道に迷った果て
道に迷ってやっと駅に着いた時には空も暗く、体力もヘトヘトだった。
最終電車に乗って夜遅くに最寄りの駅に着いたら水乃ちゃんのお母さんに迎えに来てもらい、先に水乃ちゃんの家まで。
おばさんが笑顔なのに背後のオーラがヤバい。
水乃ちゃんの家に着いた時、水乃ちゃんと共に既に明るい玄関の前に立つがどうやら水乃ちゃんは気まずいらしく扉を開こうとはせず、止まってしまった。
「な、凪」
「水乃ちゃん?」
よく見ると水乃ちゃんの足がぷるぷる震えてる。
「先に、玄関を開けて。私は凪の後ろから入るわ
つまり、この黒いオーラ全開の玄関が……この先の展開が怖いんだね。
仕方なく僕が扉を開くと玄関の明るい光が視界に入り込んで眠い目には刺激が強かったらしく、眩しさと痛みで思わず目を細めてしまう。
そして、鬼の様な雰囲気を纏った仁王立ち姿で無表情な水乃ちゃんのお父さんを見た途端、僕が固まってしまったのは言うまでもない。
そんな僕を見かねたのか、水乃ちゃんは前に出た。
僕を背に庇うような位置になってるのは、今の僕はきっと頼りないからなんだろう。
「た、ただいま」
「水乃、凪君、随分と遅い帰りじゃないか」
「仕方ないじゃない
初めて私達だけで行ったから迷ったのよ」
「仕方なくない!
全く、未成年がこんな時間まで」
「連絡したじゃん!」
「そういう問題じゃない!!」
水乃ちゃんとおじさんの口論が始まってしまった。
二人の間に割って入るのなんて怖いくて仕方ないけど、それでも元はと言えば僕が悪いんだし、言っておかないと。
「あ、あの。おじさん、実は僕が道を間違えて……それで
「凪君、君にこんな事言うのもどうかと思うが、水乃はこれでも一応一人娘なんだ
あまり遅くなるのは「ちょっ!!
凪は悪くなんかないわよ!
そもそも私一人じゃ危ないからって女友達か凪ならって条件だった筈でしょう!?」
「むしろ凪君と二人きりだから危ないとか思わなかったのか!」
「はぁ!?何それ訳わかんない!!
なら何で凪なら良いって言ったのよ!!」
「凪君がお前に手を出す訳がないだろう!!」
「そう思うなら尚更怒る理由無いでしょう!?」
「それでも心配になるのが親心ってやつだ!!」
「何が親心よ!!もう言ってる事滅茶苦茶じゃない!!」
どうしよう、僕にはおじさんが何を言いたいのかが少しだけ解ってしまった。
僕と水乃ちゃんが二人きりってのがどれだけ頼りない組み合わせなのか考えてなかった。
道に迷ったのなんか、事前に調べておけば良かった。
僕たちが誰かに絡まれたりなんかしてたら、今の頼りない僕じゃ水乃ちゃんを助ける事もきっと満足に出来ない。
僕にもっと責任感があれば……。
「あ、あの……」
「凪君、あの二人の事は放っておきなさい」
「おばさん」
「あの人は単に心配させた事を怒りたいだけなのよ」
「すみません、僕がもっと道や時間を調べておかなかったばかりに……」
「良いのよ、どうせ水乃の我儘に付き合ってくれてたんでしょう?
いつもそうだったものね」
「あの、おばさん」
「あら、何かしら凪君」
「どうして、僕と一緒ならって条件を出したんですか?」
「え?あぁ、ほら凪君は水乃と幼なじみだし、仲も良いみたいだから」
「……そうですか」
もう一度二人の間に入ろうとすると、おばさんにやんわりと止められた。
調べ物や時間分配もそうだが、もっと周りを見ておけば良かったのかもしれない。
そう思っておばさんにもう一度謝る。
しかし、おばさんは「別に良いのよ」と言うばかり。
ついでに条件の事を話せば、おばさんは誤魔化して果てには笑ってしまっていた。
そして、玄関で口論を続ける二人をそのままに、「凪君の家まで送るわね」と微笑んだ。
おばさんもおじさんも僕が水乃ちゃんに何かをするなんて疑いもしてなかった。
これは、何だろう。
信頼というより……
いや、考えるのは止めよう。