島崎凪の目標(上)
あの日から僕は水乃ちゃんに頼られたくて、責任感のある男になりたくてクラスの出来る範囲から手伝いを始めた。
それから半年、僕は中学三年になっていた。
半年間頑張っていたおかげか、僕はクラス委員になっていて、今は担任の先生に呼ばれて職員室に来ていた。
最低限の礼儀としてのノックを二回、「失礼します」と言って扉を開くと、デスクの上に大量のプリントとノートを置いて待ってましたと言わんばかりの表情をした担任が居た。
その量は、明らかにプリントは1学年分、ノートは二学年分の量だった。
お疲れ様です、先生。
「来てくれたか島崎、早速で悪いんだがこっちのプリントの束を教室まで運んでくれないか」
「はい」
運ぶぐらいであれば、途中、落としたりさえしなければ面倒くさい事ではない
……が、そっちで良いんでしょうか。
少しノートの方が気になる。
一応即答はするけど。
「それにしても最近の島崎は変わったよな。
なんと言うかこう……どことなく丸くなったと言うか、物腰が柔らかくなったと言うか、大人っぽくなった感じが……」
「え?そ……そうですか?」
「何か目標でも出来たか?」
「目標は、そうですね。
小さな目標かもしれませんが、出来ました。
今はその一歩を踏んでいる所です」
「ほう?どんな目標か気になる……」
実は僕、水乃ちゃんに頼られる様な男になりたいんです。
……言えない。
言える訳が無い。
こんな恥ずかしい事。
考えるだけであまりにも自分の目標が誰かに言える様な物では無いと自覚し、 思わずと言った感じで顔が熱くなる。
あぁ、こんな時笑顔で誤魔化せる人が凄く羨ましい。
ほら、先生も何かを察したのか驚いて言葉が途切れてる。
「あー……聞いちゃまずかったか」
「じゃ、じゃあ!
プリント持って行きますね!
し、失礼します!」
僕は大慌てで先生の隣にあるプリントの束を持って職員室を飛び出た。
恥ずかしい。
恥ずかしくて走り出してしまいたいぐらいだ。
あまりに恥ずかしかったので教室に戻る途中少し小走りをしてしまい、通りかかった先生に「こらそこ!廊下は走るんじゃない!」と注意されてしまった。