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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第4章 リヒテンシュタイン侯爵家のシリウスを駆逐せよ!

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第36話 入部試験の壁

「ルーカス君、どこか部活に入るのかい?」


 翌日の休み時間、担任からもらった入部届けの紙を記入していたら、ゲルマンに話しかけられた。


「ああ。美術部だ」

「び、美術部?!」

「何だよ急に大きな声出して……」

「ごめんよ。美術部って言えば、学内でも一位二位を争う難関部活だから。僕も入りたかったけど、駄目だったんだ」

「その話、詳しく聞かせてくれないか?」


 ゲルマンの話によると、なんでもルフェーブル魔法学園の美術部は、かなりハイレベルの部活動らしい。誰でも気軽に楽しみましょうってスタンスではなく、ある一定以上の力を持った奴等しか入れないエリートの部活なのだそうだ。そのため入部の際には実技試験があるらしく、合格しないと入部出来ないそうだ。


 自慢ではないが、俺には絵の才能がない。正攻法で試験を突破するのはまず無理だと思って間違いない。どうしたものか……



 ◇



「ルーカス! 大至急、セージを三十グラム、ベルガモットを十五グラム積んできて」


 放課後、日課のハーブの水やりを終えた俺は、研究室で怪しい薬品を作っているエレインの手伝いをしていた。


「はい、かしこまりました」


 採取用のかごを片手に、俺はビニールハウスへとダッシュで向かう。

 研究に集中している時のエレインは、決して邪魔するな。頼まれた仕事は即実行。これが彼女の侍従となって学んだ痛い教訓だ。

 もし邪魔をして実験が失敗しようものなら、地獄行き確定だ。それくらい恐ろしい。

 とりあえず今は、実験の補佐を完璧にこなし成功させるしかないな。


 そうして時刻が午前様を回った頃、研究室内にエレインの不気味な笑い声が響き渡る。


「ふはははは! ついに、ついに完成した!」


 この時、魔王の台詞かよ! とか、野暮なツッコミは決して入れてはいけない。


「ねぇ、ルーカス。君、センスはある方? ない方?」

「あまり自信はないです」

「ふふふ、そうなんだ。自信ないんだね~だったらここにさ、ちょっと絵を描いてみてよ」


 紙と鉛筆を渡され、深夜から始まる突然の無茶振り。中々つらい。


「何の絵をお描きしたらいいですか?」

「じゃあ、僕の似顔絵」

「かしこまりました。あの、ほんと絵心とかないんで、後で怒らないで下さいよ?」


 一応の保険をかけて、俺はエレインの似顔絵を紙にしたためる。しばらくして、完成品をエレインに見せると、何故か歓喜の声をあげていた。


「いいね、ルーカス! 君、さいっこうだよ!」


 謙遜でも何でもなく、正直俺の絵は五歳児並の出来だ。それをそこまで誉められるとか、深夜ハイに陥ってるやつの考えている事はよく分からねぇ。


「じゃあさ、これを飲んでからまた僕の似顔絵を描いて」


 エレインはそう言って、完成品らしき薬品を小さな容器に入れて差し出してくる。

 早く帰りたかった俺は言われるままそれを飲んで絵を描いた。するとあら不思議、なぜか次に描いた絵は、画家が描いたような素晴らしい出来栄えだった。


「エレイン様! そのお薬は?!」

「すごいでしょ。一時的にその人の苦手を得意に変えてしまう薬さ」


 これさえあれば、俺は美術部に潜入出来る! 


「あの、エレイン様! そのお薬、俺に少しだけわけて頂けませんか?」

「……何に使うの?」

「実は……」


 美術部に入りたいが、入部試験を突破できる気がしない。そこでそのお薬を少しだけ分けてもらえると大変ありがたいという事を、すごーくマイルドな表現で説明する。

 すると意外にも、拍子抜けするくらいあっさりと許可がおりた。思いがけない返事にポカンとまぬけ面を、しているだろう俺にエレインは言った。


「シリウスはとても芸術にうるさい男だ。僕の薬で下手くそな君の画力が向上してシリウスの感性を欺けるなら、絶対売れるよこの薬!」


 あーなるほど。俺はちょうどいい実験台という事ですか。分かりやすい理由に、なんか少しだけ安心を覚えた夜だった。

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