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あの願いを叶えるために  作者: ナハァト
プロローグ
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プロローグ

どうも、ナハァトです。

新しいの始めました。

楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

 夜空。煌めく星々が降り注ぐ。

 上から下へ。やまない流星群の輝きがすべてを照らす。

 流星群を構成する星々の中から一つの星が、招かれるように軌道を変えて落ちていく。


 落ちていった先は――白磁のような大地。

 勢いのままに衝突するが、星は砕けず、大地に優しく受けとめられる。


 星はそのまま人のような姿を形作り、立ち上がった。

 二十代半ばの男性。

 男性は不思議そうに周囲の様子を窺う。


「……ここは一体?」


「目覚めたようですね、『ヴェルドゥス』を救う救世主よ」


 まさか返しが来ると思っていなかったのか、男性は少しだけ驚いたあと、警戒するように周囲を窺う。

 しかし、周囲に人の影は見当たらない。

 男性以外が居ない事は、男性が一番よくわかっていた。


 幻聴か? と首を傾げる男性に、更に声がかけられる。


「ふふ……上をご覧ください」


 言われるままに男性は上を見て、驚きで固まる。

 そこにあったのは、彫刻として後世に残されてもおかしくないと思えるほどに、非常に整った女性の顔。


 ただし、その大きさがおかしい。

 巨大。ただただ巨大。

 どうにか男性は視界内に収める事ができているが、それほどの大きさの顔であった。


 そこで男性は気付く。

 自分が立っている場所に。


 大地ではなかった。

 そうだと認識してみれば、何故今まで気付かなかったのかと問いたくなる気持ちを、男性は抱く。


 男性が立っているのは、巨大な手のひらの上だった。

 その手の持ち主は、当然のように巨大な女性。


 桃色の長髪が水中のように常に揺れ動き、顔立ちと同じく彫刻品のように均整のとれた体付きは白いローブに包まれ、羽衣のようなモノを纏っている。


「……どう考えても現実的ではない。つまり、俗に言う死後というヤツか」


「理解が速くて助かります。その通り、あなたは既に元の世界では死亡しています。ここは言うなれば世界の境目。神の世界の一部。空に輝く星々は万物の魂です」


「……魂、ね。俺がこうしてここに居るのは、さしずめ選ばれたという事か? 救世主、と言っていたようだし」


「本当に理解が速くて助かります。まさしくその通りです。私の管轄する世界の一つ、『ヴェルドゥス』を救って欲しいのです。そのために、魂の力が強い者……つまり、あなたを選ばせていただきました」


「魂の力というのはよくわからないが……」


 そこで男性は、熟考するように顎に手を当て、実際に少しだけ考えてから口を開く。


「いくつか確認したい事がある」


「それは当然ですね。あなたの死因ですが」


「それはどうでもいい。死んだあとにどう死んだかを聞いたところで意味がない。知る必要があるのは、これから先の事だ」


「は、はあ……」


「一つの世界を救えというが、具体的に何をどうすればいい?」


「は、はい。『ヴェルドゥス』は、所謂剣と魔法の世界。魔物という存在が当たり前のように存在していますが、それもその世界を構成する一部ですので切り離す事はできません」


「ありがち……まあ、要するに危険な世界で、その魔物をすべて殺せ……という訳ではないな。世界を構成する一部なら、それは世界にとって必要な事だ」


「その通りです。中には魔物と共生している存在も居ますので、すべてが悪という訳ではありません。あなたに『ヴェルドゥス』でやって欲しい事は、大きく崩れそうになっている世界のバランスを元に戻して欲しいのです」


 どういう事だ? と男性は首を傾げて先を促す。


「現在、『ヴェルドゥス』は、人類と、突然現出した魔族と呼ばれる特異的な存在との間で戦争が起こっています。その影響で生態が乱れに乱れ、突発的に突然変異が出現したり、普段は大人しい魔物が急に大きな力を得て暴れ出したりと、異常と呼べる出来事が起きています」


「つまり、その魔族と呼ばれる者たちを倒せばいいと言う事か?」


「はい。魔族という存在が、『ヴェルドゥス』に悪影響を与えています。それこそ、魔族を束ねる魔王という存在は、世界そのものを破壊しかねないほどの力を有しています」


「個人で世界を破壊とは……随分と大物のようだ。という事は、その魔王を倒せばいいのか?」


「それもそうですが、できれば魔族という存在や、世界に起きている異常の原因も解明していただければ、と」


 そっちは面倒だな、と思いつつ、男性は浮かんだ疑問をぶつける。


「今更な話だが、あなたは神……女神という事でいいのか?」


「はい。その認識で間違っていません」


「神というのなら、万能なのだろう? なら、その万能性をもって世界を救えば……ああ、これもアレか。神は世界に干渉していけないとか、そういうルールのようなモノがある訳か」


