死ぬまで伝えられない
「よ、モテ男」
「水乃ちゃん?」
丁度、帰ろうとしていた所で水乃ちゃんに声をかけられた。
いつも通り僕の事を待っていてくれたんだろう。
「凪、また女の子振ったわね」
「何で知って……
いえ、もしかして見てましたか?」
「見てなくてもさすがに解るわよ」
「えっ……」
「ねぇ凪。
彼女、作らないの?」
「へ!?」
水乃ちゃんはどうして僕に彼女を作って欲しいのだろうか。
僕は水乃ちゃんの横を歩きながら考えてしまう。
「こんな事になるなら、彼女は作る気無いと広言するなり彼女作って虫除けしとかないと、今以上に大変な事になるわよ。
まったく、凪は只でさえ誰にでも優しくて女の子を変に期待させるんだから」
「む、虫除けですか」
「じゃないと確実に今以上に女の子が泣くわよ!」
「それでも、僕は軽い気持ちで応えて付き合うのは良くないと……」
「そう言う凪の誠実さは良い所だと思うけど、凪に告白して泣いた女の子達は殆ど私の所まで訴えに来てるわよ。
あの子達からしたら私が居るからフラレたんだそうよ」
「え、何でっ……」
「それは勿論、私が凪の幼馴染みだからよ」
「そんなっ……」
「私が凪の幼馴染みだから、凪の好きな子が私だと思ってるみたい」
その子達の言ってる事はあながち間違いでもないんだけど、何で周りにはバレてるんだろう。
僕、そんなに解りやすいかな。
水乃ちゃんは最後に「良い迷惑よね」と悲しげに呟く。
水乃ちゃんにとってその子達の言葉が良い迷惑って事は僕の想いも。
「水乃ちゃん……」
「女の子を無駄に悲しませちゃ駄目だって言ってるのよ」
「……僕、好きな子なら居ますよ」
「えっ……
本当に!?誰よ!?」
「……今は言いたく無いです」
「っっ!?
……何でよっ!?」
「まだ僕に自信が無いですから」
「もしかして、一生養ってく自信とかって言うの?」
「え、まぁ。水乃ちゃんは僕がそう想ってたら重いと、感じてしまいますか?」
「え、何で私に聞くのよ
私は、本当に好きな人に言われたら、多分嬉しいかもしれないけど。
でもあの子達からしたら重いのは確かよ!」
「そ、そうですか」
「……何なら凪が好きな子に告白するまで私が虫除けになってあげようか?」
「水乃ちゃん?」
「冗談よ、バーカ」
「えっ?」
「まったく、昔から意気地なしなんだから……」
呟く様に言われたその言葉は役にたたない僕に対する怒りを抑え込む様な、何かを諦めようとしている口振りだった。
水乃ちゃんは唐突に歩調を早め、先に行ってしまった。
そして僕は水乃ちゃんの表情が見れなくなってしまった。
「待って、ください
水乃ちゃん……」
水乃ちゃんからそんな事聞きたくなかった。
そんな諦めた様な、傷付いた様な表情で言って欲しくなかった。
僕の好きな人がこんなに泣きそうな表情で。
どうすれば、良いんだろう。
「水乃ちゃん、僕の好きな人は……」
今も昔もたった一人だけなんだ