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3-4 笑うしかナイ


子ども向けの『絶滅した動物の本』に登場するのは?


日本ならニホンオオカミやエゾオオカミ、朱鷺ときかしら。外国の動物ではドートーと並んで私ども、リョコウバトが挙げられます。






「あれぇ?」


親子でしょうか。男の子が檻の前で立ち止まり、私をジッと見つめます。


「どうして一匹しかイナイの?」


鳥は一匹二匹ではナク、一羽二羽と数えます。忘れないでネ。


「あぁ、この鳥はね。」



私、有名なのでイロイロ語られます。何度も何度も繰り返し聞いたので、全て覚えてしまいましたわ。



「一羽で、寂しくないの?」


寂しいわよ。


「動物園の人に大切にされてるから、寂しくないのよ。」


決めつけないで!


「そっか。」


何が『そっか』よ。・・・・・・何よ。




私は最後の一羽。私が死んだら、リョコウバトは絶滅。絶滅よ、絶滅。


空を覆い尽くすかのように、三日間も飛び続けたリョコウバトが。羽音が雷鳴のように轟いた、リョコウバトが絶滅。



想像できますか?


何億羽ものリョコウバトが、一つの群れになって空を飛ぶ。羽を休めるために選んだ止まり木が、その重さに耐えきれずに折れるんですよ。



・・・・・・そんなに、いたのに・・・・・・。






「マーサだ。」


はい、マーサです。


「お母さん、どこ?」


居ません。


「お父さんは?」


居ません。


「居ないの?」


はい、居ません。



その手に持っているソレ、表紙の絵。どう見ても、アメリカバイソンよね。絶滅危惧種について書かれた本でしょう? 私の事も載ってますよ、きっと。



私ども同様、北アメリカで絶滅の道を辿った野生動物。


アメリカ開拓期の映画などに出てくる、ウシ科の動物。アメリカでは単にバッファローというと、アメリカバイソンを指すことが多いわね。



体長3m、体高1,8m、体重1,5t。毛色は黒褐色で、肩から胸の毛は長い。草食性なの。先住民と共存し、かつては数千万頭が北アメリカの草原に生息。


彼らも乱獲により、減少したのよ。




大陸西部へ移動する白人が毛皮を取り、肉を食べた。


ココまではヨシとしましょう。けれどスポーツとしての狩りを楽しむ間に、個体数が激減。



一時は絶滅も危惧されたケド、持ち直して良かったわ。






「どうして一羽しかイナイの?」


人類が、殺しまくったからよ。


「寂しくない?」



絶滅寸前なのは全て、人類の所為! なのに良く言えるわね、そんなコト。


・・・・・・ハァ、いけないイケナイ。この子は幼い。幼いけど、人類よね。



あぁイヤだ。


寂しくないかと問われるタビ、どす黒い何かが広がるの。史上最も多くの個体数を誇った鳥が、今では私一羽。私が死んだら絶滅よ、絶滅。



・・・・・・ハハッ。もう、笑うしかナイわ。


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