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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第4章 リヒテンシュタイン侯爵家のシリウスを駆逐せよ!

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第39話 緊急作戦会議

「いいね、いい! 実に素晴らしかった!」


 鼻息荒くカンバスに絵を描く男の姿があった。それは、ピースケを通して見たシリウスのアトリエの中の光景。


「丸みを帯びたあの曲線美! 鍛えられたあの素晴らしいプロポーション!」


 一人で歓喜の雄叫びをあげながら、ものすごいスピードで筆を走らせる。そのカンバスには、何も衣服を身に付けていない女性の姿が描かれていた。


 どうやらシリウスは、頭の中に焼き付けた光景を思い出しながら、妄想で裸婦画を描いていたらしい。


 これ……どうすりゃいいんだ?


 誰にも迷惑はかけていない、現状は。個人で描いて個人で楽しんでいるだけだ。この絵を誰かに渡したりしているなら問題だが、そういうわけでもない。あくまでもコレクションしているだけのようだしな。


 まー後ろめたい趣味であることには間違いないが。これを公にしてしまえば、シリウスの人生そのものが終わりかねない。さすがに、俺はそこまでしたいわけでもないしな。


 ただ、ティアナにちょっかいかけるのをやめて欲しいだけなんだが……って、ちょっと待て。モデルを想像で描いてるなら、既にモデルをしたティアナやサンドリア様はすでに……裸婦画が描かれている?!


 可能性は高いな。こうしちゃおれん!

 やはりここは、エレインに報告しておくか。





「なんだってー?! シリウスのやつ……気持ち悪いにも程がある!!」


 気持ち悪さに身震いしながら怒るエレインはとても忙しそうだ。


「それでエレイン様、いかがなさいますか」

「ルーカス、この件は一旦生徒会に任せてくれないかな? シリウスは生徒会メンバーの一員だ。この不祥事が表に出れば……」


 やっぱ色々まずいよな。

 それに、話してみると貴族も悪い奴等ばかりでもなかった。


「分かりました。お願いします、エレイン様」


 それにここで事をあらげるよりは、生徒会に恩をうっておく方が、後々のためにもなる。


「早速で悪いけど、いくよ」


 そう言いながら、羽織っていた白衣を脱いだエレインは、学生服の上着に袖を通した。


「緊急作戦会議だ」


 エレインについてやってきたのは、生徒会室だった。


「珍しいな、エミリオ。この時間にここにくるとは……」


 エレインの顔を見るやいなや、何かを悟ったようで、ハイネルは心配そうに声をかけた。


「何かあったのか?」

「実は……」


 エレインは、シリウスの件を一通り説明した後、ハイネルを仰ぎ見た。


「そうか……」


 短く呟いた後、ハイネルは盛大なため息をはいた。


「ここでは絶対にするなと、釘を指しておいたんだがな」


 知ってたんかーい!

 王子様、あんた、そのこと知ってたんかーい!!


「ユリア、呼ぶ?」


「そうだな。もう一度、調教し直す必要がありそうだ。シュナイダー伯爵家に連絡を」


 ハイネルが呼び出した侍従にそう言付けた十分後──一人の令嬢が現れた。


「王国の若き太陽、王太子殿下にご挨拶申し上げます。ユリア・シュナイダー、ご依頼により参上いたしました」


 長身のスレンダー美人。シリウスの婚約者であるシュナイダー伯爵家の令嬢だ。見た目は確かに令嬢なのだが、何だろうこの違和感は。確かにそこにいるはずなのに、気配が全く感じられない。夜中に後ろから近付かれたら、絶対に気付かないだろう。


「よく来てくれた。実はシリウスが例の趣味を学園内で行っているという情報が入った。そこで再調教の準備を頼む」


 再調教?!

 なんか物騒な単語が聞こえたぞ。


「かしこまりました、殿下。実行日はいつに致しますか?」

「そうだな……ルーカス、いつ乗り込めば現行犯で捕まえる事が出来る?」

「そうですね、モデルの女性を呼んで三日間程は大体アトリエにとじ込もっておられます。昨日モデルが来たばかりなので、明日と明後日もアトリエに閉じ籠っておられると思います」

「分かった、決行は明日の放課後にする。ユリア、準備は間に合いそうか?」

「はい、勿論お任せください」

「それでは明日、放課後に生徒会室に集合するように。レオンには私から伝えておこう。ルーカス、明日はなるべく一般生徒には見つからないよう案内を頼む」

「はい、かしこまりました」


 なんか、えらいことになったぞ。しかし、この眉目秀麗な生徒会軍団は揃ってるだけで嫌でも目立つ。一般生徒に見つからないようと言われてもなぁ。アトリエに行く道は限られている。美術部員ならだれでも通れるわけだし、そこを生徒会メンバーが普通に歩いていたら目立つ事は間違いない。


「浮かない顔して何を悩んでるんだい?」


 エレインの研究室に戻り、考え事していたら話しかけられた。


「目立つ生徒会の方々をどうやって案内しようかと……彫刻運ぶフリして、リアカーに皆さんをのっけて布をかぶせて運ぶのはどうですかね?」

「却下! やだよ、そんなぎゅうぎゅう詰めなリアカーに乗るのなんて!」

「ですよね……」


 一応エレインとユリア様もいるわけだし、それはまずいよな。


「ルーカス、君は夢のある魔法を使えるじゃない。創造魔法でどうにかできないの? 姿を見えなくするバリア作ったりとかさー、魔法使えばやりようはいくらでもあるでしょう?」

「それです! 流石はエレイン様!」


 なんか最近、エレインが俺より創造魔法の使い方が上手い気がするのは気のせいだろうか。食べ物を創造魔法で作って食べるなんて思いつきもしなかったしな。エレインの侍従として学園の地位も向上して、最初の頃より過ごしやすくなったのも事実だし、色々助けられてるよな。


「なに、僕の顔をじっと見て」

「優れた主にお仕えする事ができて、光栄だなぁとしみじみ思っただけですよ」

「急にどうしたの、気持ち悪い」


 照れた様子でそっぽを向いてしまったエレイン。こういう所は可愛げがあるんだよな。


「エレイン様、透明バリアの練習をしたいので少し付き合って頂けませんか?」


 それから俺は、明日に備えて創造魔法で透明バリアをつくる練習をした。


「まだまだ体が見えてるよ。もう一度やり直し!」


 エレインにかなりしごかれたおかげで何とか成功したものの……可愛いなんて思った俺がバカだった。エレインはやっぱり鬼だ! と再認識させられる厳しさだった。

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