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「北方の玄関口」――エトラス王国において遂に戦いは始まった。

 その始まりを告げたとされる、爆発を起こした矢を放ったのは、多国籍軍の中でこの地――エトラス王国軍に所属している弓使いである。

 名は、フォーチャー。

 流れる金髪を持つエルフの男性。

 エルフということで実年齢と外見は違うが、少なくとも二十代に見える。

 フォーチャーは、エトラス王国で英雄と称されるほどの人格者であり、かつ実力も伴っていた。

 冒険者の最高峰であるSランク並の力を持っており、エトラス王国内における最強の一角である。

 要は、個人で魔族を倒しうる力を持っている、ということだ。

 倒れた最後尾の者を救う多国籍軍の援護を行うため、フォーチャーは誰もが見惚れるような綺麗な動きで弓矢を構え、放つ。

 放たれた矢の鏃は、先ほどと同じく加工された魔石。

 最後尾の者を、その場に辿り着いた多国籍軍を殺ろうとしていた鬼の魔物――オーガの心臓部分を貫き、その先で爆発を起こす。

 それでとまるのは、魔族と魔物の軍勢のほんの一部だけ。

 他は前へ前へと動いたままで、襲いかかる魔物は他にも居る。

 しかし、フォーチャーの次射は既に放たれていた。

 狙いも正確であり、最後尾の者、それとその救助にあたろうとしている多国籍軍を狙った魔物は、フォーチャーの矢によって射殺、あるいは爆死していく。

 そうしている間に最後尾の者は救出され、多国籍軍と魔族と魔物の軍勢は本格的に衝突する。


「はあああああっ! 斬る! 斬るぅ!」


「ガアアアッ! グワアッ!」


「やってやる! やられる前にやってやる!」


「ゴガッ! ボッボッ!」


「ぐぅ……おのれ、魔族が……負けん!」


「はははははっ! 愚かな人族共が! 崇高で偉大な魔族の力を思い知るがいい!」


 どちらも前に出続けている状態での衝突であるため、この場は一気に混戦の様相を呈する。

 人が、魔物が、戦いを始めて倒れていく。

 多国籍軍は、ここを死守してここから先にあるモノを守るため。

 魔族と魔物の軍勢は、ここを通ってその先にあるすべてを蹂躙するため。

 それでも比較的押しているのは、多国籍軍の方であった。

 その理由として最も挙げられるのは、この場所だ。

 戦場となった経路は、そこまで幅広いという訳ではない。

 馬車であれば、精々横に四台並べられるくらいである。

 いや、普通の道としての基準であれば広い方だが、それでもこの場で多数対多数で戦うとなると、どうしても手狭と感じるだろう。

 何より、魔物の方は人よりも体格が大きい――巨大な魔物も存在している。

 しかし、一体でここを埋め尽くすほどの大きさの魔物は居ないため、場合によっては単に場所を大きく取っているだけでしかなく、その分、他の魔物が入ってくることができなくなっていた。

 力と数で一気に押し切ってきた魔族と魔物の軍勢にとって、ここはその数を活かせない場所だと言ってもいい。

 寧ろ、一定範囲内で戦闘を行っている数は、多国籍軍の方が多かった。

 ただし、それで押し切れるほど、魔族と魔物の軍勢は甘くない。

 元より個で比べれば魔族と魔物の軍勢の方に軍配は上がる――というだけではなく、多国籍軍が数多の国軍が集まっているのと似たようなモノで、魔物にも多種多様性があるのだ。


「上だっ! 上に気を付けろ!」


 戦闘中の騎士の一人が、注目を集めるように大声で告げる。

 魔族と魔物の軍勢の上空――飛行することができる魔物が姿を現わしたのを、視界の端で捉えたのだ。

 事実。鳥類や蜂といった、羽を持つ系統の魔物が戦場に向けて飛来してくる。

 人は飛べない。

 飛行魔法はあるが、それはどちらかと言えば魔族の方の専売特許。

 使い手が居ない訳ではないが、少なくともこの場の多国籍軍の中には居なかった。

 現状は多国籍軍が押しているが、制空権を取られてしまうと、状況は間違いなく一変する。


「矢を! 魔法を! なんでもいいから落とせ!」


「上を取らせるな! 落とせ! 落とせ! 落とせ!」


「逃げる魔物は野良だ! 逃げない魔物は軍勢だ!」


 多国籍軍の後方――この場における後方から、矢と魔法が雨のように降り注がれる。

 狙いはもちろん、飛来しようとしてきている飛行型の魔物に向けて、だ。

 しかし、その効果はどちらかと言えば薄いと言える。

 大抵の場合、一撃でやられることはなく、また、今回は数も多い。

 群れで飛来してきているようなモノだ。

 また、どちらかと言えばこれは多国籍軍の方が後手に回ってしまったようなモノであるため、多少落とすことができたとしても、戦闘中となっている場所の上空まで到達する飛行型の魔物の数はそれなりに多かった。

