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head-scissors

作者: クロラ


髪を切ろうと思った。




失恋をしたから。




女の子みたいな発想だなぁと思った。



でも俺は、ハサミをとった。




変わりたい、そう思ったから。







…………


「私好きだな、その髪。

さらさらして、綺麗で。」



ずっと昔、幼なじみの彼女はそういって褒めてくれた。



だから伸ばしていた。

そうしたら彼女が喜んでくれる気がしたから。




いつからか忘れたが、俺は彼女のことが好きになっていた。

最初は幼なじみであるための錯覚かと思っていた。

しかし月日がたつにつれて、それは確信へと変わっていた。



俺は彼女が好きだ。

好きだった。



ただ、その気持ちはずっと伝えられないでいた。







…………


放課後のことである。


俺は見てしまった。




彼女が、学校の廊下で先輩と抱き合っていたのを。




俺は思わずからっていた鞄を落としてしまった。



廊下に響く音。

俺を見て唖然とする彼女。

立ちすくむ俺。




鞄を拾い、逃げるように走り出した。


後ろ手彼女が何がいっていたが、何も聞き取れなかった。




泣いた、叫んだ。


そんな赤ちゃんでも出来る行為しか、その時は出来なかった。




家に帰ってから、俺は一人考えていた。



今、俺がすべきこと。



たどり着いた答えは一つだった。



俺が変わらないといけない。



そして、彼女への想いを絶たないといけない。




そして俺は、引き出しから髪切りバサミを取り出した。







…………


床には沢山の髪の毛が落ちていた。


切ってみると、妙な安らぎみたいなものを感じることが出来た。



女子が失恋したとき髪を切るのも少しわかるような気がした。










…………


次の日、彼女が俺にいろいろと話してきた。

昨日の先輩とは付き合っていないし、いきなり抱き着かれただけだといっていた。



でも、そのすべてが言い訳にしか聞こえなかった。









…………


「先輩、付き合ってください!」


髪を切ってから一週間のこと。


俺は後輩に告白された。




俺は返事をした。


いいよ、と。



その時の俺は、誰でもいいからにそばにいてほしかった。



ずっとそばにいた人がそばにいなくなったことに、俺は苦しんでいたのだ。




その日、後輩と一緒に手を繋いで帰った。



その時、幼なじみの彼女とすれ違った。



彼女は俺を見て、驚いて立ち止まっていたが、俺はそれを無視して通りすぎた。



さようなら。


そう、心の中でつぶやいた。









…………


その次の日、廊下で彼女とあった。

俺は驚いた。






彼女の長い髪の毛が、ばっさりと切り落とされていた。




一体どうして?



何で?




俺はそう尋ねようとした。

でも出来なかった。







彼女が笑いかけてきたから。


涙を浮かべながら。







あぁそうだったのか。



気付くのが遅すぎた。


俺は悟った。






“俺たち”、失恋したんだな、と。













…………


部屋の中で、ハサミを眺めていた。




その銀色の金属性の歯がいつもよりも冷たく、そして重く感じられた。




変わらなくちゃ、いけないんだよな…。


誰もいない部屋の中で、一人小さくつぶやいた。






それから俺は、それを引き出しに閉まった。

読んでいただきありがとうございました。 感想、分のアドバイスなど書いてくれたらうれしいです! 今回の作品「head-scissorS」はシャカラビッツというバンドの曲の題名からとりました。 この曲はこの作品とは対照的にどこか元気が出て来る曲です。是非一度聞いてみてください!

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