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5.エドは危機管理抜群

 

 しばらくは、縄にぶら下がるエドの可愛さを眺めていたけれど――

 エドの「手伝って!」と言いたげな、これもかわいい視線に気付いて、わたしが取っ手に近い部分をひと噛みして、縄を引く。

 あっさりと扉が閉じた……


 扉から離れてホッとしていると、エドが元の姿に戻りました。裸で!

 彼は視点が子犬の低さから青年の四つん這いの高さになった事で、ハッとした表情になり慌てて部屋の奥、自分の執務机に向かって走り出します。


 急に男性の裸を見ることになったわたしも動揺しますが、犬ですから表情には表われません。


 エドは下腹部を手で覆いながら奥に向かうので、臀部が丸見えでした……

 かわ――たくましいお尻!


「オ、オリヴィーは向こうを向いていてくれないか?」


 白い大型犬のわたしに、違和感無くオリヴィーと名を呼んで下さいます。


 エドは着替えを用意していたようで、執務机の椅子の陰に隠れながら、いそいそと服を着込んでいます。

 取っ手に縄まで括りつけた避難場所や着替えを用意しているなんて……エドは凄いわ。


 エドが着替えを終えるかといったその時、今度は感心しながら彼を見ているだけだったわたしの変身が解けてしまった!


 ああ! わたしも裸ぁ!


「キャッ!」


 あわてて応接ソファの後ろに回り込むけれど……エドに見られたかしら?

 ソファの陰から下着とペチコートに手を伸ばしながら、恐る恐るエドの方を見ると……

 シャツのボタンを留めようとしたまま、こっちを向いている!

 目が合ってるっ!

 彼は口を「あわわ」とパクパクさせて、すぐに目を逸らしました。

 胸は隠せていたとは思うけれど……見られていたでしょうね……


 なんとか下着とペチコートは取れたけれど……

 問題は上半身よ! 今は下半身の下着しか無いの! どうしましょう!


「オリヴィー! これを!」


 エドの声がしたので、ソファの背もたれの陰から頭だけを出して覗くと、宙にひらひらとバスローブが見えて、私の方に飛んで向かってきていた。


「予備で用意していたんだ。オリヴィーが使って!」


 予備にバスローブまで備えているなんて……エド、貴方は凄いわ!


「ありがとう!」



 男性用の大きなバスローブを纏って下着を穿くと、多少羞恥心が薄れたのでソファに座らせてもらって……

 エドは執務机に着いて、気まずそうにしている。


「まさか、エドもワンちゃんになるとは知りませんでした」

「僕もだよ。君があんなに大きな犬になるんて!」


 大きくて悪うございました。

 頬でも膨らまそうかと思ったけれど、ここまでエドの首根っこを咥えて連れてきたことを思い出した!


「それより、エド! 貴方を……その……乱暴な運び方をして……ごめんなさい!」

「えっ? あ、ああ!」


 彼は一瞬驚いたけれど、すぐに手を振って否定する。


「いやいや、従者に抱えられて逃げることになると思っていたら、まさかオリヴィーに――それも大きな犬の姿で、連れて行かれるとは考えてもみなかったけれど、首根っこを咥えられてかえって安心感を覚えたよ」


 彼はそう言ってくれると、何故だか急に顔を赤らめて続ける。


「それに……君の香りに包まれて、幸せな気分だったよ……」


 フイッと目を逸らされた。

 ん? 私の香り?

 (よだれ)? それは無いわ。だってエドをわたしの下着で包……


「下着っ!?」


 エドは耳まで真っ赤になってるし!

 わたしも、エドを下着でくるんでしまったと認識したら、急に恥ずかしくなってしまう……顔の温度がみるみる上がっていくわ。


 エドって変態? いいえ、エドを包んだのは私だもん、変態ではないか……

 でも、ここで言わなくても……でも、今は二人きりだからいいのか……


 いずれにせよ、この話は恥ずかし過ぎるわ!


 咳払いをして、話題を変える。


「エドは、お酒が原因――と言いますか、契機だとご存知で?」

「ああ。知っている」


「それなのにわたしを庇って下さって……」

「そ、それは当然だろ? 愛するオリヴィーを守るのは」


 エドぉ~! 素敵!


 エドのストレートな物言いに、また顔が熱くなってくる……たぶん真っ赤になっているわね。


「エ、エドはいつから?」

「ひと月ほど前かな……」

「ひと月っ!? 」


 思わず声に出しちゃった! わたしは六年前なのに、ひと月前?


「あ、ああ。初めての酒は父――陛下と、って決めていてね……その時に」


 彼は、陛下と二人きりで成人の祝い酒を飲んだそうで、その時に初めて犬に変身してしまったそう……


「それ以前は?」

「それ以前は、酒は飲んでいなかった。悪巧みをするような学友もいなかったしね」


「では、いつからそうなっていたとかは分からないのですね?」

「いつから? か……。そんな考えは無かったな。今まで『ひと月前から』としか考えていなかったよ」


 そう言ってエドは口に手を当てて考えていたけれど、ふいにわたしに話を振る。


「オリヴィーは?」


 ドキッ!


 六年です。なんて言ったら……引かれるだろうし、「どうして黙っていた!」なんて言われかねないわ……

 わたしがどう答えたものか逡巡(しゅんじゅん)していると、エドは言葉を続ける。


「それにしても、君と僕が“同じ”問題を抱えていたとは……」


 同じではありません!

 犬は犬でも、エドはかわいい子犬! わたしは大型犬の成犬ですよ?

 でも、やっぱり犬は犬よね……


「……これからどうしましょう?」


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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