 こうなってくると、後方は下手に手を出せない。

 何しろ、矢や魔法が飛行型の魔物に当たらなければ、それは地面に向かう。

 そこは戦闘中なのだ。

 敵に当たるならまだしも、味方に当たる可能性も充分にある。

 そのため、戦闘中の上空に辿り着かれてしまうと、迂闊に攻撃できない……普通は。


「グギャアッ! ギャギャア!」


 もらった! とでも言いたげに、人と同程度の大きさを持ち、鋭い鉤爪を持つ鳥型の魔物が地上で戦っている多国籍軍の兵士に向けて襲いかかる。

 多国籍軍の兵士は――気付いていない。

 死角からの奇襲であった。

 それに気付いた別の兵士が声をかけようとするが、そこにやり合っていた魔物から猛攻が繰り出され、声を出すのが遅れてしまう。

 別の兵士が間に合わない――と思った瞬間、鏃が魔石の矢が一瞬の内に駆け抜け、襲いかかろうとしている鳥型の魔物の頭部に突き刺さり、爆発ではなくその身が炎に包まれる。


「グ、グギャア……」


 力のない声を上げ、鳥型の魔物は落ちる。

 射ったのは、フォーチャー。


「……」


 フォーチャーは特に言葉を発することもなく、後方から飛び出して戦場の中を一気に駆け抜けていく。

 図体の大きな鬼の魔物――オーガを視界に捉えるのと、フォーチャーはオーガの大きな体躯を駆け上がり、空中に向けて飛び上がる。

 といっても、そこまで大きく飛び上がった訳ではなかった。

 多国籍軍後方からは未だ矢と魔法は放たれ続けており、弾幕と言っていい数が通り過ぎている高さまでは到達していない。

 それで充分なのだ。

 飛行型の魔物がよく見える開けた視界が確保できたのだから。


「……ふっ」


 短い呼吸と共に、フォーチャーの射る正確無比な矢が蜂型の魔物を数体貫く。

 そんなフォーチャーに大きな危険性を抱いたのか、鳥型の魔物たちが襲いかかる――が、それはフォーチャーにとって狙い通りであった。

 フォーチャーは突っ込んでくる鳥型の魔物たちの先頭の一体を、矢を射る反動を利用して姿勢を動かし、受け流すように回避する。

 放たれた矢は、突っ込んできていた鳥型の魔物たちの一体を燃やし落とす。

 フォーチャーの行動はまだとまっていない。

 先頭の一体の突進を受け流すのと同時に、次いで突っ込んでいた鳥型の魔物を踏み台にして、もう一度跳躍。

 ついでとばかりに体を回転させながら、連続して矢を射る。

 それで突っ込んできた鳥型の魔物たちはすべて燃え落ちていく。

 そうして跳躍したフォーチャーは、その先で似たようなことを行い、今度は蜂型の魔物たちを一掃。

 もう二度繰り返し、それで多国籍軍の弾幕を抜けた飛行型の魔物の大部分は落とした。

 地に下りるフォーチャー。

 そこに、先ほど踏み台にされたオーガが、怒り狂いながら襲いかかる。


「ガアアアアアッ!」


「……」


 煩い、と眉間に皺を寄せるフォーチャー。

 弓矢は構えない。

 既に遠距離ではなく近距離であるからだ。

 代わりに、矢を一本、短剣のように手に持つ。


「アアッ!」


 怒り狂っているオーガの、人の頭部よりも大きな拳がフォーチャーに向けて放たれる。

 怪力と速度。

 その二つが揃ったオーガの拳は、盾で受けようとも盾が粉砕されるか、盾ごと己が粉砕されるかのどちらかだろう。

 ただし、それは当たれば、である。

 怒り狂っているオーガの拳は直線的な動きであり、いくら速度があろうとも、フォーチャーからすれば避けるのは容易であった。

 フォーチャーはかわすのと同時に、怒り狂っているオーガの手首を鏃で傷付ける。

 傷付けられた痛みに表情が歪むオーガ。

 フォーチャーにとってそれは明確な隙であった。

 オーガの背後に回ってその背を駆け上がり、鏃で首を裂き、そのまま目に突き刺すと、フォーチャーはオーガの体を蹴って距離を取る。

 瞬間、オーガの頭部が爆散し、頭部を失った体は崩れ落ちた。

 しかし、これで終わりではない。

 多国籍軍と、魔族と魔物の軍勢の戦いは、何も終わっていない。

 始まったばかりなのだ。

 魔物を一体倒しても、次の魔物が出てくるだけ。


「………………はあ」


 やれやれ。面倒だな。と言わんばかりに息を吐くフォージャー。

 けれど、その目に、その体に――戦意は一切失っていない。

 即座に弓矢を構え、新たに現れる魔物に向けて射る。

 その後もフォージャーは戦場の中を前衛後衛問わずに縦横無尽に動き続けて、時に騎士や兵士を助け、時に自らと、多国籍軍と共に魔物を次々と倒していった。

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[気になる点] 誤字。 群像劇。 ワンパターン。 話がくどい。 [一言] モブの話ばかりでつまらん。 主人公不在でも楽しめるのは書き手だけ。
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