸なすれ違いなどないだろう。


 警察官少し離れ消防士が踵を返して出口へと向かうと、少しだけ離れて、三人組もその後ろをついて行く。



『あの子はどこから出てきたんだ??』



 当然、出てくる疑問だ。女子高生がどうやって戻ってきたのかは大切な情報だ。逆に辿れば、残りの行方不明者を発見できる可能性も高いはずだ。


 警察も消防も、行方不明者が見つかったあたりに手掛かりがあるだろうと集まってくる。


「あの子たちを見つけたのこの辺です。目印になる物ありますか?」


 人影が揺れていた付近に立ち、投稿者(佐々木)が周囲に呼びかける。四個のランタンを並べて目印にし、十数人が並んで床面をしらみ潰しに調べていく。


 しかし、いくら調べ探しても、人が通れそうな穴など全く見つからない。もちろん、目視だけで探しているわけではない。棒を持ち、足下の岩を突きながら怪しいところがないかを探すのだ。


 何も成果が得られないまま進んでいくと、壁に行き当たる。こちらもひたすらバールなどで叩きながら調べてみるが、やはり何も見つからない。



『まさかとは思うが』


『幽霊⁉』



 どんなに探しても通路の一つも見つからないならば、どこも通っていないという結論にならざるをえない。

 しかし、今まで同じ場所に動かず倒れていたという線も薄い。それならばもっと早くに見つかっているはずだ。この地下空間が見つかってから数時間、その程度の捜索は既に済んでいる。


 改めて探してみても、人が隠れられるような穴も見つかっていない。そんな状態で思い浮かぶのは、人ならざる存在だろう。


「超常現象、ってのはあるかもしれないな」

「そんなことあります?」

「一条高校が消えたことは何だ? どうしたらそんなことが起きる?」


 消防士の意見も的外れでもない。一体何があれば学校が丸ごとひとつ消えてなくなってしまうのか。

 ミサイルや隕石が落ちてきたとしても瓦礫の山が地上に残る。


 もしも跡形もなく吹き飛ばすほどの破壊力の物が落ちてきたならば、周辺にも甚大な被害を及ぼしているはずである。


 半径八十メートルだけをきれいに消し飛ばす兵器など、少なくとも一般には知られてないない。


 そして、超常現象や怪奇現象であろうと、警察や消防には捜索しないという選択肢はない。とにかく手掛かりを求めて、わずかな痕跡でも見つけだそうもするのが彼らの仕事だ。


『実質的に成果ゼロ』


『体力の限界のため本日はここまで』


 そう締めて動画は終わった。

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