第一章 山ん中の廃駅
皆さんは聞いたことがあるだろうか。何十年も前に廃線になった『有山線』の怪奇な出来事を。
私は、祖父が昔に出稼ぎに行くときに使ったという『有山線』の廃線跡を探して、神戸を発った。
新幹線に揺られて幾時間かすぎた。K駅で新幹線を降り、普通線のH線、G線に乗り換え、ゆらり列車に揺られ、近くのS駅に降り立った。
バスを乗り継ぎ20分、そこから歩いて十数分。有山線の始発駅「杉本駅」の付近にたどり着いた。しかし、あるはずの"そこ"は大きな大きな山と化していた。
山の中に入る。光も差し込まない暗闇。恐怖を感じる。数歩歩いただけで、出口もわからない。どこを歩いているかもわからない。
カタン。何かにぶつかった。コンクリートのようだが苔むしている。少し弱いながらも、光が差し込んでいる。こればホームの跡か。おっと、すっかり忘れていた。こんなこともあろうかと懐中電灯を持ってきていたのだ。さあ、つけよう。案の定、この遺構はホーム跡だった。な、なんと駅名票が残っているではないか。少しさびているが、確かに「すぎもと」と読める。レールも残っている。
「「 カタンコトン、カタンコトン、カタンコトン、、、」」
遠くから列車の音が聞こえる。G線の列車の音だろうか。いや、そんなはずはない。ここから数十キロも離れているのに。
「「 カタンコトン、ガタンゴトン、キキーーーーーーーッ」」
私は、驚きとともに、謎の寒気に襲われた。廃線の有山線に、、そして廃駅になった杉本駅に列車がやってきたのだ。
蒸気機関車であろうか。プレートにはC11 543と書かれている。客車はキハ30 892と書かれているように見えるが、ペンキがはがれており、よく見えない。3両編成。
そして、振り返ると、さびていたはずの駅名標がピカピカになっているではないか。
怖すぎる、ああ怖すぎる。しかし、勇気を出そう。乗ってみよう。
行先表示版(通称:サボ)には『杉本←→有山←→富永 SUGIMOTO ARIYAMA TOMINAGA FOR TOMINAGA』と書かれている。
客車に乗ると、早速車掌がやってきた。5,60代の細い体躯の車掌。帽子には国鉄の社章が描かれている。
「お客様、どちらまで乗られますか。」
終着駅の駅名でも伝えておこう。
「富永まで。」
「390円です。すみませんね、運転区独自の方針で数年前から先払いになっているのですよ。あ、切符は発行していませんので。」
わたしは390円払おうとした。しかし10円足りない。400円払おう。
「400円から。」
「10円のお釣りです。ありがとうございます。あと2分で出発しますので。」
2分待った。そして、廃線を走る "謎" 列車にのる旅が始まった。




