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Living Dead Lady 〜死体令嬢は死霊魔術師をひざまずかせたい~  作者: 貴様 二太郎
本編

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23/44

23.死体令嬢は覚醒する

「たしかに。この石、ただの上質な宝石ってわけじゃねぇみたいだな。あり得ねぇくらいの魔力がこめられてやがる。ラーラが会ったってヤツ……もしかしたら、本当にもしかするかもな」


 わー、なんかめっちゃファンタジーなこと言ってる。そっか、やっぱただのきれいな石じゃないんだ。レナートもうなってるし、グリモリオくん、やっぱり本当に本物っぽい?

 なんてことを思いながら、返してもらった石をポケットにしまう。


「というわけで、私はエルバを絶対に成仏させることにしたから! じゃ、これからちょっと町の音拾ってみるね」

「今からか? あんま無理すんなよ」

「だいじょーぶ。だって私、死体ですから! 寝なくても平気だしー。あ、レナートは気にしないで寝ていいよ」


 ちゃんと寝ていいよって言ったのに。レナートってば、なーんか不満そうな顔。別にうるさくとかしないよ。……たぶん。それにどうせ私は寝れないんだから、気にすることないのに。

 とりあえず不満顔のレナートは置いといて。集中して耳を澄ます。エルバの声を探す。


『もし、そこの御方。つかぬことをお伺いいたしますが……わたくしの体を、ご存じありませんか?』


 いた! エルバだ‼ あーあ、またホラーな聞き方してる。ほら~、相手の人すっごい悲鳴あげて逃げちゃったじゃん。

 それを聞きつけたのか、巡回してたっぽい騎士の人たちが駆けつけてきちゃった。

 これじゃ無理かなぁ。今からそこに行っても、騎士の人にしか会えないじゃん。エルバもびっくりしたのか消えちゃったっぽいし。


「エルバぁ……こう、もうちょっと、こう」


 とはいえ、時間なくて私の状況全然伝えられなかったからなぁ。エルバもよくわからないまま私のこと探してるんだろうけど、どうしよう。どうしたらカタリナに気づかれないでエルバに会える?

 そのあとはエルバ、全然現れなくて。そのまま朝になっちゃった。


「ラーラ。食堂行くけど、おまえどうする?」

「ん~、私はいいや」


 どうせ食べらんないし。それに今はもう噂話とかじゃなくて、エルバ本人を探さなきゃだし。


「なあ、ほんとに無理すんなよ」

「わかってるって。私は大丈夫だから、レナートは食べておいでよ」


 もー、無理とか大丈夫だってば。すでに死んじゃってるんだから、これ以上死なないっての。疲れないし、何を心配してるんだろ?

 レナートはまだなんか言いたそうな顔してけど、結局はしぶしぶって感じで食堂へ降りてった。

 さ、私は集中集中。いつ、どこにエルバが出てくるかわかんないからね。

 目を閉じ、耳に意識を集中する。いらない音をシャットアウトして、エルバの声を探す、探す、探す――――


「おい! いい加減にしろ、ラーラ‼」


 いきなり肩を掴まれてびっくりして振り返ったら、めちゃくちゃ不機嫌なレナートの顔があった。


「おまえ、いくらなんでもやりすぎだ」


 探し始めたときは明るかった外が、今はオレンジになってた。


「焦んのはわかんなくねぇけど、こんなんじゃもたねぇ」

「だって……」


 私は大丈夫だって言ってるのに。なんで止めるの? だって、早く見つけなきゃ。あっちの私の体だってどうなってるかわかんないし、早く帰らなきゃ――


「だってじゃねぇ‼」


 怒鳴られた! なんか、すっごい怒ってる。……怒ってる? ていうより、なんか具合悪そう?


『ラーラ様、どこにいるの? わたくしは、どうすれば……』

「エルバ!」


 飛び込んできたエルバの声で、私の意識は一気にそっちへと持ってかれた。考えるとか全部すっ飛ばして、体が動いてた。


「ラーラ! バカ、待て――」


 慌てたレナートの声が聞こえたけど、今はそれどころじゃなくて。エルバがまた誰かに声かけちゃう前に、今度こそ捕まえなきゃ。

 エルバの声が聞こえてきた方へ走る。全速力で走る。この体は疲れない上にすごく早く走れるから、とにかく今は走る。大通りから細い路地へ、さらに細い路地へ。下町みたいに家が密集してる場所を走り抜ける。

 通り過ぎるとき、たくさんの人がびっくりした顔でこっち見てたけど。今はそういうの全部無視して、とにかくエルバを目指した。

 そうやってたどり着いたのは奥まった場所。袋小路、ひとけも先もない路地のその奥、うずくまってた影は――


「エルバ!」


 名前を呼んだら、はって感じでエルバが顔を上げた。そんで私を見たら、さらにびっくり顔になった。


「わた、わたくし⁉ え、でもその格好、それにその目……」

「ごめん、ちょっと事情があって。でも、会えてよかった!」


 なんて感動の再会をしてたら、急に後ろの方がうるさくなってきた。たぶん騎士だ。もしかして爆走する私を見て、誰か通報したとか? やっば……


「エルバ、とにかく今はここから逃げよう」


 なんとなくだけど、この体の使い方がわかってきた。さすがリビングデッドっていうのかな。人間とは違って、疲れない上に出力が全然違う。まさに人間離れってやつ。視力も聴力もなんだけど、たぶん筋力も。だから誘拐されたときも、押さえつけてた男の人から逃げられたんだと思う。だったらその力、存分に有効活用させてもらう。

 私は足に力を込めると、思い切り飛び上がった。そして頂点で目の前の壁を掴む。レンガのほんの少しの段差、そこに指をかける。そのままするするって壁を登って、あっという間に屋根の上。リビングデッド、すごい!

 そっからはなるべく人目につかないように屋根を伝って、レナートのいる宿の方へ向かった。そして大通りに出る前に、人のいない場所から路地に降りた。


「ラーラ!」


 宿の前に、真っ青な顔のレナートが立ってた。今にも倒れそうで、慌てて駆け寄って支える。


「レナート、顔色ヤバいよ。大丈夫……なわけないよね」

「大丈夫なわけ……あるか。この、バカ……ラーラ」


 めちゃくちゃ具合悪そうなレナートを支えながら階段を登る。そしてようやくたどり着いた部屋に入ると、お姫様抱っこでレナートを抱え上げた。


「おい! バカ、下ろせ‼」

「誰も見てないって。もう歩くのもしんどそうじゃん。ベッドまでだから我慢して」


 真っ青な顔に血が昇って、レナートの顔色が変なことになってたけど。ちょっとだから我慢してよね。

 レナートをベッドに下ろすと、私はその足で宿の人にタオルと桶を借りに行った。宿のお姉さんもさっきのレナート見てたみたいで、すぐに用意してくれた。

 で、今。私はベッドの上でぐったりするレナートのおでこに冷やしたタオルを乗っけてる。ちなみにエルバも隣にいる。


「……レナート、大丈夫かな。お医者さんとか呼んだ方がいいのかな」

「しばらく休めば大丈夫だと思いますよ。おそらくですけど、魔力切れを起こしたのかと」


 不安でとりあえずこぼした独り言に、エルバからまさかの答えが返ってきた。


「魔力切れ? って、レナート、なんかそんなに魔法? 魔術? 使ったの?」


 そんな私の言葉に、エルバからきょとんとした顔が返ってきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのお姫様抱っこwww 絵面が最高(笑) あー、やっぱりレナートの方に負担掛かってたかー! さすが暴走列車ラーラ!w
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