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21.天文現象

 

「もし呪術に掛けられた人間が健在ならば、解こうか?」

「え? やってくれるのですか?」


 翁の方から提案してくれるなんて……


「さっきも言ったが、強制されてやったことじゃ……。救い出された今、術を解くのは当然じゃ」

「ありがとう! 助かるわ!」

「――ただし」

「ただし?」

「一度施した術を完全に消す方法はまだ知らんので、術を“移す”方法を行おう」


 解消する方法がない中で、呪術を行使したってことなの? ……怖い!

 でも、移すことでわたし達は不安から解放されるのね? 


 そして翁は“移す”寄り代として、なんでもいいから人形を用意する事と、他に必要な物を数点教えてくれた。

 それさえあれば、いつでも――明日にでも出来るそう。


「分かったわ! 準備するからお願いするわ。今日はゆっくり休んでね」



 思わぬ収穫に、エドとわたしは母屋に戻ってから喜びを分かち合った。


「オリヴィー! やったね!」

「エド! 望外の進展ね?」



 今日は陛下はいらしていないけれど、緊急かつ重大な進展なので、報告の為にお父様を伴ってエドと共に王宮へ向かう。

 まずは王太子宮殿に入り、陛下に面会許可を請う先触れを送ると、陛下の方からいらして下さった。


「もうニ、三日中にでも起こる天文現象の影響に備える為に、王城内は騎士や文官が忙しなく出入りしておるし、私のいる王宮も警備が強化されて騒がしくなっておるからな」


 そう言えば、この王太子宮殿も外の警備が普段よりも厳重になっていたわね。重装備の騎士が多かったし……


「学園でも習いましたけど、今回の天文現象とは、それほどまでに警戒すべきものなのですか?」


 ◆◆◆


 我々の住むこの星――アーカス――は、自らも回転しているだけでなく、太陽という“強く燃えて光りを放つ巨大な星”を中心に周っている。


 そして、アーカスを中心に三つ、正確には双子の星とそれよりやや大きい単体の星が周っている。

 双子の星は一定の距離を保って一緒にアーカスを周り、単体の星は異なる軌道を描いてアーカスを周る。


 その三つの星を総じて“(つき)”と呼び、それぞれ双子の方を“双月(そうげつ)”、単体の方を“珠月(しゅげつ)”と呼び分けている。

 単体の星を“珠月”と呼ぶ理由は、太陽の光を浴びたその星のほんのりと赤い煌きが宝石のように見えることから、太古の人類によってそう名付けられた。地表に赤い鉱石もしくは宝石が散在しているのではないかと考えられている。


 “天文現象”とは、主に双月と珠月が直列に並ぶ事や太陽と月とアーカスの間で起こる(しょく)の事を指す。

 前者には珠月が双月の外側に等間隔に並んで見える“(とう)直列”、珠月が双月の間に入って隙間なく並んでいるように見える“(みつ)直列”がある。

 密直列には更に、珠月が手前にあって直列に見えるのか((せい)密直列)、奥にあって直列に見えるのか(()密直列)がある。


 プレアデン王国には、『星の位置を何らかの文様と見做し、それと地上で起こる出来事の関連を調査・観測・予測する』国家占星官と呼ばれる占星術士の組織がある。

 彼らは国に仕えて、過去の伝承や文献を調査し、現在の星の位置や変化を観測・記録し、暦や将来起こり得る事象を占う。


 ◆◆◆


 わたしの問いに、陛下は悩ましげに息を吐いてお答えくださる。


「うむ。占星官長によれば、今回は直列の中では特に珍しい“負密直列”であり、且つそれが太陽と重なる“日蝕”だそうで、我が国の観測史上初で伝承に照らしても数千年に一度の事態だから、何が起こるか予測も出来ないそうなのだ」


 陛下のお言葉のほとんどが、わたしにとって実感の無い事柄です。

 というのも、わたしやエドが生まれた年に“等直列”があって以降、一度も天文現象は観測されていないのですから……


 学園の授業で開いた教科書には――

 吉兆を示す“文様”もあるものの、なかには凶報をもたらすものもあると書かれていましたっけ。

 特に“蝕”に関する物は、大抵が凶報だった記憶があります……

 気象の急変・乱変、大きなものだと地殻の変動。動物達の気性が荒くなる等の変容。

 そして、普段は森の奥深くや高山、地下洞窟などに姿を隠し、我々人間社会との住み分けが出来ている魔物の凶暴化などなどが挙げられます。



「このような時期に、私事で役に立たないばかりか陛下のお手を煩わせること、誠に申し訳ありません」


 エドが陛下に頭を下げるのに、わたしも合わせる。

 この二か月、この対応もあるのに、エドと私の為にシド達や兵士達という人員を割いて下さったのですから、いつか陛下に報いなければ……


「よいよい。いずれにしろエドワードとオリヴィア嬢の件は大っぴらには出来ない事案であるから、それほど影響は無い。であるから、天文現象への対応は我らに任せておけ」

「はい。呪術の問題が解決し次第職務に復帰し、陛下を全力でお支え致します」


「うむ。――そうだ、今日来たのは、お前達の報告を受ける為であったな! 何があった?」


 そうでした!

 わたしとエドは、互いに視線を交わして頷くと、キアオラ翁から解呪の約束を取りつけたことを報告し、その手筈を共有する。


お読み頂きありがとうございます。

長編小説です。

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