「驚くほどに理解が速いですね。助かります。正確には、下手に干渉はできない、というところでしょうか。影響が大き過ぎて何が起こるのか、神ですらわかりませんから」


 やはりな、と男性は思いながら、思考を進める。

 これまでに得た情報を纏めつつ、口を開く。


「……拒否する事はできるのか?」


「はい。残念ですが、そういう選択を取られる事も覚悟しています。できれば、受けて欲しいですが」


「それは何故? と聞いても」


「もっとも強い魂の力を選んだ結果が、あなただからです。この場合であれば、身に付ける強さだけではなく、何かを成し遂げる力がもっとも強い、といった感じでしょうか」


 そう言われても、と男性はピンときておらず、わからないモノはわからない、とスルーする事にした。

 選ばれるだけの理由が、向こうにはあったのだろうと思って。


「わかった。受けてもいい。ただし、世界を救うとなると相当な事だ。相応の見返りはあるのか?」


「もちろんです。世界救済を成し遂げれば、なんでも願いを叶えましょう」


 言質は取った、と男性は内心で喜ぶ。

 なんでもというのなら、と男性には強い願いがあった。

 それこそ、叶うのなら、何がなんでも成し遂げてみせる、と確固たる決意をもって行動できるくらいに。


「なら、願いはある。だが、受けると決めた以上、それとは別に聞いておきたい事がある。その世界救済には直ぐ向かわないといけないのか? たとえば、ここに居る間は時間を気にしなくていいのなら、その世界の情報を得たり、納得するまで自らを鍛えたりとしたいのだが? 危険な世界である以上、できるだけ万全を期したい」


「わかりました。そうですね……人の感覚で言えば、数年くらいであれば出発を遅らせられますが、それで構いませんか?」


「充分かどうかはわからないが、できる範囲でやるだけだ」


「もちろん、こちらもできる限りのサポートはさせていただきます。言葉などもそうですし、年齢も今より若くといった事も。ですので、そういった事は気にしなくて構いません。他にもいくつかこちらでスキルを付与して調整します」


 とりあえず、便利なモノだ、と男性は受け入れる事にした。

 男性の様子を見て、女神は内心で胸を撫で下ろす。

 断られる可能性があった以上、男性が受けてくれたのは喜ばしい事だった。


 女神は安堵の笑みを浮かべて尋ねる。


「それで、願いは決まっているようでしたが、どういった願いでしょうか?」


「もう言っておいた方がいいのか?」


「こちらにも準備というモノがありますので、事前に聞いておいた方がいいかと」


「……それもそうか。では、俺の願いだが……」


 男性が女神に願いを伝える。

 願いを聞いた女神は……困惑した。


「ええと……」


「不可能か?」


「いえ、こちらのワガママを聞いてもらう以上、その願いを叶えたいと思います。他の神にも相談して、どうにか……」


「よろしく頼む」


 男性は心の底から願いであるように、綺麗に頭を下げた。


「それではあと一つだけ。これから向かうのは、あなたにとって異世界です。言ってみれば、第二の人生を歩むと言えます。これからあなたの事をなんとお呼びすれば?」


「そうだな……二度目の人生……二度……ニド……ニト……よし。『ニト』と呼んでくれ」


     ―――


 そして、時間制限があるのなら迷う時間も惜しいと修行を始める。

 ここは神界。

 師匠となるべき存在は選り取り見取りである。


「だが、武器だけが使えても、その武器がなくなってしまえば危機的状況だ。だからこそ、武器をなくしても戦える手段……肉体の強化と格闘術を徹底的に習いたい」


 ニトはそう判断した。

 なので――。


「よかろう! 弟子入りを許可する!」


 精悍な顔立ちで鍛え抜かれた体を持つ道着姿の男性が、腕組みでニトを迎え入れた。

 これが、ニトの師となる武神である。


修行舞台製作クリエイト・ワールド!」


 武神が拳を高々と突き上げると同時に叫ぶと、小さな道場がニョキッと生えるように現れる。


「ここで修行を行う! ついてこれるか!」


「はい、いや、押忍」


「いいか? 今のキサマは魂だけの存在。本来は疲労という概念はないが、精神力は消耗していき、それが疲労のような形で現れる」


「つまり、肉体的な疲れはないが、精神的な疲れはある、ということか?」


「そういうことだ。その時はきちんと休むように。過負荷は効率が悪い」


「わかった」


「だが、それは裏を返せば精神力がある限りはどこまでも鍛え続けられるということだ! 私の修行は厳しいぞ! ついてこられるか!」


「押忍!」


 そうして、武神の手ほどきを受ける修行が始まり……二十四時間後。


「まだまだいけるかっ!」


「押忍!」


 さらに約百六十八時間後。


「大丈夫か!」


「押忍!」


 ……さらに約七百二十時間後。


「……そろそろ休もうでは」


「大丈夫! 続けます! 押忍!」


 ……さらに約二千百六十時間後。


「………………一回くらい休m」


「まだまだいける! 押忍!」


「いや、私の方が休みたいのだが」


「まだまだ疲労を感じないから続けよう!」


「精神力の化け物か! お前!」


「願い成就のためなら、いくらでも頑張れる!」


 そうして、時間限界までニトは武神が引くほど修行し続け、他の神からも手ほどきを受けて引かれるくらい強くなったあと、女神が言っていたように年若い姿となって、異世界「ヴェルドゥス」へと出発する。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ツカミはOK (o^-')b [気になる点] 「そうだな……二度目の人生……二度……ニド……ニト……よし。『ニト』と呼んでくれ」 女神「名前選び失敗したのじゃくて?」 ニト「えっ?」 …
[一言] あぁ!!待ってました!! これから楽しみだわー!!!
[一言] 新しいのが追加されないかといつも作品一覧を見てました。今回の作品はこの者のちにみたいに主人公最強のタグがありましたので、とても楽しみです。
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