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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第2章 テオドール公爵家のエミリオを駆逐せよ!
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第7話 相棒のピースケ

 人目に付かない校舎裏で誰も居ないのを確認して、空中を切り裂くようにして創造魔法で扉を作る。

 その扉には、俺以外には目視できないよう魔法をかけている。中に入ってさえしまえば、誰にも気付かれない秘密の隠し部屋に入ることが出来るのだ。


 この部屋は、俺が創造魔法で作りだしたコレクションやティアナやダリウスにもらった大切なものを保管している魔法の亜空間だ。

 中央の台座に足を進め、ふわふわの白いクッションの上に大事に眠らせている大切な相棒に声をかける。


「会いたかったぞ、ピースケ」


 どうやってエミリオ達の事を調べるのかというと、俺の心の相棒、昔飼っていた可愛い小鳥のピースケに手伝ってもらうのだ。


 俺は創造魔法で心に思い描いたものを具現化する事が出来る。ただし、その精度は細かい所まできちんと想像できるかにかかっている。

 生き物を具現化するには、かなり細部に至るまで作りこまなければならないため、よほどの思い入れがないと作れない。

 ピースケは俺にとって、目に入れても痛くない程可愛がっていた大切な存在だ。

 目を閉じればあの愛らしい鳴き声が蘇ってきて、涙が駄々洩れだ。


 ピースケが天国に行ってしまって、悲しくて悲しくて、俺は知らぬ間に魔法でピースケを作り出していた。

 それが初めて創造魔法で生物を使った瞬間だった。その頃は魔力もそんなになかったから、すぐに動かなくなってしまったが、それでもピースケに会えて嬉しかった。


 創造魔法で作り出した物は魔力が切れると動かなくなる。しかし、再び魔力を通すことで動かす事が出来るようになるのだ。

 俺は創造魔法で作った大事なコレクションを、誰にも見つからないように自分だけが干渉できるこの亜空間に収納している。

 壊れ物を扱うようにピースケをそっと両手ですくい取る。


 今は亡きピースケと過ごした日々を思い出し、丁寧に魔力を注いでいく。さらにその際、三つまで能力を付加できるのだ。

 ピースケに付加するのは、意識、視覚、聴覚の共有だ。俺の指示が届くよう意識をさせ、ピースケが見た景色や聞いた音が、俺にも伝わるようにしている。

 そうすれば、ピースケに指示を出しながら無防備な状態のお貴族様達の様子を空からウォッチングできる。

 俺の手のひらの上でうずくまっていたピースケが、ゆっくりと頭を持ち上げた。


「ピー、ピー」


 俺の方を見て、ピースケが元気に鳴いた。


「ピースケ! 会いたかったぞ! 飛べるか?」


 俺の相棒は嬉しそうに俺の上を旋回した後、差し出した左腕にトンと着地した。

 

「ピースケ、探って欲しい事があるんだ。頼めるか?」

「ピー、ピー!」


 俺の問いかけに、ピースケはコクコクと小さな頭を上下させて答える。


「まずはゆっくりと学園内を散策してくれ。お前の視点を通して俺は、目的の人物を探す。そいつを見つけたら教えるから、今度はそいつの尾行を頼む。出来そうか?」

「ピー、ピー!」


 まかせろと言わんばかりに片目をパチンとウインクさせて、ピースケは飛び立った。


 今は放課後。帰るなり部活に行くなり慌ただしく人の移動が激しい時間だ。二年生のクラス付近を重点的に見てもらったが、エミリオの姿を発見できない。


 特別教室のある建物の方へピースケを誘導して確認してもらうと、小窓の先にある薄暗い物置部屋のような教室に誰かが蹲って座っているのが見えた。

 膝に顔を埋めて、恐怖に耐えるようにその小さな身体を震わせている。

 ただ事ではないその様子が心配で、俺は急いでその教室へ走った。

 扉を開けようとするものの、鍵がかかっているようで開かない。


「誰か! そこに誰か居ませんか!?」


 扉をノックしながら話しかけると、聞き覚えのある声が返ってきた。


「もしかして、ルーカス? そこに居るの?」

「ティアナ?! 待ってろ、すぐに開けてやるから」


 鍵穴に手をあてて、俺は創造魔法を発動した。

 その空間を埋めるように、魔力を注ぎ込んで簡易的な鍵を作って横にひねる。カチッと音がして解錠完了だ。


「大丈夫か? ティアナ、怪我はないか…………うおっ?!」


 扉を開けた瞬間、ティアナが思いっきり突進してきた。男の威厳を保つべく、何とか後ろに倒れるなんて無様な真似をせずに済んだが、危なかった。


 これは夢か。あのティアナが俺の胸に飛び込んでくるなんて……しがみつくように俺の制服を握り締めて顔を埋めるティアナ。その手や身体は、小刻みに震えていた。

 視界に入った薄暗い物置部屋を見て、俺は自分の浅はかな勘違いに気付く。

 昔からティアナは暗闇が苦手だった。闇魔法の使い手であるティアナは、悪夢の中で暗闇に閉じ込められる事が多いらしい。それが原因だったりする。

 小窓があったとはいえ、差し込んでくる日差しは僅かなものだ。そんな所に閉じ込められていたんだ、こうなってしまうのも無理はない。


「大丈夫だ、ティアナ。ここは明るい。怖くないよ。顔を上げてごらん」


 下心を最大限の理性で閉じ込めて、俺は平然を装って声をかける。

 顔を上げたティアナは、外の明るさを確認して慌てて俺から離れていった。


「本当だ。ルーカスの言うとおり、明るかった。ごめんね、私のせいで制服……シワになっちゃった」

「気にするな、これくらいすぐ直る。それよりティアナ、どうしてこんな所に……」

「ドジやらかしちゃって。間違って鍵閉めちゃった」


 俺の問いかけに、誤魔化して努めて明るく言うティアナの姿が不憫に見えた。


「外側からしか閉められないドアをか?」

「そ、それは……」


 すぐ分かる嘘だと分かっていただろうに。俺に余計な心配をかけさせないようにしてくれてるんだろうが、一人でなんでも心にしまい込もうとするティアナが心配でならなかった。


「ティアナ、俺はお前の味方だ。巻き込むかもとか、そんな気遣いいらない。昔お前が俺を助けてくれたように、お前が困ってるなら今度は俺が助けたい。正直に言ってくれ。ここに来て俺も色々洗礼うけたし、大体の事情は察してるから」


 何も知らない無知な子供ではないと主張して、ティアナに話しやすい状況を作る。


「その……雑用を押しつけられちゃって、荷物をここに運んできた瞬間、閉じ込められたんだ。だから、誰がしたのかは分からない」

「そうか、大変だったな」

「うん……ありがとう、ルーカス。そしてごめんね。今まで……」

「俺より、お前の方がずっと大変な目に遭ってんだ。気にするな。ここに来て、何があったのか聞かせてくれないか?」

「うん。少し長くなるけど、聞いてくれる?」

「ああ、勿論だ」


 人目に付かない空き教室で、俺はティアナの話を聞いた。

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