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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第4章 リヒテンシュタイン侯爵家のシリウスを駆逐せよ!

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第37話 男とは、曲線を好むものだ

 俺は今、美術部入部の試験を受けに美術室へ来ていた。学内にある文化系の部活の中で、吹奏楽部と一位二位を争うほど人気の部活動らしく、俺の他にも入部希望者が多数いる。

 なんでも貴族の中で美術部に入れるという事は、情緒を重んじる豊かな感性を持っていると認められ、一種のステータスになるらしい。平民の俺には何の関係もないことだが。


「希望者最後の一人は……君だったんですね。先日は助かりました。えっと名前は確か……」


 シリウスが手に持っているファイルに目を通そうと視線を落とす。どうやら俺は、名前すら覚えられてないらしい。


「一年C組のルーカスです。シリウス様の絵にとても感銘を受けて、是非美術部で色々学ばせて頂けたらと思いまして」

「それはありがとうございます。ですが、君だけを特別扱いするわけにはいきません。入部試験に合格できたら歓迎しますよ」

「はい、頑張ります!」

「では、こちらへ」


 案内され用意されている席につく。

 そこには角度を調節できる特殊形状の透明な机に一枚の画用紙がセットされている。サイドにある小さなテーブルには鉛筆、消しゴムに羽ぼうき、鉛筆削り用のナイフが置かれていた。そして下には小さなゴミ箱がある。


「実技試験はデッサンです。テーマは特にもうけません。この台座を後ろの棚にあるものを使って飾り立て、それを一時間以内に描いて下さい。出来映えで判断致します。デッサンに使う道具は、そこにあるものを使用して下さい」


 シリウスが皆の準備が整っているのを確認してから「では、試験を始めます」と号令をかける。それと同時に監視の生徒が時間を計り始めたようだ。


 テーブルの前には何も置かれていない小さな木の台座がある。他の生徒達はテーブルクロスをそこにかけると、ワインの瓶や果物の模型、高そうなツボや意味の分からない形の彫刻像など、各々好きなものを置いて早速デッサンに取りかかり始めた。


 やべ、出遅れた。とりあえず残っていた水色のテーブルクロスを台座に被せる。何を飾ろうか棚を物色していると、一際キラキラと輝いて見える女神像の置物があった。なんか神々しい感じするし、これでいっか。


 女神像を台座に置いて、早速デッサン開始だ。後はエレインの薬頼みだが、スラスラ手が動き、ありえないスピードで完成していく。


 エレイン曰くあの薬は、人の中に普段眠っている第六感を強く引き出して、ものごとの本質を掴む効果を高めるものらしい。人が苦手と感じるのは、その本質を掴む力が弱いために起こるそうで、あの薬を飲むことでそれが補われ、一時的に得意になるそうだ。

 最初から得意なものはあまり伸び代がないため特に変化は感じない。しかし苦手なものは伸び代が大きい分よく効果を実感できるらしい。

 なんか意味がよく分かんないが、とりあえず苦手であればあるほど効果の高い薬らしく、俺のひどい画力がプロ顔向けの出来映えになるのはそういう理屈らしい。


「はい、そこまで。皆さん、鉛筆を置いてください。結果は後日発表しますので、今日はこれで解散となります。お疲れ様でした」


 とりあえず、後は結果待ちか。出来上がった作品を提出して帰ろうとしたら、「ルーカス、待って下さい」と、何故かシリウス呼び止められた。


「実に素晴らしい出来です! この見事な曲線美! 君は合格です!」


 俺の作品を手に鼻息荒く追ってきたシリウスが、若干変態っぽくてなんか怖い。知的で芸術を愛するイケメンじゃなかったっけ?


 確かにすごく良い出来ではあったけど、なめ回すようなシリウスの視線が余すことなく女神像のあらゆる曲線に注がれている。あの女神像、たわわな胸にくびれたウエスト、大きめのヒップと曲線だらけではあったが……


「あ、ありがとう、ございます」


 なんかエレインの言ってた事、今なら少し分かるかもしれない。あの眼鏡でワンクッションおいてなかったら、もろにくらってきつそうだ。


 それから俺は美術部の中を案内された。主に活動するのはこの広い美術室へで、隣に様々な画材道具が収納されている準備室がある。


「ルーカス、君が得意な分野は何ですか?」


 得意な分野?! そんなものねぇ。なんて言えるわけないし……でも、下手に色々出来ると思われても困るぞ。


「俺が出来るのはデッサンくらいです。その、画材道具は高くて買えなかったので……」

「それならば、これから君はこの美術部で、自分の可能性を大きく広げていってみて下さい。ここにある道具は全て、美術部員なら自由に使ってもらって構いません。足りないものがあれば、そこにある追加購入の希望用紙に書いて私に提出して下さい。そうすれば、揃えて差し上げます」

「ありがとうございます、シリウス様」

「君には期待しています。是非頑張って下さい」


 なんか、最初とすげぇ違いだな。俺、エレインの侍従として何度か対面したことあるが、名前さえ覚えられてなかったのに。

 コイツにとって興味があるのは、曲線豊かな女と、絵が上手い奴ってところか。


 あの床下収納してあった絵のモデル達も中々放漫な曲線美の持ち主だったし、ティアナだってスタイル抜群だ。


 そう考えると、シリウスの婚約者のユリア・シュナイダーは、かなりスレンダーな美人だったよな。遠目にみても分かるくらい背は高いが、身体に凹凸が少ない慎ましいバストの持ち主だ。

 曲線美が好きなシリウスにとって、食指の動かない相手……なのかもしれない。

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