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エピローグ

本日2話投稿しています(こちらは2話目)


5話「手紙」を読んでいない方は、お手数ですが前話からお読みください

 屋敷に戻ると待ち構えていたご子息が、上目遣いでわがままを追加してきた。ご子息とは言え、中年男性。ものすごい迫力である。

 領地にある領主の墓の近くにあった古い屋敷を買い取った。年に一度だけその屋敷を利用するので、整えて管理し、出迎えて欲しいと。

 かつてのエドワードがうまく私をサード・フットマンにさせたように、適当におだてられながら、結局私はまた流されるようにその仕事を任されることとなる。


 なんだかんだ言って、私はご子息のこともしっかりと主として認めてしまっているのだ。


 同じ時期に職を辞したガーデナーと侍女も、同じようにおだてられたらしく共に古い館へ移り住んだ。

 蔦が這い、苔はむし、至るところに蜘蛛の巣がはられている屋敷を少しずつ綺麗にしながら、「まさかこの歳になって見習いみたいな仕事をすることになるなんてね」と笑い合う。

 私はもう執事ではなくなったが、きっと動けなくなるその時まで使用人としてこのご一家に仕え続けるだろう。

 領地は王都よりもゆっくりと時間が流れ、私たち使用人は穏やかに、そして忙しく職務を全うした。








 後年、若きフットマンだったピーターは大成し、王付きの執事にまで上りつめる。

 そして引退後に出版した彼の自叙伝の冒頭は、こう書き出されている。

「いつか自叙伝を書く時はこう書き出そうと決めていた。私はとても運が良い、と。素晴らしき主であった先王陛下と、執事の道を示してくれたフィリップに感謝を込めて」

 自叙伝にはこっそりとフィリップの恋について書かれており、海のように深い蒼で光が差し込む時だけ深い紫色になる不思議な瞳の執事の一途な恋は、淑女に大変好評だった。

 やがてベストセラーになり、なぜか自分宛にファンレターが届いたときにやっと、フィリップはこの自叙伝の存在を知る。ベッドに伏していた彼は頭を抱えておおいに唸ったが、恨み節を一つ発したのみでそれ以上は怒らなかったという。

 フィリップは最期まで、アメジストのネックレスを肌身離さず大切にしていた。





最終話までお読みいただき、ありがとうございます。

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